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本日のテーマ「電話」
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電話、電話か。。。
電話 すんのかね
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イデアが真顔で『部活に出れない』とアズールに報告してから、きっちり一週間。
宣言通り、イデアの顔を見ていない。
毎度のことながら、と思うのと同時に、しみじみと『部活の後輩』なのだな、と思わざるを得ない。
他の誰よりも、アズールはイデアに近いと思っている。
勿論、オルトや、アズールが把握していない身内の方が『近い』とは思うが、ナイトレイブンカレッジ内において言えばアズールは『イデアにとって最も身近な生徒である』と言い切っていいだろう。
アズールはナイトレイブンカレッジにありとあらゆるものを望んで来た。
名門校であるから世間一般に比べて優秀な生徒が多い。将来自分の店を発展させるのに『ちょうどいい』人材を見つけることもできる。
名家や資産家の家の子供、将来自分にとって『客』になる、あるいは何かを『優遇してもらうルート』になる、そういう人脈が得られるということは名門校に通う利点として何よりも大きい。
勉強だけなら何処でだって出来る。
この学校で、優秀な成績を収め、ありとあらゆる優秀な生徒と繋がり……それがアズールの望みだ。
その流れで、イデアに出会った。
というか、他に近づく方法が無かったのだ、イデアには。部活に入る、ゲームで話を持ちかける、それ以外のルートが無かった。
王族も豪商もトップモデルも、他にいくらでも方法があったのに、イデアだけが。
警戒されている……というのがマレウスの様な『要人だから警護されていて』などというものではなくて『本人が人見知りで極端なコミュ障の引きこもり』というパターンだとは想定はしていなかったが、それでもボードゲームだけはやるというのだからそこを突かないわけがない。
そして、最初はタブレットでの会話。おどおどしながらだったものの、普通に煽られるようになり……これは割と早かった……慣れてきたのかタブレットなしで会話するようになり、気が付いたらイデアが『唯一普通に口をきいてくる』相手になっていた。
これはアズールの粘り勝ちだと思う。普通なら嫌がられるのだろうが、相手が引きこもりコミュ障オタク、というカテゴリーにいた為に、疑って疑って引いて引いて、という事をしてもアズールがずっとイデアの目の前から去らなかったからだ。
これは正直のところ、アズールは『身に覚えがある』のだ。
イデアには言いたくないけれど、アズールも『同じような』人付き合いをしていた。
ジェイドとフロイドがしつこいぐらいに構って来たのでそこから抜け出したのだ。普通の神経なら寧ろうっとうしいだけで終わっていただろうが、ここまで拒否してでも引かない、という事で二人にある程度の信頼をその段階で寄せたのは否定できない。絶対に言わないけれど。
なので、アズールは延々とイデアの前から去らなかった。
そして、自分とは全く違う彼を見つけた。
イデアはアズールのように拒否したりしているわけでもない。人なんて信じられないとか、人付き合いをしたくないというのはともかく、他人とのかかわり方が解らないのもその通りだろうが、それだけではなく。
アズールのように『四方八方への復讐心』を持っているわけではないのだ。
ぽんっと、あまりにも無垢に褒めてくれることがある。
初めは驚いたけれど『こういう人なのか』と思うと、受け入れられるようになった。
そして……今は明確に、アズールの方がイデアを気にしている。多くのコマのうちの一人ではなくて、ビジネスの為に繋いでおきたい関係ではなくて、彼の特別になりたいと。
けれど。
(部活が無かったら、見事に会わないな……)
会いに行きたい、と思うけれど、理由がない。
理由なんてでっち上げればいいのだろうけれど、それで嫌われたくない。
ゲームの発売日だから、と言っていたのだから、来週までイデアが顔を出すまで待っていればいいのだろうけれど、居なければ何の意味もない。
(何の意味もないだなんて)
確かに『イデア程の』家柄や魔法士としての才能がある人はいないだろうけれど、それでも、人間関係は力だと思っているのに。
アズールも部活を切り上げて、ラウンジに戻る。
今日は良いんですか? とジェイドに聞かれた。気になる事があるのでと返して、執務室で書類に目を通すふりをする。
寂しい。
(いや……)
そんな。まさか。
小さく首を振る。そんなことがあってはいけない。あるはずはない。
◆
店に電話は別に引いてある。
モストロラウンジとしての電話番号をちゃんと取っている。いつどんな取材やビジネスの話が入っても良いように。
それをスマホに転送するように設定はしてある。
なので、アズールの手元にかかってくる電話のほとんどは『モストロラウンジへの電話』だ。
それ以外は決まった人しかかかってこない。
けれど、確かに電話番号は教えたけれど……という人からかかってきた。イデアだ。
「はい? どうしました?」
イデアからは短いメッセージが来ることがあったとしても、電話がかかってくることはめったにない。というか、初めてではないだろうか。
あんなにタブレットで他人と会話しているのに、イデアはアズールには直接話したがるのだ。可愛いと思っているが、意識したらそうしなくなると困るので指摘はしない。
先週、熱望していたゲームの続編が出たらしい。ただしくは外伝のようなものでなんだかんだと早口で喋っていたがよくわからなかった。とにかく、楽しみにしていたゲームだと。
それはオルトも一緒にプレイしてたどうこう、だということだったので部活にはしばらく出れませんよね? とアズールから確認して、そうだねーとイデアも言っていた筈なのだが。
『ちょっと部屋来れない? モストロラウンジ、忙しい?』
「いえ、都合はつけられると思います。ですが、良いんですか?」
『ん? 何が?』
「いえ……でしたら一時間以内にはお伺いします」
きょとんとした声にあまり深くは突き詰めないことにしようと思う。
ありがとう、とイデアは言った。ありがとう。なんてことだ、モストロラウンジ向けの電話でなかったので、録音していなかった。
ジェイドに尋ねて状況を確認し、出られそうだったのですぐに向かった。……イデアのことだから駄菓子とともに根を詰めてそうだったので、急いでサンドイッチなどを作らせて、それを持って。
「お。お早いおこしですな」
「早すぎましたか?」
「ううん。急に呼んだのに、来てくれてありがとう」
ふにゃ。と笑われる。あ、これは、どうもリミッター的なものが外れているのだな。と思った。根を詰めてゲームをしてまた徹夜でもしているからか、ゲームが楽しすぎたのか。
もちろんまた録音し忘れたが、本日二度目かつ本人が目の前なので、なんとなく身体に刻まれた感がある。
ドアが開け放たれていて廊下に繋がっている、そこで、イデアはすっと顔を下して、さらりとアズールにキスをした。
「いえ、珍しいですね」
勿論騒ぎ立てたりはしない。部屋にオルトがいるのだろう。なので部屋ではできないけれど、という事だろうけれど、廊下で寮生に見られる方がよほどまずい気もする。そもそも防犯用の隠しカメラは無いのだろうか。イデアが把握していないとは思えないけれど、このテンションのイデアだと忘れていても不思議ではない。まぁ、後ろ頭ぐらい映っても誤魔化せるか。と、アズールはぐるぐる考えつつ、表面上は冷静に努めた。
「珍しい?」
「電話なんかで呼ばれたので、何かあったのかと思いました」
「ん、いや、急だったから、来てもらえるかどうかわからなかったし、そしたら声ぐらい聞いておきたかったし」
「……そうですか」
どうしたんですか? と、喉をついて言葉が出かけた。
けれど飲み込む。指摘したら正気に返ってしまうかもしれない。せっかくこんな、こんな……状態なのだから。
部屋に入ると、やはりオルトがモニターの前に座っていた。『弟』はアズールを嬉しそうに歓迎する。
「アズール氏、こちらへ」
「はい」
二人とも床で、アズールはベッドに腰かけさせられた。
イデアは高速で『このゲームをいかに待っていて素晴らしいか』を話した後、振り返って笑う。
「そういうわけで、拙者とオルトのプレイを見ているといい!」
「はい」
なんてことはない。
ただ、楽しいから、嬉しいから、そういう時に傍に居てほしいだけなのだ。
けれど、一年前のイデアは同じ状況で『だから誰にも傍に居てほしくなかった』のだろうに。
(そんなに心を許されると、聞いてはいけないことまで聞いてしまいそうなんですけれど)
眺めているだけで、別に何も楽しくない筈だ。
けれどアズールも、ここに呼ばれたという事について少し心が躍っている。
電話どころか、一つの連絡もなかったのに。
……この人。
(あなた、僕のこと好きでしょう?)
燃える髪を見ながら、心の中で呟く。
可愛い人だ、と思った。
◆終わり。
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