美月編5話「美月と色彩」
「……よしっ」
つい夢中になって汗をかきながら作品作りをすることが多く、Tシャツ一枚とか、夏にはタンクトップ一枚に着替えるのが、すっかりルーティンとなった。
普段は見ない、角張った肩まわりは確かに男性のシルエットで、見慣れているはずの京子からも驚かれることがしばしばある。
絵に関しては、『デジタルもいいけど、感覚は忘れたくないし』と彼は言う。やり直しがききにくいからこそ、イメージを膨らませることができる、とも。
「店の夏メニューだから、海の色とか乗せてみようかな……」
空の色にも負けない、海の青。父の盾から、夏メニューのかき氷のシロップについて尋ねられ、あの青色も夏らしいよね、とブルーハワイを選んだ。
出すシロップのバリエーションは、一家のそれぞれのオススメを出すことにしたようで、全員が他の家族の答えを聞かなくても、自然と被らなかったと、父は語っていた。
「今年のシロップは、家族の色、か」
ふふ、と笑みがこぼれた。バラバラのようで、お互いを邪魔しない。もちろん、小さい頃にはあーだこーだと喧嘩もしたが、今ではうまく混ざり合っている。
決して真似できない色は、見ていて飽きない。一緒に居るからこそ際立つ色もある。だからこそ、写真にも残したいし、絵にも残したい。笑われるから、と学校ではやりにくい陽介を描いた絵も、家で改めて描いてプレゼントしている。
母の初恵からは『盾のように、よく人を見てくれる』と褒められたこともある。『自然とそうなった』と返すが、実は美月がホールの手伝いに入ると、普段とは違う客層からの評判が聞けるらしい。
「だって、この家族を見たら、自然と居場所に出来るひとも居るよ」
鼻歌交じりに筆が乗り始めると、アイスコーヒーの氷がからん、と音を立てた。