9.僕を愛さない君が好き
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襲撃後 アンジェラができる前
彼のすべてはカルメンである。彼に遺されたものはあまりにも少ない。カルメンは自らを犠牲にして彼を歩ませ、そして皆で一生懸命に築いた砂の城は襲撃によって崩れてしまった。
カルメンが消えてから、アインは振り返らなくなった。彼女の愛した都市の人間を救うことだけが弔いになる。引き返すには遅かった。都市の苦しみを知ってしまった。そして、活路を拓くことができるという確信。前に進む選択肢がそこにある限りは止まることは許されないと。足がある限りは歩き続け、足を失ったとしても腕だけで這いつくばりながら進むのが彼らしさでもある。
だから、ベンジャミンにとって自分のことを彼に見てもらうというこは重要ではない。ただ、そばにいることを許してもらうだけで十分なのだ。つまり、助手の仕事はそばにいるという許可の証明でもあり、それ以上に求めるものはない。助手とは文字通り手助けをする仕事であり、同等の立場ではない。低い立場でありながらも、隣に立つことが可能である。カルメンを失い、彼が孤高の存在になろうが、助手である限りはそばにいることができる。
ただし、ベンジャミン個人として見てもらうのではなく、ベンジャミンという名前の助手として見てもらうこと。それだけは必要だ。個人としての対話はお互いを破滅させるだけだ。ベンジャミンがアインの個人の領域に踏み入ったら彼を傷つけるだけだろう。アインが「先生」ではなくなった時、同時にベンジャミンは「アインの助手」ではなくなる。悩みや苦しみを知ってしまったら飲み込まれるからと線引きをして、正しく「先生」と「助手」であるべきだ。
元々、アインは交わす言葉に個人的な感情というものをあまり含ませない。それは彼の性格でもあり、生き方でもある。それはアインに限らず都市の基本的な生存戦略とも言える。ただ、個人的な感情を言葉に含ませないだけで、彼の心の内というものにどんな感情が波打っているのかは分からない。ただそこに何もないわけじゃないと心の隅に留めておく。
ベンジャミンはただ自分のやるべきことを淡々とこなすだけである。今が経験してきた中では圧倒的に鮮烈な時間を過ごせている。壊滅的な状況になろうとも、彼が生きているということ彼がまだ前に進むことができることをベンジャミンは喜べる。もちろん仲間の死は悲しいことではある。それでも、アインのすべてがカルメンであるようにベンジャミンのすべてはアインである以上、それは良いことなのだ。
確かにカルメンの理想も素晴らしいものだ。人間が人間らしく生きることの意味に最初に気づき、それを周囲に伝える彼女は貴重で、尊敬すべきだろう。しかし、ベンジャミンはアインに惚れ込んでしまったのだ。先の時間を見つめ、優しくありながらもどこまでも残酷にもなれる姿は高潔というのが相応しい。
その高みに届かぬとも手をのばしてみたいと思ったのだ。彼と同じところには立てないことは知っていた。ならば、誰よりも近づいて、理解者になり、彼を支えたい。
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113:16
のうのう
長時間の視聴ありがとうございます。これにて完成としますので配信を終了とします。
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向き
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進捗晒し(たいとるぱれっと 9.僕を愛さない君が好き)
初公開日: 2020年11月23日
最終更新日: 2020年11月23日
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コメント
いい感じの表現が出るまで粘ります
予定は決まってない