ドフラミンゴの一言がきっかけだった。
「海軍的に組織内結婚はどうなんだ。」
一戦を越えて久し振りの休日のことだ。
相変わらず海図やら書類が多いハインの自室にやって来たドフラミンゴは、いつも通り茶菓子を手に暇を潰していた。ハインは気にすることなく何かを書いていたのだが、書類でも足りなかったのか立ち上がって棚を漁りながら雑談に付き合っていた。のだが、ドフラミンゴは興味半分で書きかけの何かを覗き、暫く考えてハインにそう問いかけた。
彼の視線の先には書きかけの手紙が広げられていた。手に取ったファイルには花束の予約と贈り物のリスト、結婚式には出られそうにないと言う謝罪の手紙が挟まれている。
察するに、ハインの部下が今度結婚するのだろう。
「不安定な現状、明るい知らせは喜ばしいことです。その方はお見合いによるご結婚ですが、大変に幸せだと仰っていましたよ。」
「そこじゃなくて。」
「賄賂や贔屓は禁止していますが、恋愛やお見合い、結婚等はフリーです。目上と結婚しようとも本人の地位は変わりません。優遇もされません。」
それを部下にはよくよく言い聞かせたし、相手方にも話をした。幸い両者とも軍人なので、その点の理解は早かった。家庭と軍隊が別物だと分かっていたのでありがたい限りである。
「ハニートラップはありますから、ことある度に注意がされています。まぁやらかすような馬鹿は滅多にいませんけどね。」
探し物を見つけたハインは、また机に向かって続きの文を描き始める。
「嬢ちゃんにはその手の話来ないのか。地位的にも年齢的にも良い物件だろ。」
「来ないとは言いませんが、受けることはありません。たしぎちゃん他女性の海兵方が楽しそうなのでネタにはしています。」
あの辺にしまってありますよ、とハインは棚の一角を示した。ドフラミンゴはそれらしきファイルを手に取ると、中身を見てへぇ…と呟く。
「まぁまぁじゃねェか?家柄も戦績も顔も悪くねェ。」
「収まるところに収まれと。」
「いんや、そうは言わねェが。」
ハインは誰かに言われたことがあるのだろうセリフを返し、苦笑いを浮かべる。
「お相手の心情は知りませんが、私にとってはメリットがないのですよ。現在に不満はありませんし、ジャンヌやスモーカーさんがいますから。パートナーを持つ理由がないのです。」
「憧れるもんだと思うがな。」
「でしょうね。」
シスターも元帥もこの点においては積極的だった。見合い話を持ってくるのは大抵両者なので、むしろ収まってほしいとすら思っているのかもしれない。だがハインとしては現在の生活に不満などないし、帰る場所はここにある。家庭を得たとしても大半は海に出ている上に、能力的な面で死人役を務めることが多い。現在地だけならず生存すら不明となることもざらにある。
最も、それはメリットデメリットの話。
「関心がありません。」
「だろうな。フフッ。」
軍内では異端とも呼ばれる身の上、そのような好意はありがたいとも思う。だがそれで終わりだ。家柄に憧れなどないし、軍人を越えて本人を見たいと思うほど惹かれもしない。相手のカードを見ても、欲しいと思える物はない。
事足りているのである。
「孤児院出身ですからね。相手の家柄には少々不足があるでしょう。」
「地位は十分だ。むしろ軍人として認知されてるだろうから、家柄は見られてねぇなこれは。」
「…やけに勧めますね?」
何か理由でも?とハインはペンを置いてドフラミンゴを見る。ドフラミンゴは腕を組んで沈黙すると、言葉を選ぶように一つ、一つと話し始める。
「夫婦っつうのは案外使い勝手がいい。連帯責任って言えば分かるだろ?軍内部の契約や受け取りの代理に使える。それに夫ってのは相当な肉盾だ。見合いを申し込んでくるような奴なら特にな。」
「話したこともないのに見合いを申し込む心理状況。期待値に応えられたなら、確かにそうですね。」
とて、それはハインがただの海兵であればの話だ。彼女は連帯責任を越えて責任を負う立場だろうし、契約や物資受け取りは基本的に機密事項に指定されるので本人以外は手が出せない。肉盾は既に持っているし、信仰心すら手中にある。
「…たしかに。事足りてるな。」
「はい。なのでお断りをしています。」
あえて望むのならば…と、ハインは不服そうなドフラミンゴを見て、仕方なしに見合いの条件を考える。関心などないし、書類に見合いの紙が挟み込まれていた時は少しばかりイラッともするが、それでも別に見合い話やお付き合いを嫌っているわけではない。機会があれば、気になる人がいたならば会ってみようと思っている。
「即時投入できる軍隊を海軍に寄付し続けてくれる方なら、お会いしたいですね。」
それ以外は今のところ不要です。と、ハインは断言してペンを動かし始めた。ドフラミンゴは期待通りの答えに満足して笑い、見合いのファイルをゴミ箱に捨てる。
そのままあっさりと話題を変え、いつものように軍人と七武海としての雑談が続いた。両者とも忘れたかのように一切を触れず、あの海域が、あの海賊が、そう言えば上が…とコーヒーを片手に海図を広げるのだ。
その数日後には新たな見合い話が舞い込むのだが、それ止まり。たしぎ他女海兵の女子会に利用されたらお役目終了だった。
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見合いの話
初公開日: 2020年08月22日
最終更新日: 2020年08月22日
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例えば彼女にお見合いの話が来ていたとしたら。
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口。
シュリアン、オーラル。
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