「ランちゃん、ランちゃん!」
息を切らせながら、自分の名前を呼んで駆けてくる幼馴染をランスロットは抱き留める。
「ヴェイン、どうしたんだ?そんなに慌てて」
「あのね、ばあちゃんがチーズケーキ作ったから、おやつにしよう、って」
お家入ろう?
そう請われて、ランスロットは「行こうか」と言い、小さな幼馴染の手を優しく繋いだ。
「ばあちゃん、ランちゃん連れて来たよ」
「ヴェインちゃん、ありがとう。さぁ、二人とも、席について。紅茶も淹れてありますからね」
そう言われ、二人は歓喜の声をあげる。
「おばあちゃん有難うございます」
「いえいえ、ヴェインちゃんも、ランちゃんも美味しく食べてもらえるから、作り甲斐があるわ」
そう言いながら、二人の前に淹れたての紅茶が入ったティーカップをことり、と置いた。
そうして、祖母が席に着いてから、三人で手を合わせれば、午後のまったりとしたティータイムの始まりだ。
―――――――
「ヴェイン?」
ふと、名前を呼ばれ、ヴェインが顔をあげれば、そこには心配そうに顔を覗き込むランスロットが居た。
「ああ。ランちゃん。悪ぃ」
「体調、悪いのか?」
ランスロットの問いかけに、首を横に振る。
「本当になんでもねぇってば。ここのとこ、根詰め過ぎてたからさ、少し疲れたみたいだ」
あえて、心配を掛けないように言っても、ランスロットはそれに騙されてはくれない。
徐に、ヴェインの額に手を宛がう。
「少し熱っぽいな…」
「こんくらい、平気だって。少し休めば治るからさ」
ヴェインの言葉に、ランスロットは内心だけでため息を吐きつつも、事実人手が足りないのは本当の事で。
正直、ヴェインに抜けられると、困る。
「……1時間」
「ん?」
「今から1時間なら、俺が都合付けてやるから、そこで寝てろ。今ヴェインに抜けられると困るのも事実だからな」
「ランちゃん、そんな事してもらわなくて、平気だって!」
ランスロットの言葉にヴェインは平気、と言うけれど、そこはランスロットも譲れない。
「今は平気でも後で体調が悪化するかもしれないだろ?休める内に休んでくれ」
そう強く言われては、ヴェインも頷く事しかできなくて。
わかった。と言い、奥の簡易ベッドに横になる。
それから、直ぐにすぅすぅ、と寝息が聞こえてきて、無理やりにでも寝かせてよかっった、とランスロットは内心だけでそう呟く。
本人が気づいていないだけで、相当体調を崩していたなんて、笑い話にもならない。
「ったく、もっと頼ってくれよ」
体調を崩してしまった、と言われて呆れたりする筈がないのだから。
「……お休み、ヴェイン」
額に掛かる前髪を払ってから、そこにちゅ、とキスを落として、ランスロットは執務室から出て行く。
たった1時間。されど1時間。
ヴェインが目を覚ます前にやるべきことは沢山ある。
起きても、なるべく負担の掛からない仕事を振り分けて、明日は午前休か午後休にシフトの変更も視野にいれないとな。
そんな事を頭の中で考え、整理しながら、まずは、今のヴェインの仕事を引き継ぐ為に走り出した。
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