「今日は泊めてくれて、ありがとうれなちゃん」
「い、いや気にしないでいいよ」
今日紫陽花さんはご両親と弟さんも家にいないらしく、わたしの家に泊まりに来た。
紫陽花さんはれまフレの真唯とは違って普通に仲がいい友達だし、家に泊まりに来ることなんて全然普通であたりまえのことだしね!
というわけで現在の時刻は10時過ぎ、晩御飯も食べてお風呂も入り終わっている状態。
わたしの部屋にはお客様用のお布団が敷かれ、その上に女の子座りをした湯上り姿の紫陽花さんが鎮座している。
え?すごくない?あの大天使の紫陽花さんがわたしの家に泊まりに来てるんだよ?
いつもなら飾りっ気のない地味な私の部屋もパジャマ姿の紫陽花さんがいるだけで明るく華やかになったような気がする。
それにいつもはふわふわの髪も今日は湯上り姿なので、いつもの雰囲気と違ってなんだか色っぽく感じて同性のわたしでもドキッとしてしまう。
「ん?どうしたのれなちゃん」
余りにもじっと見過ぎていたので紫陽花さんに声をかけられてしまった。
「あ、いや、・・・紫陽花さんの今日のパジャマ似合うなぁって」
「そうかな?一応この日のためにデパートでかわいいパジャマを買ってきたんだ」
「え!?この日のために!?」
「あっ・・・ち、違うの!この前偶然偶々このパジャマを買ったタイミングとれなちゃんの家に泊まるタイミングが同じになっただけで、服とかに気合を入れてきたわけじゃないから!」
紫陽花さんが顔を赤くしながら手ををブンブンと振って否定する。
そ、そうだよね!別にわたしの家に泊まるのに気合入れる必要とか無いもんね!
心の中の紫陽花さんが「そうだよ。れなちゃんは真唯ちゃんと違って別に大したことないから、気合を入れる必要なんてこれっぽっちもないもん」と言葉のナイフを容赦なく突き刺してくる。
「うっ・・・大したことない女でごめんさい・・・」
「え!?そんなことないよ!れなちゃん可愛いしみんなのために頑張ってるし今日来てるパジャマもかわいいよ!」
「そ、そうかなぁ?」
紫陽花さんの慰めの言葉が五臓六腑に染み渡る。たとえそれがリップサービスだとしても紫陽花さんの可愛い声で再生されるなら、回復効果としては十分だ。
「そうだ!れなちゃん、今度一緒におそろいのパジャマ買いに行こうよ!」
「え?紫陽花さんとおそろいのパジャマをですか」
「うん!」紫陽花さんが屈託のない笑顔で返事をする。
こんなわたしを誘ってくれるなんてやっぱり紫陽花さんは優しいなぁ
「紫陽花さん・・・すきぃ・・・」
「うぇ!?や、やっぱりれなちゃん私のこと・・・」
紫陽花さんが恥ずかしいのか顔を赤くしてワタワタしている。照れてる紫陽花さんも可愛いなぁ
「じゃあ、来週のお休みにみんなを誘って行こうね」
「うん、二人っきりで・・・え?」
「あれ?」
「・・・そ、そうだね!みんなで行く方が楽しいもんね!」
紫陽花さん何か言いかけてたような気がしたけどよく聞き取れなかった。
その後、みんなでパジャマを買いに行く話からパタリと会話が止まってしまった。
うう、気まずい。もう天気の話も服装の話もしてしまったので、わたしの使える会話デッキは無くなってしまった。
寝る時間まではまだ少し時間があるし何か話題ないかな。あ、そうだ。
「そ、そういえば今日わたしの両親帰ってくるの凄く遅いんだよね」
「えぇ!?れ、れなちゃんそれってど、どういうこと?」
「え、あ、いや普通に家に人がいないなぁと思って」
「えぇっ!?」紫陽花さんの顔が真っ赤に染まっていく。
や、やばい・・・紫陽花さん焦ってる感じだし話す内容を間違えたかも。
わたしの脳内の紫陽花さんが「え?れなちゃんと長い時間家に二人っきりとか流石にきついんだけどwww」と言葉のナイフを刺してくる。
「れなちゃんそれってつまり・・・」
「違うの!安心して紫陽花さん!今日は妹もいるから二人っきりじゃないよ!」
「・・・・・・・・え?」
「うん、もし紫陽花さんが不安なら妹もここに呼ぶから」
「えぇ!?れ、れなちゃんなんで?」
「え、いや紫陽花さんわたし一人より、妹もいたほうが嬉しいかなって。」
「れ、れなちゃん的には3人でするのはふつうなのかな・・・そ、そういえば沙月ちゃんとも恋人同士とかも言ってたし、あでもあれはさつきちゃんが冗談でって話だったなぁああでも真唯ちゃんとも最近なんか仲いいしもしかしたらそういうことなのかな。でもれなちゃん優しいからいやでも大好きって言ってくれわけだし・・・・」
紫陽花さんは可愛い小さな頭を抱えて何やらぶつぶつと悩み始めてしまった。
「紫陽花さん大丈夫?妹呼ぶ?」
「うぇぁ!?・・・えっとね。れ、れなちゃん」
「うん」
「・・・私初めては二人っきりがいいな・・・」
紫陽花さんは消え入りそうな声でそういいつつ、うつむき加減のまま私の裾を小さな手でキュッと握ってくる。
その小さな手が少し震えているように見えた。
「れなちゃん、私ねれなちゃんといるとすっごく楽しいし、れなちゃんが頑張っているところを見ると自分も頑張らなきゃだめだなぁって励ましてもらってるの。」
「そ、そうなの?」
「だ、だからね!きょ、今日は・・・れ、れなちゃんのベッドで寝たいなぁって・・・」
「うんいいよ」
わたしは毛布をめくりどうぞと紫陽花さんをベッドに寝かしつけその上に毛布を掛けてあげる。
「紫陽花さん大丈夫?臭くない?」
「えー臭くないよー。れなちゃんの香りがいっぱいしていい匂いだよ。」
「なんか恥ずかしいなあはは。じゃ私は来客用の布団で寝るから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
わたしは来客用の布団にするりと入り手元のリモコンを操作して電気を消す。
「じゃ、紫陽花さんおやすみ!」
「・・・えあ、うん、お、おやすみれなちゃん」
さっき手が震えてたし多分来客用の布団だと寒かっただろうな
くぐもった声で「なんで~~~~~~~~~」と聞こえたような気がしたけど気のせいだろう。
いつもとは違う状況で会話し続けて疲れたのもあって、わたしはその日はすぐに眠りに落ちてしまった。
今日は紫陽花さんが泊まりに来てくれて幸せだったなぁ。