「お待ちくだされ! お待ちくだされ姫様~!」
 王都の中心のそのまた中心。誰しもが憧れを抱く荘厳な宮殿内に枯れた老人の悲壮な声が響く。
 平素は賑やかと言っても、手入れの行き届いた庭園で談笑に耽る笑い声だとか、メイド達が交わすちょっとした話し声がする程度の屋敷内。だが今日はひと味違った。燕尾服に身を包んだ白髪の老人が、その見た目に似合わず風を巻き起こしながら廊下を駆け、その後ろにも護衛の者達のバタついた足音が続く。
「待てと言われて待つバカがどこにいるかよ……でしてよ!」
 メイド達のスカートも翻るような風が起きる程に爆走するのは、姫。姫と呼ばれるその少女は老人の身丈の半分程度しかないが素早かった。
 直線の長く続く水晶の回廊では護衛を突き放し、四方八方から迫る大人達の手をかいくぐり、コーナーターンでは誰しもを置き去りにする。庭園の刈り込まれた木々の間を飛び移る身のこなしは訓練された暗殺者顔負けの鮮やかさだった。
 姫がここまで必死に逃走するには浅い理由があった。王族と呼ばれる者達には避けて通れぬ試練をどうあっても逃れるつもりだった。
「姫様~! 本日から手をつけねば夏休みの宿題は終わりませぬぞ~!」
 夏休みの宿題。姫を縛り付ける悪魔の所業。だが逃れてみせると笑った矢先、木から飛び降りたと同時に柔らかなものにぶつかった。
「おおお、おお、お母様」
 その鋭い眼光に姫は石となる他なかった。
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お題:とびだせ姫君
制限時間:15分
夏休みの宿題を全力でやりたくないお嬢様。
姫じゃなくてお嬢様な感じになってる
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向き
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【即興】容疑者は疾風の風になるなどと供述しており 2020-08-16
初公開日: 2020年08月16日
最終更新日: 2020年08月16日
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即興小説15分
お題:とびだせ姫君