突如ふわりと意識が浮上した。
心地良かった微睡みを少し名残惜しみながら瞼を開くと、窓の外から射し込む月明かりを艶やかに反射させる黒髪の頭頂部が目に入った。
異国情緒を感じさせる香の香りに、ここはジャミルの部屋だと思い出す。
眠る時は彼の腰に軽く手を回していただけだったはずなんだが、気付けばしっかりと抱き寄せてしまっていたらしい。
ハーツラビュル寮とは違う空調は俺にはほんの少し暑く、彼の香に混じり自分の汗の匂いも感じた。
(…あぁ、これは)
彼の器量の整った顔を隠すように撓垂れ掛かる前髪を指先でそっと避け、彼の生え際に軽く指を入れて梳かしてやる。
俺が抱き締めて眠ってしまったせいなのか、この室温に慣れているはずの彼もまたじっとりと汗をかいていた。
軽く自分の肩口に顔を近付けると、自分の汗とはまた別の、何処か甘い香りが鼻腔を擽った。部屋で焚いているものとはまた別の、ジャミルが好んで身にまとっている香の香りだった。
すっかり俺の身体にもうつってしまっているらしいそれは、何度か嗅いでいる内に鼻が慣れてしまいあまり感じなくなってしまったが。
…それはつまり、だ。
逆に彼の身体にも、俺の匂いがうつっているということに他ならない訳で。
ごそり、と足元に何かが絡みつく。恐らく、ジャミルの脚だろう。彼が普段1人で眠っている時は、ベッドに置かれてある長細いクッションを抱き枕のようにしていると聞いている。要するに、その癖で俺を抱き枕だと思って脚を絡めてきたのだ。
思わず首を擡げてしまいそうなその欲にセーブを掛けつつ、そっと彼を抱え直してゆっくりと腕の力を強くする。
「……トレ…」
「ん?」
「…………せんぱ、」
「…ジャミル?」
「…………」
「…寝言、か?」
名前を呼びかけてみたもののそれ以上反応はなく、規則正しく呼吸を始めたのを見て思わず口元が三日月型に歪む。あぁ、彼は、夢の中ですら俺と一緒にいるのか。
どんな夢を見ているのだろう、2人で何気ない日常を過ごしているものなのか、それとも夢特有のスリリングな展開に2人で巻き込まれているのか。
すり、と無意識だろう、彼が俺の胸板に擦り寄るような仕草。可愛らしいそれにぐっとくる感情をどうにか抑え込みながら、応えてやるかのようにぎゅうと抱きしめてみる。普段からこうして甘えてくれれば良いんだが、と思いつつもそれが現実に起こるときっと俺は彼の額に額を当ててしまうだろう。こういう所が不器用で甘え下手、下手というか、甘え方を知らない。それがこのジャミルという男なのだから。
(まぁ、そこが可愛いところでもあるんだが)
じわ、とこめかみに汗がにじむのを感じる。普段なら不快に思うそれに何処と無く幸福を感じてしまうのは仕方ない事だろう。ジャミルと俺の体温が合わさって生まれた暑さなのだから。
もう少しうまく密着出来ないかと悩みつつ、彼に絡められている脚を自分の脚でそっとなぞる。
「………、ん…?」
「……ジャミル」
「………?…トレ、先輩…?」
小さく声を漏らした彼がこちらを向くように少しだけ顔を見上げさせ、眉根が寄ったかと思えば目はほとんど開かないままに俺の名前を呼んだ。
まだ微睡みの中で漂っているのだろう、俺につられてなのかするりと彼の腕が俺の身体に巻き付いてきた。脚を絡め取られ、腕で身体に巻き付かれ。まるで蛇に捕らわれた獲物の気分だなと心の中で揶揄しつつ、寝惚けてるような表情でゆっくりと小さく瞬きを繰り返し、少しずつ現実世界に意識を呼び戻している姿をまじまじと眺める。
こんなにも気の抜けたジャミルの寝起きの顔を知っているのは、限られた人間だろう。
そしてその内の1人として、俺がいる。
「…幸せ者だな、俺は」
「……はい?」
「いや、何でもないよ、おはよう」
「……おはようございます」
「ぐっすり寝てたな」
「お陰様で…で、何やってんだアンタ」
「ん?いやぁ、お前の匂いを堪能してた」
嘘は言っていないはずだ。
まぁそれだけじゃなく、俺の匂いを擦り付けていたのもあるんだが。
口調はハッキリしているものの意識はまだ完全に浮上しきっていないのか、続く沈黙。
…あぁ、いや、それとも。
「…………………そうですか」
「ジャミル、耳赤いぞ」
「っ、し」
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向き
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トレジャミ♣️🐍
初公開日: 2020年08月13日
最終更新日: 2020年08月14日
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コメント
ぽちぽちだらだらと。
七夕リチャアヤ
眠気が勝つか、今日が終わるのが先か
瀬をはやみ
ブルロ351話について思うことを書き出す
ブルーロック第351話(最新回)について自分の考えを書き出して行くライブです ※ がっつりネタバレで…
シロタビ