地震で全生徒が避難したような静けさだった。それと緊張と僅かながら恐怖が同居していて、僕は不思議と息を呑む。ガララ、と立て付けの悪い図書室の扉は、なにかコツがいるのかなかなか上手く開かなかった。
そこに一人の少女がいることに気づいたのは、しばらく経ってからだった。
普段使わない図書室の迷路のような書架に背を預けて、僕は一冊適当に手に取った。
難しい文章だった。中学の頃はよく本を読んでいたものだったが、今では学校でつるむ連中も様変わりして、読む習慣がなくなった。適当にとった、興味のない本だったからでもあるのだろう。現国の授業で読むような気難しい文章だった。
新刊コーナーに目を向けると、僕の好きな作家の本があった。確か一ヶ月前に出版された本だったが、新刊として陳列されていると、公立高校の金の流れの悪さを感じる。
それでも僕は金欠でその本をまだ買えていなかった。シリーズ物で、前巻はとても白熱して待ちきれなかったのを思い出す。ちょうど二冊共に納入されたようだが、前巻は陳列棚にはなかった。貸し出し中なのだろうか。
最新刊を持って、席に着く。そこでやっと、僕は図書室の奥の方に物憂げに本を読んでいる少女を見つけた。僕がそこで凝視をしていても、彼女は僕のことに気づかない。妙な関係だった。ペラとその音が聞こえた気がする。彼女がページを捲った。
僕だけが彼女の事に気づいていて、僕だけが彼女を見つめている。その危うさにはっと気づいて、かぶりを振った。