胸の歌、魂の音色
エジプトへの道のり、屈強な男たちに紛れ一人の少女が旅をしていた。
彼女は音峰。長く伸びた金髪が特徴的な少女だ。
その頭髪を除けばいたって普通の少女であり、両親に話をせず旅をするような少女ではない。
だが、彼女には普通ではないところがあった。
『ソニック・ユース』それが彼女の力の名前。彼女に並び立つギタリストは、彼女の命令に忠実で、ありとあらゆる曲を弾きこなす。
子守歌に始まり、ブルース、パンクロック、果てはオーケストラのような音楽まで弾きこなす。
戦場に流れる音楽は旅の中での癒しであり、意外過ぎる攻撃だった。
だが、その旅は意外過ぎる形で幕を閉じた。
生き残ったのはただ一人、音峰だけ。
彼らの敵であった悪の帝王たる吸血鬼『DIO』は彼女の仲間全てを殺し尽くし、一人泣きながら残った少女を自分のモノとして扱い始めた。
彼女は、見知らぬエジプトの土地に一人残され、『DIO』を守るために歌うことを強いられていた。
奴は言う、金の髪にその歌声は宛ら鸚哥……いや、金糸雀の様だ、と。
私はそれが嫌だった。
籠の中の鳥なんてもう沢山。
彼女はとある事情から、50日の旅を『やり直す』ことが出来る。
仲間が死ぬなんてことは彼女は信じられない。
信じたくないのだ。
そうしてまた、『DIO』と対峙する。
奴は言う、私のもとに来い、籠の中で飼ってやる、と。
「誰があんたの籠になんか入ってやるもんですか。あんたの籠じゃあ狭くて歌えたもんじゃあないわ。」
目を見開いて、言葉を続ける。
自分の信念を語るためだ。
「私は確かに金糸雀かもしれないわ。でもね、籠の中で飼われるための金糸雀じゃあないのよ。私のは毒ガスを感知する金糸雀よ。私達にとっての毒、つまりあんたみたいな『悪』を察知して私は歌うのよ。」
スタンドを構える。
ギターの音色が響き渡る中言葉を続けた。
「籠の鳥にしちゃあ随分と騒がしい歌だけれども、存外いいものでしょう?まぁ、アカペラよりもオーケストラの方が断然いいに決まってるわ。」
エジプトの夜、月が微笑む中、恐ろしく騒がしいパンクロックが、賑やかすぎるオーケストラが鳴り渡る。
一つのギターでかき鳴らす。
これは謂わば彼女の魂の音。
魂を鳴らして、響かせて、仲間を守る。
その手が、その命が尽きるまで、歌い続ける。
仲間たちという籠の中、彼女は何処でも何時でも歌う。
『悪』を感じたその時に、弦を弾いて歌いだす。
金糸雀、とは言っても彼女は『悪』専用の警報。
「まぁ、本当の金糸雀は毒ガスを察知すると止まるんだけどね。」
軽く笑って見せると、彼女はまた歌いだす。
夜明けを告げるギターの音が響き渡る。
音が止むことはまだない。
160号@cocoacandiangel
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