『狼に食べられるぞ』とは、よく言ったものだ。
そもそも《狼》に良い印象が無い。お伽噺を初めとして各所で散見された刷り込みにより、圧倒的に悪者というイメージが強かった。一匹狼の言葉を筆頭に、ワイルドで、ぶっきらぼうで、酷い時には悪事を企む大人の代名詞──そんな低俗なイメージしか持ち合わせていなかった。ただ、初めてジャックを見た時は、狼というより動物の耳を持つ人間がいる事実に驚いていた。
──マッチョがイヌミミカチューシャとは斬新な。
そんな失礼な第一印象を抱いた。大食堂でハーツラビュル寮のトレイ先輩やケイト先輩から各寮に属する生徒の特徴について説明してもらった時、一番最初に目に付いたのがジャックだった。その時は名前こそ知らなかったが、大きな背丈に筋肉質な体躯。褐色肌に白銀の髪。よく動く大きな獣の耳と尻尾を持つ彼は、よく目立っていた。獣人属と呼ばれるファンタジーな存在がごく普通に暮らせるなんて、流石は異世界といったところか。相棒のグリムだってれっきとしたモンスターなのだが、あまりにも頻繁に問題を起こすものだから、追い掛け回す内にそういった概念が頭からすっぽ抜けていた。ジャックの特徴的な耳と尻尾を見た時に漸く『普通の人間じゃない人がいる』と衝撃を受けたのだった。先輩方による他寮の紹介はそのまま流れるように進み、意識は完全に逸れてしまった。
次にジャックと会ったのは、マジカルシフト大会の時だった。有力な選手候補が次々に怪我を負う奇妙な事件。犯人の目処がつかないまま、狙われそうな選手候補を片っ端から訪ねては、選手候補に怪我をさせる前に犯人を捕まえて守りきるという作戦を立てた。けれど四六時中ずっと付きっきりでいるわけにもいかず、上手く行くかどうかも分からないまま、最後の候補が居るサバナクロー寮へ向かうことになった。鏡舎で鏡を潜る時にケイト先輩がスマホを弄りながら選手候補の特徴を教えてくれた。
「運動神経抜群で、ありとあらゆる運動部から、スカウトが殺到してるって噂。褐色肌に銀髪。狼っぽい耳とフサフサの尻尾がトレードマークらしい」
「フサフサの尻尾……おっ。アイツじゃねーか? 一人で庭走ってるヤツ!」
グリムの言葉に振り返ると、そこには特徴と合致する生徒が汗水を垂らしながら一人で走っていた。サバナクロー寮の庭──というより広大なグラウンドのような場所居たのは、たった一人。部活動の一環であれば他にも誰か居そうなものだが、だだっ広いそこをいくら見回しても、人っ子一人見当たらない。窓の無い造りの寮から微かに人の声がするものの、断続的に楽しそうに繰り返されるそれは部活動の休憩中というわけでも無さそうだ。彼だけが自主練をしているのだろうか。真面目なのかな。……見た目はちょっと怖そうだけど。
ほんのりビビっていたら、ケイト先輩が「いきなり噛み付いてきても守ってあげるからさ」と嘘か本当か分からないいつものテンションでひらひらと手を振るので、苦笑いだけ返しておいた。獣人属って噛み付いてくるんだろうか。止める間もなくすっ飛んでいくグリムを力無く見送って溜息をつきながら、そんなことを思った。
「オイ、そこのツンツン頭!」
休憩のためか、呼び止められたためか、足をゆっくりと止めた生徒──ジャック・ハウルが振り返る。グリムの言う通り、銀の髪が天に向かって跳ね上がっている。そこから発せられた予想以上に低い声に、息を飲んだ。
──真面目っぽいなんて、どの口が言ったんだ。めちゃくちゃガラ悪いじゃないか!
口元をひくつかせる此方にグリムが気付くわけもなく、偉そうな口調で「守ってやるんだゾ!」と腕を組めば、僅かな警戒心を見せていたジャックはぴくりと狼の耳を動かした。
「走り込みの邪魔すんじゃねえよ」
額に青筋を浮かべて睨みを利かせてくる。きつく吊り上がった目の瞳孔が開いていて、誰が見ても間違いなく怒っていた。ケイト先輩が慌ててグリムの口を塞ぎながら引き剥がせば、ジャックが距離を保ちながら腕を組む。
「この俺を守る、だと?」
ギロリと音が出そうなほどの鋭い眼差しが、此方に向けられる。苛立ちを隠さないそこから見て取れるのは、明確な敵対心だった。たじろぎそうになる足を何とか踏み止まらせて真っ直ぐに見据えていると、ケイト先輩が事情を説明し始める。ジャックはいきなり噛み付いたりすることはなく、ただ訝しげに説明を聞き終えて、大きく息をついた。
「断る。俺は一人で何とかできるし、お前らに守ってもらう必要はねえ」
「……一人でいると危ないかもしれない」
そのままあっさりと立ち去ってしまいそうな雰囲気だったので、思わず声が出た。ジャックがたった今気が付いたと言うように顔をずらして此方を睨む。剣呑な顔付きが物凄い迫力を放っていて、バレないように唾を飲み込むと、負けじと睨み合った。
「……。要らねえって言ってんだろ。それに……」
異様に長く感じた睨み合いは、ジャックが言葉を切り、視線をずらしたところで終了した。ふ、と目線が外れただけなのに、肩に重石を乗せられたようなプレッシャーが引いて、ドッと疲労が襲う。
「俺が狙われることは、多分……ない。じゃあな」
目を細めて、言い含むような言葉を残してジャックは踵を返した。まだ食い下がろうとしていたグリムを押さえたケイト先輩が「残念~」と首を振る中、自分は一人、その後ろ姿を見ていた。
最後の言葉が気になったのは勿論だけど、じれったいような、やり切れないような、あの表情はなんだろう。複雑な何かを隠して我慢しているようにも見えた。寮に入って行く大きな背中をぼんやりと見つめていたら、エースに「行くぞ〜」と声を掛けられ、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にしようとした。
「おい、お前らそこで何してんだよ」
気付けば見知らぬサバナクロー寮の寮生に囲まれている。全員あのジャックという生徒ほどではないにしろ、やたらとガタイがいい。尚も最悪なことに植物園の管理人──ではなく、寮長であるレオナ・キングスカラーとラギー・ブッチが現れ、マジフトで戦うことになってしまった。
魔法で戦う試合において、自分が出来ることは少ない。相手の動きをよく観察しながらチームに指示を出す。突っ走りやすいグリムをエースとデュースで挟み、後方の援護をケイト先輩に頼む。グリムがディスクを持っていると狙われるので、エースとデュースが防ぎ、ケイト先輩が隙を付いて攻撃する。何とか動けているといった此方に比べて、相手チームの動きは洗練されすぎていた。何より、敵の司令塔であるレオナ先輩が別格で上手い。力量差が圧倒的だった。テクニックじゃ勝てない。人数だって足りてないんだ。いくら休憩しても回復なんかするわけない。ゴールどころか走り出すとすぐさま容赦なく吹き飛ばされて地面に伏す皆を見て、慌ててタイムを取って駆け寄った。擦り傷だらけの皆を労わろうとしている最中でも、けらけらと笑って試合を続行しようとするその態度にギリッと歯を食い縛り、思わず叫ぶ。
「こんなの暴力と同じだ!」
「──何してんスか、あんたら」
しゃがんだまま叫んだ自分の視界を、白い──いや、白銀の何かが遮った。ハッとして瞬きをすれば、ふわっと膨れた動物の尻尾があった。ずっとずっと高い所に頭があって、大きく動く動物の耳が見える。まるで此方を庇うかのように前に出た彼は、毅然とした態度のまま唸り声を上げた。
「初心者いたぶって、何が楽しいんスか」
「俺はただ、みっともなくて見てられねえって言ってるだけッス」
所属寮の先輩に対しても彼はきっぱりと自分の意見を通していた。舌打ちをしたレオナ先輩が「しらけた」と言って立ち去ると、辺りには束の間の静寂が戻って来る。背を向けたままの彼を呆けたように見上げていたが、ジャリ、と砂を踏み締める音に我に返り、慌てて立ち上がって深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
「別に。お前らを助けたわけじゃねえ」
振り返った彼は腕を組んだまま、つんと顔を逸らしていたので目は合わなかった。さっき視線が合った時は恐怖でしかなかったから、正直助かった。
「お前らに心配される筋合いねえっつってんだろ。さっさと帰れ」
押し問答の末に半ば追い出されるような形で立ち去る間際、彼が押し黙ったまま眉を寄せたのが、遠目で確認出来た。──やっぱり何か、知っている気がする。そう思いながらも皆の傷の手当てをしなければならなかったので、今度こそサバナクロー寮を後にした。
+++
……怖い、と思ってたんだけどな。
デラックスメンチカツサンドのおかげで、犯人がラギー先輩だと確信を得たものの、追い掛けっこの末に証拠も無いまま逃げられてしまった。ラギー先輩の残した言葉から「次も何かしようとしている」と気付きかけた時、低い声を投げ掛けられる。──ジャックだ。
ラギー先輩が犯人と知っていて「自分は狙われない」と言っていたジャックの言葉に合点が行く頃、何故だかジャックとデュースの殴り合いが始まってしまった。所属寮を裏切り、知っている話を教えると言ったジャックが、自身の心のケジメを付けるためらしいが。
自分自身の力で勝ち上がりたかったと熱く吠えるジャックのそれは決して正義感などではなく、あくまで「自分が納得いかないから」という、それだけの理由だった。人によっては自分勝手とか、独りよがりとか、そういった評価をするのだろう。けれど自分には、ただただストイックなだけに見えた。サバナクロー寮でたった一人で走っていたのも、先輩達に果敢に立ち向かっていったのも、全ては自分のため。「何で他人のためにそんなに必死になれる?」と聞いて来たジャックは、他人のために懸命に何かを成そうとする自己犠牲の精神が理解出来なかったのだろう。最も、エースとデュース、グリムに関してはそれに当てはまらなかったけれど。形振り構わず、ひたすら前へ進もうとするジャックの志は、眩しいほど実直だと思った。
「俺はお前らとつるむつもりはねえ」
……少々めんどくさいことに変わりないけれど。
「自分の寮の落とし前は自分でつける。じゃあな」
「──でも、今までの事件も止められてないよね」
「……あ?」
立ち去りかけたジャックが声を落として振り返った。瞳孔の開いた目に睨まれて、あまりの迫力に足が竦む。デジャヴを感じた。……でも、最初の時より、怖くない。
「賢い狼は、群れで狩りをするよ」
目を見開いたジャックは、その場に立ち尽くした。──あれから狼の生態を調べたのだ。多少なりとも彼について理解したつもりだ。孤高の一匹狼のつもりなのだろうが、狼というものは本来、群れでいるのが常だ。群れから外れ、新たな群れを形成するために単独で行動する姿を「一匹狼」と呼ぶ。チームで動いた方が効率的だと狼の生態になぞらえて言ってはみたものの、果たしてこれであのジャックが動いてくれるかは分からない。だが、賭けるしかなかった。今回の作戦は協力者が多い方がいい。何よりジャックは、ラギー先輩のユニーク魔法を知っている。何かあった時に動いてもらえるかもしれない。
ジャックは静かに、此方を検分するように、上から下まで丹念に見つめてきた。そこまで言うだけの実力が、お前如きにあるのかと、その目が語っている。この世界で生まれたわけでもない。魔法も使えない。獣人ですらないお前に、何が分かる──そんな風に罵られる覚悟は出来ていた。けれど、これだけは譲れないと目に力を込めて睨み返す。最初に対峙した時のように二人で睨み続けて暫く経った後、ゆっくりとジャックが口を開いた。
「……。いいだろう。話くらいは聞いてやる」
「だが。もし気に食わねえ作戦だったら、俺は抜けるぜ」
釘を刺すように言われた言葉が続いたけど、充分だった。ホッと胸を撫で下ろして、早速とばかりに説明を始めてくれるリドル先輩の作戦に耳を傾ける。
……安堵するばかりで気が付かなかったが、この時、ジャックはリドル先輩の話を聞く此方の姿を、横目で注意深く見下ろしていた。
+++
ディアソムニア寮の寮長、マレウス・ドラコニアへの奇襲は、リドル先輩が立てた作戦のおかげで失敗に終わった。何もかもを諦めて試合すら放棄しようとするレオナ先輩にラギー先輩が食い下がると、ユニーク魔法『キングス・ロアー』が発動し、触れたもの──ラギー先輩の腕さえも砂に変えようとしていた。レオナ先輩はリドル先輩のユニーク魔法さえも防いでしまい、万事休すかと思ったその時。横にいたジャックが飛び出した。
「──もうやめねえか!」
「『アンリイッシュ・ビースト』!」
走りながら何かを唱えたジャックの体に光が迸る。瞬きの間に、ジャックの体は白銀の毛に覆われた、とてつもなく巨大な狼の姿へと変身していた。驚くレオナ先輩に向かって唸り声を上げた次の瞬間──狼は、レオナ先輩に飛び掛かっていた。
「なんだと!? ぐあっ!」
その一瞬の隙を狙い、リドル先輩が再びユニーク魔法を発動させると、レオナ先輩の首に巨大な首輪が収まった。それを見届けた狼は光と共に元の姿へと戻っていく。立ち上がったジャックが息を付く間もなく、レオナ先輩が吠えた。
「ジャック! テメェ変身薬なんてご禁制の魔法薬、何処で手に入れた?」
「『アンリイッシュ・ビースト』!……身体を狼に変化させる、俺のユニーク魔法だ!」
ユニーク魔法はとても高度な魔法だと聞いていたので、一年生であるジャックが習得している事実にも驚いたが、こんな緊急事態だというのに──目を見張るほどに大きく力強いあの狼に、すっかり見惚れてしまっていた。なんて立派な、そして美しい獣だろう。元の世界にいた頃だって、狼に間近で接する機会などそうそうなかったが、やはりどこかで怖い存在だと認識していた。けれど、今見た姿を、恐ろしいなんて思わなかった。戻って来たジャックが警戒を解かないまま、呆ける此方を見下ろして「おい、どうした」と聞いてくる。漸く我に返りぶんぶんと首を振って誤魔化した。
そうこうする内に、ディアソムニア寮のリリア・ヴァンルージュ先輩の言葉をきっかけに、レオナ先輩の様子が次第におかしくなっていった。魔力──というより負のエネルギーが増幅し、リドル先輩のユニーク魔法でも抑え込めず、遂には膨れ上がったそれが、オーバーブロットしてしまう。ジャックは驚愕を飲み込んで、冷静に確認する。
「よく分からねえが、レオナ先輩をブン殴って正気に戻せばいいんだな?」
デュースと殴り合いをしてた時は熱苦しくて敵わない、なんて思っていたけれど、今回ばかりはそれが単純明快で、一番手っ取り早い方法だった。頷けば、気合を入れたジャックがマジカルペンを構える。しかし立ち向かえば立ち向かうほど、あまりにも強大な力に成す術無く、あっさりと跳ね返されてしまう。
「くっ……強い! こんなに強ぇくせに、なんであんたは全部諦めちまったんだ……ッ!」
ジャックの悲痛な叫びも届かなかった。その場にいた全員で一斉攻撃し、何とか《闇落ちバーサーカー状態》のレオナ先輩を倒すことに成功した。
被害者たっての希望でサバナクロー寮は試合を続行し、目立ちたがりのグリムと巻き込まれた自分はマジフトの試合に出られるようになった。ラギー先輩のユニーク魔法で弄ばれるレオナ先輩の姿を見ていたジャックの雰囲気が柔らかくなったような気がして、隣にいる長身をそっと見上げてみる。
「なにやってんだ、あんたら。……フッ」
「あ、笑った!」
「べ、別に笑ってねえ」
口元を緩ませたジャックを指摘すると、ぎょっとしたように肩を跳ねさせたジャックが狼狽えながら否定する。
「対戦相手がいねえなら、俺たちサバナクローが相手になるぜ。教師チームが相手なんて、ママゴト丸出しだろうがよ」
「なーんだ、お前案外良い奴じゃん」
「か、勘違いすんじゃねえ。借りをさっさとチャラにしちまいたいだけだ!」
楽しそうに笑うエースに、あくまでも借りを返すためだと言うジャックは、落ち着きなく頭の後ろを片手で掻き乱す。ジャックの発言はどういう意図なのだろうと考えている内に、全員がコロシアムに向かって歩き始めていたことに気が付かず立ち尽くしていると、不意に声を掛けられた。
「監督生」
は、として顔を上げると、ジャックが残っていた。──何かの間違いだと思った。友人であるエースやデュース、相棒であるグリムさえ、もう姿は遠い。ジャックだけが此方を振り返った体勢で、自分のことを待っていた。あんなに睨み合ったはずなのに、どんな風の吹き回しだろう。ぱちり、と瞬きをするとジャックが不思議そうに見返してくるので、小走りで駆け寄って、おずおずと見上げてみる。
「行くぞ」
此方を見下ろしたジャックは、何と、薄く微笑していた。呆気に取られている間に、ジャックは長い足で颯爽と歩き出してしまう。慌てて追い掛けながら、ご機嫌に振られる立派な狼の尻尾を後ろから見つめることしか出来なかった。
+++
──イソギンチャク、それはトラウマ。
テスト結果を確認した二人と一匹の頭から、パステルカラーの薄気味悪いうねうねが生えたかと思えば、アズール・アーシェングロット先輩と契約したためだと言い出した。赤点ばかりのグリムが一夜漬けで高得点を取るなんて、おかしいと思ったんだ。合点が行って溜息を零すと、後ろから声を掛けられる。
「騒がしいと思って来てみれば、お前らか。なにやってんだ?」
首を後ろに倒して仰け反るような体勢で「ジャック?」と振り返ってみると、腰に手を当てたジャックが此方を見下ろして「おう」と普通に返してくれる。あまりに自然だったので固まってしまった。……あれ、先日まで睨み合ってませんでしたっけ、我々。ぱちぱちと瞬きをしていると「その体勢、首痛くねえか?」とこれまた普通に心配してくれる。確かに痛いので、よいしょと頭を起こした。対応が普通すぎてちょっと怖くなってきたけど、威嚇されないだけマシだと思った。そうこうしているとエーデュースコンビが「イソギンチャクが生えていない……だと!?」「超真面目クンかよ!」とジャックを囲んで騒ぎ立てる。訳が分からないと言ったジャックが眉を寄せていると、イソギンチャクの生えた全員が突如、頭を引っ張られるようにして歩いて行ってしまい、二人で呆然と見送った。
「なんて間抜けな絵面だ……」
「何が起こってるか確かめよう」
呆れ返るジャックに、うんうんと同意を示してそう告げれば、ジャックが驚いて振り返った。
「は? なんで俺まで。俺には関係ないだろ」
「もしかして怖いの?」
関係ないと言いながらそっぽを向いてフンと腕を組むので、被せるように告げた挑発の言葉に、ジャックはぴくりと狼の耳を揺らした。
「誰が臆病もんだって?……チッ、お前もだんだんこの学園の空気に染まってきたな。仕方ねえ。少しだけなら付き合ってやる」
──うわ、単純だなこの人。
こんなにちょろくて大丈夫なのかと心配しながらも、けしかけたのは此方なので「ありがとう」と言ってみる。
「俺はこの変な現象の原因が何か気になるだけだ。別にアイツらのためじゃねえからな。くれぐれも勘違いするなよ」
そんな言い訳がまかり通るとすれば、これからほとんどの面倒事がその理由ありきで参加してくれることになりそうだ。それをあえて口にすることはせず、黙って頷くだけに留めてから、二人と一匹の後を追い掛けた。
鏡舎には大勢の人が集まっていて、オクタヴィネル寮へ次々と入って行く。テスト順位を叫んだり、インチキタコ野郎と荒々しく叫ぶ者もいる。……誰のことなんだろう。
「俺たちも行ってみるぞ」
仕方なく着いて来たはずのジャックに先導されて鏡の前に立つ。この人、責任感が強いのかもしれない。例え、渋々受けたことだとしても、受けると決めたのは自分自身だからとか言って、自ら面倒事に首を突っ込むタイプのようだ。苦労しそうだなあ、なんて失礼なことを考えていると、鏡に半分ほど体を埋めたジャックが振り返った。
「どうした。……今更ビビったか?」
口の端をつり上げて笑うので、目を丸くした。挑発されてしまった。ジャックの新たな一面を知って驚いていることを悟られぬよう、怒った表情を作って首を振りながら、その大きな背を鏡の中へ押し込んだ。
+++
「──うわあ! 水の中に寮がある!」
「マジかよ! すげえな、ナイトレイブンカレッジって!」
思わず叫んだ此方と一緒になって喜色を満面にした笑顔を振り返り、唖然とする。ジャックって、こんな顔もするのか。口を閉じることを忘れてジャックの無邪気な笑みを見ていると、ハッと気が付いた様子で、ゴホンと咳払いする。
「仮にも別の寮の縄張りに入るんだ。お前も浮かれてねえで、用心しろよ」
──へえ、お前「も」ね。
指摘すると怒りそうだけど、一応自覚はあるみたいだ。遊園地でジェットコースターとか激しいアトラクションに乗りまくって、疲弊した友人に呆れられるタイプだ。絶対にそうだ。
二百人近い生徒でごった返す所に辿り着いた。喫茶店のような、バーのようなそこは、どうやら『モストロ・ラウンジ』というらしい。飲食店が寮の中にあるとは思わなかった。やがて集まった生徒達を一段高い所から見下ろした男──アズール・アーシェングロット先輩が説明し始める。
内容は理解出来たが、二百人を超す生徒が一斉に対策ノートで良い成績を取ったら、契約の条件である上位五十位以内に入ることなんて厳し過ぎる。達成出来なければ、担保として預けた能力は戻らず、アズール先輩に絶対服従の下僕になる──という話のようだ。
頭を抱えていると、隣で静かに聞いていたジャックがいきなり飛び出した。
「さっきから聞いてりゃ……どいつもこいつも気に入らねえ!」
うわっと小声で飛び退くくらい、フロア全体に響き渡る大きな声だった。いきなり何を言い出すのかと見上げてみても、ジャックは気付いてないようだ。アズール先輩はイソギンチャクの付いていない我々を見るや否や、部外者と見なして立ち去るよう促す。すると、ジャックが牙を剥いて唸り出した。
「グルル……部外者だと? 俺は、自分の力で勉強した奴らと真っ向から競い合って勝ちたかったんだ。それが、あんたのせいで台無しになった。充分に当事者だろうが!」
──その理論では、完全に部外者ではないだろうか。単にジャックがそうしたかったという個人的な考えであって、オクタヴィネル寮の中央三人組は勿論、イソギンチャクの生徒達にさえ何の関係もないことだ。意識の高さに火がついてしまったジャックに嘆いていると、イソギンチャクの生えたグリムが助けに来たのかと声を上げたが、此方が何か言う前にジャックがばっさりと切り捨てる。
「勘違いすんなよ。俺はここにいる全員が気に入らねえんだ。アコギな取引を持ちかけたヤツも、他人を頼ったお前らも、どっちの味方をする気もねえ!」
「お前、何しに来たの?」
エースの言う通りだった。勝手に乗り込んで単身喧嘩をふっ掛けただけではないか。もしかしてこの喧嘩、自分も含まれているのだろうか。仕方なく成り行きを見守っていると、グリムが契約書を奪って破り捨てるという何とも意識の低い思い付きに、何故か次々に妙案との声が上がる。
取っ組み合いの喧嘩が始まりそうになったが、アズール先輩があまりにも強すぎた。金色の契約書がある限り、攻撃を弾き返されて、手も足も出ない。「どんな魔法を使っても傷一つ付かない」と豪語する、あの契約書がどうにかならないものか。じいと見つめる内に、イソギンチャク達が早速とばかりにこき使われ始めた。あまりの容赦の無さに、アズール先輩が立ち去った後も、その場から動けなかった。青い髪の物凄く長身の先輩らしき人に首根っこを掴まれ、虚しく引き摺られていく、気絶したグリム。そしてさっきの先輩にそっくりなもう一人の先輩は、両手にそれぞれイソギンチャクを掴んでいる。悲鳴を上げるエースとデュースを成す術も無く見つめていると、ジャックが上体を曲げて耳打ちしてくる。
「おい、監督生。一旦戻って仕切り直すぞ」
「でも、グリム達が……」
「さっきの勝負を見てたろ。丸腰じゃ話にならねえ」
ジャックに腕を掴まれ、ぐっと引っ張られる。皆には聞こえないと知りつつ「ごめん」と小さく呟いて、ジャックとオクタヴィネル寮を後にする。──耳の良いジャックだけが、その言葉を聞いていた。
今回はメモは下に書いていこうかな
よし配信したからツイートしてくる
おっけ 書きます
あっ
ファンとは
びえ
すごいこめんときてる
えあーーー????
なんかもうそのまま叫んでる
か、かきます……
はあとだ!!!???びくりした
ふわふわしとる はーとかわいい ありがとうございます
めためたうれしいのだが
続き貼るよ
次も貼ります
ここまで第一章です ちょとコピペ作業……
飲み物変えてきます
うし、もうちょこっとだけやろかな
はわ ありがとうございます
23時ですね、そろそろ終わりにしないと
元データにコピペし直したらおしまいにします
よし貼り付け終わったので切ります
アーカイブ残しますのでよしなに~
カット
Latest / 60:59
カットモードOFF
15:48
ななし@19bbdf
|´-`)チラッ
16:12
ななし@19bbdf
ファンです…
16:20
ななし@19bbdf
頑張ってくださいᕙ( ˙꒳​˙ )ᕗ
16:50
七十
あわわありがとうございます頑張ります!!!!
17:00
ななし@19bbdf
七十さんも文も好きなファンです
17:40
七十
うれしうれし……励みになります……
17:42
ななし@19bbdf
ジャックを好きになったキッカケが七十さんなのでそこからずっと好きです
18:08
ななし@19bbdf
大丈夫です??
18:11
ななし@19bbdf
www
18:36
ななし@19bbdf
気にせずかいてください( ͡° ͜ʖ ͡° )
18:57
七十
嬉しくてちびりそうです……書きます……
19:47
ななし@19bbdf
タッチしたら飛びましたね!いいやつ発見しました(·∀·)ニヤニヤ
21:27
ななし@19bbdf
21:51
ななし@6c4f21
七十様初めまして……!!!いつも拝見させていただいております大好きです……!!!この御本も通販のご予定があるとのことですので購入させて頂こうと思います!校正作業めちゃくちゃ大変ですが頑張ってください!!
22:53
七十
ハートもコメントもありがとうございますめっちゃ嬉しいです……もうこれしか言えない……
23:35
七十
通販もしかしたらイベントよりちょっと遅れちゃうかもしれないですが、必ずやりますので宜しければ……!手に取ってやっていただけると……!!!!
26:00
ななし@6c4f21
もちろんでございます~!!!!!いつまでも待たせていただきます……!!!これからも大好きです!応援させていただきます!
26:40
七十
うああうありがとうございます絶対に脱稿します……!!!!
34:26
ななし@19bbdf
コピペでも見てる側は楽しいです(´・ω・)っ旦~
34:41
ななし@19bbdf
いってらっしゃいです
38:52
ななし@19bbdf
無理だけはしないでくださいね(`・ω・´)
39:56
七十
まじすか!前回アーカイブに残して初めてこんな感じで見てたのか~って分かったくらいで……書いてる最中は感覚よく分からないですね~
40:13
七十
へへへありがとうございます……!
41:00
ななし@19bbdf
作業系が好きな方にはご褒美のLiveなのでお世辞とかではなく本当に楽しいですよ!
41:27
ななし@19bbdf
作業の邪魔になるの嫌なので黙りますね(・×・)
54:23
ななし@19bbdf
お疲れ様でした、いい時間を過ごせました!
55:46
七十
はわ、コメント気づかなかった……ありがとうございます!楽しいと、いい時間と言っていただけてホッとしました。
56:23
ななし@19bbdf
またLiveしてたら見に来たいです( ˘ω˘ )♡
57:05
七十
嬉しいです!原稿分でやれるかは分からないですが、テキストライブはまたやりますね!!
57:58
ななし@19bbdf
ありがとうございます!嬉しいです(`・ω・´)
59:07
ななし@19bbdf
暖かくして寝てくださいね、おやすみなさいです!
59:48
七十
長時間お付き合いくださり、本当にありがとうございました!おやすみなさいませ~
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