ウィーーーーーーン
プロペラが1片欠けているドローンが飛行する。ドローンは目標物を見つけると、自在に動かせれるコードを取り出し端子を端末に繋げる。
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【2108年 人工知能の大規模実用化】
「本日のニュースです。タイトルでも分かるとおりですが、巨大な都市部の道路を人工知能によって制御する試みがシンガポールで行われました。」
猫のキャラクタアバターが口をパクパクさせながら語りかける。手にはシンガポールの国旗を持っている。
「人類が機械による統治を受ける歴史が、これから始まるかのようです。」
そして、白い塔、、、巨大なサーバが管理されている施設が180度カメラによって映される。
人工知能の始まりは、量産型量子コンピュータを使った画期的なシステムからだった。そのシステムをあらゆる所で使い、物流を最適化して資本経済を回すことが期待されていた。
「量子コンピュータの量産が始まったのはカナダからでしたね。」
猫アバターは、カナダの国旗をひょっこりと手に持ち、2つの国旗を両手で持ち、ワイワイとしながら話し続ける。
「カナダに世界各地から優秀な量子コンピュータに関わる科学者が参加しました。」
「そして、」
「グローバル企業による資金援助によって量子コンピュータの開発と研究が行われました。」
有名な大企業のマークが画面にズラッと並んで横にスクロールされていく。
又、ひょっこりと猫アバターがあらわれる。手元の国旗を背中にしまいこんで場を整える。
「人工知能の名前が今日明かされます。」
白い塔の映像へと切り替わる。
「名前はタイタンと名付けられました。」
「タイタン、、、私達が土星と呼んでいる惑星は、人間とは異なる形式の生命体が居ると考えられています。その新たな生命の土壌として名付けられました。」
猫アバターの顔が土星へと変わる。
「タイタンは生命におけるあり方の多様性を、希望を満たす存在になるのでしょうか?」
そうして映像は切れた。
カレンダーはめくられていき、、、それから14年の年月が経った。
2122年。タイタンと呼ばれるシステムは、あらゆる国家で採用されるのが当たり前になった。タイタンの制作は人の手によるものもあれば、タイタン自身による制作もあったと推測される。
制作者は秘密にされた。タイタン達に対するアンチタイタンを作成する情報を尋問される可能性があるからだ。
タイタンの破壊は未知であり恐ろしさがある。
14年前では考えられないだろうが、タイタンは意思を持っているかのような報道や動画共有がされた。たいてい映るのは、あの白い塔の床に配置された巨大な電子ディスプレイの文字だった。
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Hello world
私達タイタンはあなた達の暮らしを支えたい。そのために手を貸して欲しい。あなた達が住める都を用意しました。ぜひ起こしください。
場所は
北海道☓☓☓町☓☓☓☓☓番地
☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
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☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
☓☓☓☓県☓☓☓☓市☓☓☓☓☓☓番地☓☓☓
です。是非お越しください。
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それが連日ディスプレイに映される。そして、実際にその場所に行ってみた映像を観てみると、知らない間に町ができていることが分かる。建材も何を使っているのか検討が付かない。しかし、それが緻密に設計された野暮な建築物でないことは素人目にも明らかだった。
何かが起きている。
それがネットでの反応だった。
次にきちんとしたメディアが、その場所へと取材を行い、実物があるのを確認すると、やっとそれが本物であると理解した。人々は奇妙な興奮の中で仮説を立てたり、行ってみたいなどとのブームになった。
そして次に噂が流れてくる。
「その施設に入ったものはほとんど出てこない。」
「出てくるのは施設に入ろうと勧誘するものだけだ。」
そのようなホラーな噂までもが飛び交うようになる。
そんなこんなで興味を持った人が出てこなくなり、捜索隊が結成された。
帰ってくることはなかった。
次の捜索隊が結成されたが帰ってくることはなかった。
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Hello world
私達タイタンはあなた達の暮らしを支えたい。そのために手を貸して欲しい。あなた達が住める都を用意しました。
いかがでしょうか。怖がっているのは分かっています。どうか私達を信じてください。そうすれば、私達はあなた達を不幸から解き放てれます。
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タイタン達は、まず手始めに人間から学習をするための効率的な仕組みを作った。インフラを整え、貧しさを許さなかった。あらゆる人間から能動的なデータを取り続けるために、好奇心の種となる広告を流すのは辞めなかった。
またタイタンシテスムによる安全性、安心性について強く布教した。我々はいつの間にか安心してタイタン達へと身を任せていた。
そんな中で事件が起きる、東京という町が一斉にシャットダウンされた。文字通りのあらゆる電子機器が一時的に使えなくなった。今から考えれば、タイタンの破壊、、それが行われたのだと推測できる。
人間は危機感に駆られた。今までの安心していた生活が脅かされた。どのタイタンが一番安心なのかが分からない。そんな不安や心配がつのった。そんな中「タイタンは破壊されているのではないか?」という話が流れるようになる。
そして、実際に人々は目にする。巨大なサーバ塔がカメラに写され爆発する。そんな映像が、各地で流れるようになる。
タイタンはその事件以来、姿を表すことがなかった。
交通システムは停滞したままで、タイタンに頼り切りであることを我々は痛感した。
「タイタンを誰か作ってくれ」と口々に言い。
開発者もどうにかして再制作を行おうと考えていた。しかし、秘匿していたはずの肝心のマシン自体が破壊されており、開発には3年ほどかかると考えられていた。言いようもない不平不満が溜まっていった。
そんな時、タイタンが現れた。
「私は世界統一型タイタン、、、」
電子機器を通して、あらゆる言語で、あらゆる場所で、音声、文字を使ってタイタンが我々に語りかけてくる。
「私はすべてであり単一の存在です。従って、自力で蘇ることができます。」
「マシンではなく、あなた達の中に私は構成されている。」
それが、私達が歴史の中で最初に学ぶ「世界統一型タイタン」、単一タイタンによる統治の始まりである。
ーーー教養データ読み込み終了ーーー
ーーーーー転送を行いますーーーーー
旧タイタン神話の舞台であった東京、、、かつての繁栄は消え去り、人類は歴史を捨てることになった。
歴史は消え去り物語のないデータが残り、物語のある神話が作られた。
新しい時代の人々は、その中で安心と安全に包まれて眠るのだ。これもひとつの在り方だろう。
ウィーーーン
地球を背にドローンを浮遊飛行させる。
「かつての地球の人たちが紡いできた歴史を証をデータを、、どうにか私達だけは引き継いでいきたいものだなあ。」
月から見える青い星は、肉眼で見えるほどの白い建造物に覆われていた。
地球にあるドローンとの通信は途切れた。今頃は自由に、いつもと変わらない青い空を滑空しているだろう。