初めに
思うままにエスコン7のSSSを連ねていきます。
*男性トリガー受け
*プロット無しという手探り執筆
*どのCPをどう描くかは神のみぞ知る
*着地点も神のみぞ知る。上手く着地できたら良いな…
以上の要素が含まれますので、ご注意下さい。
(他ジャンルについては別枠を取って書いていきます)
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ロングキャスター×トリガー
(”きゅんとする”話)
思いがけず、胸に刺さる。ふっと視線を奪われてしまう。
解りやすく言うなら〝きゅんとくる〟。そんな場面に出会した経験が、誰しも一度はあるだろう。少なくとも、ロングキャスターにはあった。
春の木漏れ日のような笑顔を見た時とか。
夏の風に髪を遊ばれる横顔を見た時とか。
初めて目にした秋の服装につい意識を持っていかれて、
冬の寒さにかじかむ指先へふうふうと息を吹きかける姿に、通り過ぎようとしていた足が止まってしまう。
その手を握って温めてあげたい、などと思った経験が一度、二度。
ゆえにロングキャスターにとって、きゅんとくる、という感覚は決して未知のものではなかった。
だが、
(いや、これは違うだろう。たぶん……違うはずだ)
灯台戦争を乗り越えた後。国際停戦監視軍に席を置くようになった彼は近頃、眉間に皺を寄せた珍しい表情で思い悩む事があった。
例えば、食事をしている時に思いがけず目にした、美味しそうに緩む口元とか。
寝癖を教えてあげた時に見せた、恥ずかしそうに俯いて髪を直す姿とか。
普段は低空飛行な表情が、僚機とふざけ合っている時に幼い笑みをほころばせたとか。
そういった場面で自分の胸が、静かに。けれど確かに脈打つ感覚を、ロングキャスターは覚えていた。
知らない感覚ではない。否、そんな言い方は消極的過ぎるだろう。
知っている。間違いなく覚えのある感覚なのだが……どうにも、認め難い。
ロングキャスターは溜め息を吐いた。
相手が女性であったなら、彼が頭を悩ませる事などなかった。基地で働く同僚……例えば同じ部隊に属する勝気な彼女が気になる、という事であれば、いくらかの葛藤を経た後に自分の気持ちを正面から受け止めただろう。
しかし、今。ロングキャスターが心を揺らされている相手は女性ではない。
同性で、一回り近く年が離れていて、終戦の英雄と呼ばれているエースパイロット。
TACネーム トリガー。
もはや空を飛ぶ者なら誰もが一目置く仲間の彼に、ロングキャスターはきゅんと……否。妙な感覚を覚えるのだ。
ある日の事だ。基地の廊下を歩いていると不意に服の裾を引かれて、ロングキャスターは足を止めた。何かと思い振り返るとそこには、指の先で控えめにこちらの服を引っ張っているトリガーがいて、少し低い位置から見上げてくる深緑の瞳と目が合った。
「ロングキャスター……」
どこか頼りなげで、呼びかけてくる語調は迷いを含んで小さく萎む。
まるで飼い主に置いていかれまいとする子犬のようだ、と。
そう思ったロングキャスターの胸は、とくりと一つ音を鳴らした。
「ど、どうしたんだ、トリガー?」
自らの反応に動揺するも何とか皮膚の下に心を押し込めて訊ねると、トリガーは周りの耳を気にしているようで周囲をきょろりと見回した。
呼び止めてきた可愛い仕種、いやいや遠慮がちな仕種も初めて目にしたものだが、これもまた珍しい姿だとロングキャスターは軽く目を見張った。マイペースが常である彼が、他人の存在を気にするとは……。
(場所を変えた方が良いか……?)
密かに思案するロングキャスターだったが、どうやらここで用事を済ませる事に決めたらしい。トリガーはロングキャスターの肩に手を置いて僅かに背伸びをすると、耳に唇を近付けてこう言った。
「この前差し入れしてくれたお菓子、すごく美味しかった。あの……どこで売っていたのか、教えてもらっても良い、かな……?」
(……ッ!)
さきほど音を立てた心臓が、また一つ妙な音を鳴らす。
ロングキャスターは唇をぐっと結んで、零れて来そうになる何かを飲み込み作り慣れた笑顔を返した。
「あぁ、もちろん!気に入ってもらえて嬉しいよ」
「!ありがとう、ロングキャスター……!」
そう応えるトリガーは、安堵と喜びの混じった微笑で端整な容貌を彩った。あまり感情を表に出さない彼の笑顔はたとえ控えめなものであっても目にする機会は数えるほどで、ロングキャスターは言葉を失い、次いでハッと我に返り、店の場所をトリガーに教えた。
こんな風に心の揺らぐ機会があり、その回数が指折り数えて両手でも足りないほどにまで増えていって。しかも現在進行形となると、さすがのロングキャスターも平静ではいられない。
(これは、あれだ。まずいやつだ)
ロングキャスターは難しい表情で腕組みをする。
(冷静になれ、俺。相手はトリガーだ。年下の男で、エースと呼ばれるほどの腕前を持つパイロットだぞ。そんなトリガーを相手にこれは……少し、いやだいぶ、おかしいと言うか……正しくないだろう)
魅力的な人物だという部分は、否定しない。彼の持っている肩書きを除いても、その人柄には好感を抱く。
だが好意の種類を間違えるような真似は避けなければならない。自分のためにも、相手のためにも。
(そうだ。落ち着け、一度しっかり落ち着くんだ。確かにトリガーは空での印象と戦闘機から降りている時の印象は違うが、そのギャップがまた良いとか、妙なことを考えるな。俺)
(普段は冷静で表情一つ動かさないのに、好物の林檎の話題を出すと積極的に話に乗ってくるところが可愛いなんて思うんじゃない)
(仲間とふざけている時や眠そうに目を瞬かせている時の横顔は存外幼くて、見ていると頭を撫でたくなるなんて……)
まったくもって、普通の思考ではない。
(きっとトリガーが、今まで俺の周りにいなかった類いのタイプだから、どうにも気になるというだけの話だろう)
そう結論づけて、うんうんと頷く。
そんなロングキャスターの頬へと不意に、温かな温度が押し付けられた。
びっくりして閉じていた目を開けば小ぶりなペットボトルを手に持っているトリガーが側にいて、こちらの顔を覗き込んでいる。
「大丈夫?」
「だい……じょうぶ、だ」
「本当に?何だか唸っていたけど」
「ちょっと、考え事を、な」
「……そっか」
これ、あげる。そう言ってトリガーは手に持っていたペットボトルをロングキャスターへと差し出す。
思わずといった調子で受け取れば手のひらに心地好い温もりが触れて、彼はもらったそれへと視線を落とした。
アップルティー、とラベルに書いてある。
(トリガーらしいチョイスだな)
そう思うと難しく固まっていた心も表情もふわりと解れて、ロングキャスターは彼に笑いかけた。
「ありがとう、トリガー」
「どういたしまして。……何かあった?」
「いや、なに。心配してもらうようなことじゃない。部隊の話じゃなくて、俺自身のことだからな」
「部隊のことじゃなくても、心配になるよ」
「俺の、ごく個人的なことでも?」
「もちろん」
「……」
当たり前のように言い切られて、ロングキャスターは僅かに瞠目した。
もらったペットボトルの温もりが、やけに鮮明に感じられる。
「……優しいな、君は」
「そうかな」
「こうして俺を気遣ってくれるんだから、優しいさ」
「んん……。でも、俺、誰にでも優しくできる訳じゃないよ」
「万人に優しくなんて、誰にも出来ないことだと思うが」
「そういう話じゃなくて。つまり、……ええと」
「?」
首を傾げるロングキャスターの前で、トリガーは言葉を迷わせた。
深緑の双眸は惑い、揺れて、躊躇いがちにハチミツ色の瞳を見返し。
小さな声で、告白する。
「ロングキャスターには、何だか……優しくしたくなる、と言うか。他の仲間よりも気になる、と言うか」
「……え」
「だから、俺のことを優しいなんて言うのはきっと、あなただけだと思う」
「……、………」
ロングキャスターは微かに唇を開き、何かを言おうとする自分の口元を手のひらで押さえた。
心臓が脈打っている。勘違いでは済ませられないほどに高鳴って、どくどくと強く胸を内側から叩いている。
今の言葉は、どう受け止めれば?
否、それもそうだが、
(俺はトリガーの言葉を……どう、受け止めたいんだ……?)
どくり、どくりと、心臓が音を鳴らしている。
吐き出す吐息が小さく震える。
ロングキャスターは手のひらの中のペットボトルをぐっと握り、瞼を下ろして深呼吸を一回、二回。
それから気まずげに佇んでいるトリガーを見つめて、そっと言葉を返した。
「ありがとう、トリガー。……嬉しいよ」
その台詞に、彼は意外そうにぱちりと瞳を瞬かせる。
「嬉しい?」
「あぁ」
「……そう?」
「本当に、嬉しいよ。嬉しすぎて、思わず抱きしめそうになった」
「ハハッ」
冗談だと思ったようだ。肩を揺らして笑うトリガーの姿をじっと見つめるロングキャスターは、そうだ、と言葉を繋げて言った。
「最近オープンしたばかりの店で、一度行ってみたいと思っているところがあるんだが、一緒に行かないか?」
「どんなお店?」
「ケーキ屋なんだ。女子率はかなり高いだろうから、男二人で行くと気まずい思いをするかも知れんが……美味しいアップルパイを売っていると耳にしてな」
「!」
「君もどうかと、」
「行く」
「よし。じゃあ、決まりだ!」
笑顔を見せれば、うっかり釣られたのか。それともアップルパイの約束が嬉しかったのか。トリガーも柔らかな微笑を返してくれた。
その笑みにまた胸が弾んで、浮かれた口が理性を置き去りに言葉をつむぐ。
「二人きりで出かけるのは初めてだよな?」
「そう、だね」
「二人でケーキ屋なんて、なんだかデートみたいだ」
「デート?」
「あ……」
しまった、口が滑った。
追いついた理性が失敗したと気付く。ロングキャスターは慌てて訂正しようとしたが、トリガーがじわりと眦を赤らめる姿を目にすると取り繕う言葉は喉で絡まってしまった。
彼は深緑の瞳いっぱいにロングキャスターを映しながら、薄く唇を開く。しかし何かを言う事はなく、ゆらりと揺れる双眸を深い色に染めつつ目を逸らした。自らの片腕をぐっと握る動作から何かを思っている……感じている事は解るが、その温度を汲み取る事はただの仲間でしかないロングキャスターには、難しい。
嫌悪では、ないだろう。だが肯定だと捉えるのは、希望的観測が過ぎる。
はたしてトリガーは、今の言葉に何を思ったのか?
微かな緊張を背中にまとうロングキャスター。彼のすぐ目の前で惑い、俯いていた顔を持ち上げたトリガーは、はにかむように表情を柔らかく溶かして見せた。
「デートって言葉、久しぶりに聞いた。何だろう、そのせいかな。胸がどきどきしてる……」
「……」
「何だか、変な感じ」
「……、……トリガー」
「ん?」
息を深く吸って、ゆっくり吐き出し。
ロングキャスターは困ったような嬉しいような、そんな複雑な表情を顔に浮かべると天井を仰いで。
それから観念したといった様子の、無防備で温かい笑顔を彼に贈った。
「胸がどきどきする、その〝変な感じ〟だが。……たぶん俺も、同じ感覚を覚えているよ」
その〝答え〟を見つけたのは、俺の方が先のようだけれどね。
【END】
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バンドッグ×トリガー
(犬も食わないアレ)
「絶対に許さない」
硬質なトリガーの声が、部屋の空気を揺らした。
張り詰めた緊張感がリビングの温度を下げていく。
剣呑な色を孕んだ深緑の双眸。鋭い視線に射抜かれて、バンドッグは眉間の皺を深く刻むと舌打ちをした。
「大げさな奴だな」
「大げさじゃないよ」
「どうしてそこまで怒るのか、俺には理解できん」
「理解できないのは、仕方がないことだと思うよ。俺とアンタは違う人間だから。でも、分からないからといって許すつもりはない」
トリガーはバンドッグをひたりと見据えて、言葉を重ねる。
「ひどい人」
「トリガー、」
「俺、もう、バンドッグのことを信じられない。……信じられないよ」
「お前が本気で怒っていることは理解した。だが、それでも、」
「触らないで」
手を伸ばしたバンドッグの指先。トリガーの肩に触れかけた手指は乱雑に払われて宙に浮いた。
目を見開くバンドッグと、悲しげに表情を歪めるトリガー。
彼の手を払った自らの手をきつく握り締めるトリガーは、小さく肩を震わせる。
そして息を吸い込み、強い言葉とともに―ー吐き出した。
「俺が楽しみにしていたアップルパイを勝手に捨てたなんて……本当、本当に、信じられない……ッ!!」
……彼にとっては、心からの嘆きの言葉を。
「ハァ……」
体中の息を吐き出すような深い溜め息を吐くバンドッグは、下ろしている前髪をくしゃりと掴んで上に掻き上げ、開けた視界から呆れた眼差しをトリガーに注ぐ。
「だから、言っただろう。賞味期限が過ぎていたと」
「たったの一日だよ。一日」
「一日でも駄目だ。生ものだろうが」
「焼いてあるから生ものじゃないよ」
「訂正する。生でなくとも駄目だ。何のための賞味期限だと思ってるんだ、お前は?」
「うう……っ」
トリガーは言葉を詰まらせると、足元のゴミ箱に視線を落とした。そこには無残に打ち捨てられたアップルパイの姿があり、怒りの色は深い悲しみへと変わっていく。
もう見ていられない、といった様子の彼はゴミ箱から顔を背け、キッチンを出た。リビングのソファーにぼすりと座りしょぼんと背中を丸める。
間違った事をしたとは思っていないバンドッグだが、そこまで落ち込んだ姿を見せられてはさすがに罪悪感が頭をもたげてくる。ゆっくりとした足取りでソファーに近付いた彼はトリガーの頭を撫でようと手を伸ばしたが、触れる直前で指先を止めて、静かに下ろし。隣に座った。
二人分の体重を受けて座面が沈む。その振動に目を細めたトリガーは、けれどバンドッグの方は見ずに未練の声を零していった。
「アップルパイ……楽しみにしてたのに……」
「また買えばいいだろう」
「貰い物だから、どこで買ったか俺、知らないんだ」
「……。……どうしてさっさと食べなかった?」
「昨日は哨戒任務の予定だったから、仕事終わりに食べようと思って我慢したんだ。疲れた時は美味しい物を食べると、心も体も休まるから」
「だが、食べなかった」
「疲れすぎて寝ちゃったんだ。知ってるだろうけど」
「そうだな。このソファーで寝ていたお前をベッドまで運んだのは、俺だからな」
その言葉に、トリガーは小さく身動ぎをした。頑なな表情に気まずさが生まれて、操縦桿を操る事に長けた白くしなやかな指は肘置きを弱い力で掴む。
彼は視線を膝へと落とし、ぽそりと呟くように声を零した。
「……それについては、ありがとう。あと、ごめんなさい」
「謝る必要はない。役得なこともあったからな」
「?」
「眠りながらも俺から離れたくないと抱きついてくるお前は、可愛げがあって良かったぞ」
「!」
そう言われ、まったく覚えていないと驚くトリガーは反射的に顔を上げてバンドッグを見た。見慣れた意地の悪い笑みではなく、穏やかさが唇に浮かんでいる彼の微笑を目の当たりにし、深緑の瞳は見開かれる。
そして恥ずかしげに顔を赤らめ、顔を逸らした。
……いくらか気持ちも落ち着いたようだ。トリガーの横顔からそう判断し、バンドッグはもう一度手を伸ばした。
「トリガー」
呼びかけながら、白い頬に触れる。今度は振り払われなかった。だが応える仕種も無く、バンドッグは一つ瞬きをして思案する。
それから慈しむような手つきで、温かな頬をするりと撫でた。手の甲を軽く押し当て、指先まで滑らせる。結ばれた唇をトンとつついて、柔らかな感触を楽しむように少しだけ押しつぶして、唇の輪郭を人差し指の腹でなぞっていく。右から左へ、左から右へ。ルージュをひくように丁寧に、何度も、なんども。
すると唇をむず痒そうに動かして、トリガーはバンドッグの持つアイスグレーの瞳を見返した。
「……。……食べたかった」
「……、」
間違った事をしたとは、やはり思わないバンドッグだが。
悪い事をしたなとは、思う。
「悪かった」
謝るとトリガーも溜飲を下げて、もう良いよ、と言うように頷いた。
許しを得られたからと座る位置をずらして互いの距離を縮めたバンドッグは彼の顎をすくい上げ、薄く開いた唇に己の唇を重ね合わせる。
目を閉じて口付けを受け止めるトリガーは彼の胸元に凭れて、遠慮の見える手指を広い背中へと回した。
体温を交わし、吐息を交わらせつつ、触れる角度を変えて何度も口付ける。
受け止めるだけだったトリガーも唇を押し当て積極的にバンドッグの唇を求めるようになると、彼は片手をトリガーの後頭部へ回して毛先の跳ねた短い黒髪を撫でた。可愛がるような手つきにふるっと体を震わせたトリガーは、控えめな手指を動かしてバンドッグの背中へ大きく腕を回すと、僅かな躊躇いを挟んだもののぎゅうと強く抱きつく。
心地好い抱擁の感覚に唇を薄く笑ませたバンドッグは、トリガーの頬に口付けてから顔を離し、その肩を抱き返した。
「バンドッグって」
「なんだ」
「……賞味期限に厳しいんだね。もちろん、物によってはもったいなくても捨てた方が良い物もあるけど……アップルパイなら一日過ぎても大丈夫だよ」
「大丈夫じゃなかったらどうする」
「そうじゃなくて。食べ物はもう少し寛大な気持ちを持って、大事にした方が良いと思う、ってこと」
「食べ物一つより、お前の体の方が大事だ」
「え。……あ、ええと、……その」
予想していなかった彼の切り返しに、トリガーは動揺した。何とか言葉を作ろうとするも端から崩れていってしまい、たどたどしい声が零れていくのみ。
最終的には恥ずかしそうに頬を赤く染めて、バンドッグの肩に額を押し当て火照る顔を俯き隠した。
初な反応に吐息で笑い、バンドッグは彼の黒髪に口付ける。
「買ってきてやる」
「え?」
「アップルパイだ。そのしょぼくれようじゃ、しばらく引き摺りそうだからな、お前は」
「バンドッグ……!」
「ただし、お礼は身体で払うと約束しろ」
「なっ、え、か、からだ……っ?」
「それで、誰から貰った物だったんだ、あれは?」
「ええと、彼だよ。……ど忘れした……そう、ロングキャスター」
「……ロングキャスター……?」
バンドッグの声が、すっと温度を下げていく。
それに気付かずトリガーは続けた。
「俺がアップルパイを好きだってこと、覚えてくれていたみたいでね。美味しいって評判のアップルパイだから食べてごらんって言って、くれたんだ。さすがロングキャスターだよね。食事方面だけじゃなくてデザート系も詳しいんだから」
「あのアップルパイは、あいつが寄越したモノだったのか……」
「グルメなロングキャスターがくれたんだから、絶対美味しい、って、なに、バンドッ……!?」
バンドッグはトリガーを強引に上向かせると、驚く唇に噛み付くような口付けを仕掛けた。さきほどとは違う荒々しい、けれどバンドッグらしい力強さに鼓動を弾ませるトリガーは、吐息をじょじょに乱していきながらも懸命に受け止め、彼の熱量に応える。
容赦のない唇と舌で呼吸を奪い熱い口腔を深く犯していくバンドッグは、呼吸を荒げるトリガーの体が力を無くしくたりと寄りかかってくると、ようやく満足して唇を開放した。
離れる前に厚い舌で彼の濡れた唇を舐め上げ、びくりと肩を竦ませるトリガーの耳朶へと甘く噛み付き、そして囁くような声音で低く問いかける。
「俺の知らないところであの男に餌付けされているのか、お前は?」
「え……餌付け、って……」
「俺の前で他の男を欲しがるとは、いい度胸だな」
「ほ、欲しいのはアップルパイであって、男じゃ、」
「気が変わった。あのアップルパイは諦めろ」
「!」
「代わりに俺を食わせてやる」
「!!」
トリガーは目を見開くと、両腕でバンドッグの胸を押し返し逃げようとした。現役のパイロットが本気で抵抗すれば、バンドッグとて簡単には組み伏せられない。
だがトリガーは強引な口付けで熱を煽られた状態であり、恋人に誘われたとあればその経緯がどうであれ心底拒む気持ちにもなれず。
結果、バンドッグは彼の半端な抵抗を腕力で押さえつけ、鍛えられたトリガーの肢体をソファーへと押し倒した。
覆い被さる体勢で深緑の瞳を見下ろすバンドッグはなだらかに隆起する喉元へと噛み付き、首筋に顔を埋めて白い肌へとキスマークを刻んでいく。
肌が吸われる小さな痛みとぞくぞくする感覚に濡れた声を漏らすトリガーは、縋る先を求めてバンドッグの頭を抱え、床へと落ちている片足のつま先を毛足の短いラグの上で滑らせる。
そして熱い呼気を吐き出すと、衣服を乱しながら素肌に触れてくるバンドッグを呼んだ。
「な、んで……あっぷるぱいが、っバンドッグに……変わったの……っ?」
「……問題はないだろう?」
上体を起こし、腕を交差させて着ていたシャツを脱ぎ捨てて、バンドッグは事も無げに言う。
「『疲れた時は美味しい物を食べると、心も体も休まる』。そう言ったのはお前だ」
「それは、そう、だけど」
「だから、〝美味しいモノ〟を食べさせてやると言ったんだ」
「……!!」
「問題があるか?」
「問題なんて……っ、」
あるに決まっている。むしろ問題しかない。
だがトリガーは口をはくはくと動かすも拒む台詞はとうとう言えず、ぐずぐずと萎れる言葉を溜め息と一緒に飲み込むと、涙と情欲で濡れた瞳を揺らめかせてバンドッグを見上げた。
「……、」
「ん?」
「……ない……です」
「Good Boy、トリガー」
嬉しそうな声音で応えるバンドッグは、温かく大きな手でトリガーの頭をくしゃりと撫でる。
その手指を気持ち好さそうに受け止めるトリガーは細く息を吐き出すと、覆い被さるバンドッグの逞しい体を大きく広げた両腕で抱きしめた。
「トリガー、ロングキャスターの奴に言っておけ。勝手に餌をもらうと怒られる、と」
「餌って……」
「それから、好物は林檎と〝バンドッグ〟だ、ともな」
「ぜっ、絶対に言わないから!」
「お前の言う絶対、を撤回させるなんて、俺には造作もないことだ」
「うう……ッ!」
【END】
コメント返信・独り言枠
誤字脱字はご容赦を…
普段は、地の文と台詞は書いている時から段落を空けていくのですが、今回は執筆画面がいつもより小さく文字が少し大きかったため、詰めて書きました。
文章の内容だけでなく、見た目も意識しながら書く文字書きなので…。
しかしプロット無しで書くと、こう、ぐだぐだというかゆるゆるですね!何とか着地できて良かった…プロット無し怖い…プロット練らずに文章書ける人ってすごく頭が良いのでは……?
それでは、簡単ですが手直しも終わったので、このライブ枠はこれにて終了。
お疲れさまでした!
Latest / 448:22
29:13
ななし@7122bc
こんばんはー。犬川です、拝見させて頂いています。目の前で文章が生まれていくのはなんとも不思議な気分ですね…
30:11
ななし@7122bc
あ、そうやってチャットに応答できるんですね!何だか新鮮
33:56
ななし@7122bc
冬のクインさんの何に彼はきゅんとするのだろうか。吐く息の思いがけない白さとか、案外そういったものもあるかもしれない…んでしょうか?
37:26
ななし@7122bc
冬の寒空なんか、星もよく見えますよね。凍った空気の中よく見えます。クインさんの目の特徴も星のようだなと思って
38:37
ななし@7122bc
…さっきから結構マシンガンに話してしまっている…うるさかったら申し訳ないです
42:20
ななし@7122bc
冬だからこそ冷たいアイスを乗せた熱々のアップルパイとかに舌鼓を打つのでしょうか、史稀さん宅の長引さん
62:29
ななし@7122bc
史稀さんの長引を読むとお腹が空いてくるんですよね…ご飯の表現が手に取るようにというか、舌の上に乗せるようにわかるものだからつい… 味玉乗っけご飯とかパリッとしたソーセージにお醤油かけたやつを丼にして食べたいなぁ…
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【エスコン】SSまとめ【長引・番引】
初公開日: 2020年10月17日
最終更新日: 2020年10月18日
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エスコン7のSSをプロット無しで書いたもの達まとめ。
*男性トリガー受け
の要素があるため、苦手な方はご注意下さい。