未だ手紙は切符にならず
 高校2年生になった今でも彼女一人作れたことのない俺だが、過去に1度だけ告白を受けたことがある。今から6年前、小学5年生の時だ。
 放課後、教室に呼び出され好きだと伝えられた時には、それはもう嬉しかった。二つ返事でOKして、その日はその女の子と二人で帰った。初めてできた恋人に浮かれていた俺だから、次の日に女の子に引っ越すと告げられたときには目の前が真っ白になった。
 どうやら、引っ越してしまうから、勇気を振り絞って告白してきたらしい。しかも引っ越すのは明日だから、会えるのは今日が最後だと言われ、泣きそうになった。でも女の子の目の前では泣きたくなくて、逃げるように保健室に行き、そこで大声を上げて泣きじゃくった。
 一通り泣いた後、事情を知った保健室の先生に手紙を書いたらどうかとアドバイスされた。顔を洗い腫れた目のまま女の子に住所を聞き、帰る途中に人生で初めて便箋を買った。最初の手紙は引っ越す直前に女の子の家に行き手渡した。女の子は泣いて喜んで、抱きついてきた。思わずつられて泣いてしまった。
 女の子が引っ越してから、毎週のように手紙を書いた。女の子からの手紙が届くと、すぐさま返事を書いて、ポストに投函した。学校に行く前にポストに寄るのが、俺の習慣になっていた。
 しかしそれも、時が経つごとに手紙の数は少なくなっていった。中学校に入ってからは学校や部活のことで忙しくなったこともあり、女の子が引っ越した3年後からは1年に1回の年賀状を送り合うだけになってしまっていた。
 それから俺は高校生になって、一人で引っ越した街にも行けるようになった。しかし、それはなかなかが進まなかった。年1回だけの年賀状を送り合うだけの仲では、女の子に会いに行く理由があまりにもなさすぎた。今年も女の子からの手紙が届く。今年は大学に進学する旨が書いてあった。
 今でも、女の子のところへ会いに行きたい。だけど、君が小学生の時に振り絞った勇気を、俺は未だに出せずにいる。
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