ガタン、と古びた扉が開くのに気が付いたパーシヴァルは来訪者に気付かれないようにため息を吐く。
それから、ゆっくりと振り返れば、そこに立っていたのは、いつも同じ時間に尋ねてくる、金の髪の毛を持つ少年で。
「お前も飽きもせずによく来るな」
「だって、パーさん、お腹空いてるんでしょ?」
少年の口から出た言葉に何も返せない。
事実、この少年と初めて出会ったきっかけが、まさに自分が空腹で倒れていた時だからだ。
「今はなんとも無い。早く帰れ。そして、二度とくるな」
そう、冷たくあしらわなければ、きっとこの少年はいつまでも自分の元に来るだろ。
そう思ったのは、自分の本能なのか。
「でも、俺、ぱーさんともっと色んなお話したい」
パーシヴァルの言葉を理解しても、少年は首を縦には振らず、横に振るばかりか、こんな自分ともっと関わりたい、と言う。
そんな事、本来あってはならないことなのに、目の前の少年は分かってくれず、パーシヴァルは困ったように笑う。
「ヴェイン。お前が俺を心配してくれるのは感謝しよう。だが、これ以上俺に関わるな」
言っても、ヴェインは首を横に振るばかりか、パーシヴァルの服の裾をきゅう、と掴んできた。
「俺、ぱーさんと一緒にいたい…ぱーさんは俺が嫌い?」
今にも泣き出してしまいそうな声で、言われてしまえば、案外面倒見の良い性格だと多少の実感はあるパーシヴァルは、
言葉に詰まる。
「仕方ない、な」
そう言葉を吐きだしてから、ヴェインの身体を抱き上げる。
「わっ、」
「今夜だけだ。明日には帰れ」
腕の中に抱き上げれば、ヴェインはうん、と頷いた。
――――
「パーさん、そろそろ、起きるか?」
「んぁ…、ヴェイン」
暗い部屋の中、ヴェインはベッドサイドの電気だけをかちりと付ける。
そのおかげで、部屋全体が淡いオレンジ色に染まり、ベッドに寝ていたパーシヴァルもゆっくりと覚醒して、身体を起こす。
「大丈夫か?」
「ああ、これくらいは問題ない。夜にしか活動出来ないからな」
支度してくる、と言ってパーシヴァルがベッドから降りようとした所をヴェインが遮る。
「パーさんが、俺を傍に置くのは何で?
パーさんの傍に居たい、って言って泣いた俺が憐れだったから?」
「…らしくないな。何が言いたい?」
「パーさんが、他の人の血を吸いに行くのを見送るのがもうやだ…俺の血を吸ってくれればいいのに」
ヴェインの言葉に、パーシヴァルは内心だけでおおきくため息をつくと、ヴェインの身体を抱きしめる。
「っ、パーさん!?」
「駄犬が…俺が、どれほどお前に飢えているか分かって無いのか…。他の奴らは全てお前の代わりだ。
俺が一番欲しいのは、お前だけだ」
パーシヴァルが言葉と共に、ヴェインの額にちゅ、とキスを落とせば、ヴェインは一瞬驚いた顔をしたけれど、次の瞬間には、とても嬉しそうに、ふんわりと笑う。
「パーさん、大好き…一緒に暮らして良い、って言ってくれてから、一緒にいるのに、夜になると一人でどっか行っちゃうの、本当はすげーさみしかった…。その内、『食事』をしにいってるんだって気づいたけど、するなら、俺にしてほしい…。
俺だけの血を飲んでほしいって、思い始めたんだ…俺は、多分、意識してない頃から、パーさんの事が好きになってたんだ」
きゅ、と服の裾を握るヴェインを見て、パーシヴァルはくすり、と笑う。
「さっきも言っただろう。俺が他の人間の血を吸っていたのはあくまで、お前の代わりだ。
ヴェインと出会ってから、いつかお前のその肌に食らいつきたい、とそれだけを考えていた。
…俺に血を吸われる、という意味を本当に理解して、言っているのならお前は人間ではなくなり、俺と共に永い年月を生きていくことになるんだぞ。…その覚悟があるのか」
例え、ヴェインが死を望んでも、それすら叶えてやれなくなる。
「ちゃんと、全部分かってるって。
…俺をパーシヴァルのモノにして?」
そうして、誘うように、見せつけるように首筋をパーシヴァルに差し出すから堪らない。
パーシヴァルはゆっくりとヴェインの首筋に、いつの間にか出ていた普段は隠れている牙を宛がう。
そっと力を込めただけで、ヴェインの肌に牙がささり、途端に、ぶわりと充満する、血の匂いにくらくらする。
「」