四角四面の几帳面な部屋。白く塗り固められた部屋には無機質だが最低限生活に必要な物は揃っていた。何不自由なくこの部屋で寝起き身支度を繰り返す。ただそれだけの変わり映えのしない穏やかな日常。生まれてからずっと繰り返してきた同じ日々。
 その日も昨日と一昨日とも変わらず制服に着替えてお仕事に出かけるはずだった。宛がわれた部屋から出て街中のなんの変哲も無い道路に出る。
「ばーん!」
 知らない子供だった。安っぽい透明な水鉄砲。この子の親は良識があり躾も行き届いているので。──ああ知らない子供じゃなかった。
 水鉄砲の中身は入っていなかった。だが服が汚れた。赤い。自分のものではない沢山の血で汚れて。動かない同じ顔の仲間が沢山いて。
 知らない光景。映画の観過ぎでおかしくなったのかななんて思いもした。でも映画なんて観たことがない。それにそんな刺激的な映画を観ることが推奨されるわけがなかった。
 その場で亀みたいにしてうずくまっていたら影が射した。ひとりだけじゃなく何人も。完全武装した黒い集団。見覚えがあった。
「やはりリサイクルには限度がありそうですね」
 白衣の男に見覚えは無くて見覚えがあった。
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即興小説15分
お題:記憶のわずらい
医療向け高機能アンドロイド君が軍事転用されたあとにリセットされて帰ってきたけど、他の一般的な個体と比べて記憶モジュールが複雑すぎて記憶の完全消去ができなかったとかそういう
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