だいぶん前にお題箱に届いたお題で書ける限り書いていきます。
頭働かなくなったら手が止まるので応援して下さい。
予定よりだいぶん早く書きおわっちゃいました……
ハート送って下さった方々、ありがとうございます!
時間余ったので残り時間は推敲することにします。
配信見て下さってる方々、お手数でなければ誤字誤用のご指摘お願い致します。
予定時間になったので終了します!
見に来て下さってありがとうございました!
【短編】メタフリ
ダーリンとデートの約束をした日。予定通り仕事を終わらせて待ち合わせ場所にしていた商業施設の前に行くと、彼女は相変わらず開いているのか閉じているのか分からない目で、じっと出入り口横の壁を見つめながら立っていた。
ケータイをいじるわけでもなく、キョロキョロするわけでもなく、視線を固定している先は────お店の壁に張り出されている広告。
一体何をそんなに熱心に見ているんだろう。そう思って彼女の横に立って、ボクも微かに上を見るように首を傾けた。
『全ての女性の夢が叶う日』
そんな大文字のキャッチコピーで宣伝されているのは────どうやら結婚式場のプランのようだ。
純白のウエディングドレスを着てブーケの花束を持った女性が、とても幸せそうな笑みでドレスの端を翻しながら踊っている。そんな幸福の絶頂ともいえる写真と宣伝文句の横に『最安値〇〇万円~』とせっかくの夢を叩き壊してしまうような現実的な数字まで刻まれていた。
ダーリンが注目しているのはどの部分なのだろうか。夢、というキャッチコピーか、女性が纏うドレスか、それともリアルな金額か。
「……………」
「……………」
「………………」
「……………………」
「……わっ!? メタトン!?」
「気付くの遅くない?」
食い入るように広告を見ていたダーリンが、興味をなくしたのだろうか、やっと視線を外してボクの姿を捕らえた。まさかボクが真横に立っているなんて思いもしなかったみたいで飛び上がって驚いている。
なんだか面白くない。常に自らが纏うオーラを意識して生活しているボクとしては、存在感がないって言われたようなものだもの。
「こんなどこの誰とも分からない花嫁じゃなくて、未来の旦那様であるボクのことだけ見ていればいいのに!」
「そ、それはまだ気が早い……」
「ということは、ボクと結婚する気はあるってことだね?」
言葉の端を捕らえてすかさずそう言うと、ダーリンは「しまった」と言わんばかりの表情で慌てて視線を逸らした。微かに顔が赤い。結婚、っていう単語一つで恥じらうダーリン、なんて可愛いんだろう!
「そうと決まれば早速ドレスを仕立てて、式場の下見に行って……」
「だから気が早いってば! ぼくまだ子供だから結婚なんてできないよ!」
半分は冗談のつもりで、しかし顔だけは真面目な表情で(最近は映画やドラマの出演も増えてきたぐらい演技派だからね!)計画を練っていると、ダーリンから引き留めるように腕を掴まれた。この広告が貼ってある商業施設、中にブライダル相談カウンターなんかも設置されていたはずだから余計に焦っちゃったんだろうね。
ただ、冗談は半分だけ。残りの半分はもちろん本気。おそらくあと十年後には本当に二人で式場に立つことになるんじゃないかな。……この広告の結婚式場にお世話になるかは分からないけど。
「ごめんごめん、冗談だって。それじゃあ、予定通りDATE STARTといこうか! ボクのプランでは、今日のデートの始まりはカラオケでダンシングだ!」
「歌うだけじゃなくて踊るんだね……」
何を言っているんだい、当然じゃないか! このボクがソファに座ってマイクを握るだけで満足できると思う? もちろん踊るし、ダーリンの歌のターンにはタンバリンやマラカスでの盛り上げも欠かさないさ!
そんなことを言いながらダーリンの手を引く。ボクよりもずっと低い位置にあるとっても小さな手。手折らないよう優しく握って歩き出す。……しかし。
「……ダーリン?」
するりと、その手がボクの手の平から逃げた。……と思ったのもつかの間、ダーリンが不思議そうな、何か考え込むような表情でボクの指を握ってくる。手ではなく、指だ。
普通のニンゲンと違って四本指のボクの手。ダーリンはそのうちの一本を掴み、納得いかなそうに首を傾げ、また別の指を掴む。
どうしたんだろう。その疑問を口にする前に、ダーリンの方が先に言葉を発する。
「……メタトンって、結婚指輪はどの指に嵌めるの?」
と。
五本指であるニンゲンは、通常、左手の薬指────外側から二番目、内側から四番目の指に婚約指輪や結婚指輪を付けるという。だけどボクの指の数は普通のニンゲンと違うから、ダーリンはどの指がニンゲンでいう薬指にあたるのか分からなくて首を傾げていたようだ。
外側から二番目、内側から三番目か。
それとも内側から四番目、一番外側の指か。
「そういえば、考えたこともなかったな」
自分の指の数がニンゲンと違うことはもちろん知っていたけど、それによって日常生活に支障が出ることなんて皆無だったから、指輪をどうするかなんて頭の片隅にも浮かばなかった。確かにダーリンと結婚するならこの問題は重要だ。
アルフィーに頼んで五本指の手を新しく作ってもらおうか? 多分それが一番簡単でシンプルな方法だろう。手首の先を作るだけならアルフィーにとっては朝飯前だろうから。
……けれど。
「……ダーリンは、どの指だと思う?」
問いかけてみる。まさか聞き返されるとは思っていなかったのか、彼女は少し迷った様子を見せたけれど────やがて決めたように、その温かくて小さな手で「これ?」と、ボクの四本の指のうち一本を包み込んだ。
「じゃあ、その指にしようかな」
「えっ、そんなことで決めちゃうの!?」
「そんなこと、なんてとんでもない! 他でもないダーリンが選んでくれたんだ、ボクにとってはそれが一番重要なことだよ!」
彼女にとっては小さなクイズに答えたつもりだったんだろう。しかし自分の解答を正解にされてしまったのだから、それはそれは驚いた様子。「もっとちゃんと考えれば良かった」────というのは、今日から数えておよそ十年後、式場で指輪交換をする時に初めて彼女から告白されて知ることになるんだけど、この時はまだ知る由もない。
はたして、ダーリンはボクのどの指に指輪を贈ることになるのか。
それは十年先まで、ボクら以外の誰も決して知りえないことだ。