こないだのチェコ映画特集といい今回といい、第七藝術劇場では大手のスクリーンではなかなか見られないタイプのアート系、カルト系の映画が多いのでいろいろと新しい世界が広がってきました。
というわけで、今日見てきたのはこの作品!
名前は全然知りませんでしたが、このポスターと予告の「月面でキリスト像を見上げる宇宙服を着た人物」という異様なビジュアルに心惹かれて視聴決定。
本作の監督はかのホラー映画の古典中の古典のひとつ「エクソシスト」の原作者ウィリアム・ピーター・ブラッティ。そういや「エクソシスト」も有名なシーンは知ってるもののちゃんと見たことがないような……。
舞台は霧深い山奥の古城を改築して作られた精神病院。そこへはベトナム戦争で精神を病んだ元兵士たちが収容されていました。その中のひとりカットショーは、元宇宙飛行士でロケット発射の直前に逃亡したという経歴を持った患者でした。
そんな精神病院へ新しく着任したのが海軍所属の精神科医ハドソン・ケーン。ケーンは支離滅裂な言動を繰り返す患者たちにも親身に接しますが、カットショーだけはなぜか執拗にケーンに反抗的な態度を取り続けます。やがてケーンは悪夢のような幻覚に悩まされるようになり――。
まず言っておきたいのが今回久しぶりに席ガチャでハズレを引きました。
前の席の客が背が高めの上にやたらモゾモゾ動いてて邪魔だったのでもう少し頭を低くするようにお願いしたところ、しばらくしたらまたモゾモゾし始めたのでキツめに言ったところ、なにを勘違いしたのか背筋を伸ばしすぎてスクリーン下中央がまったく見えない状況に。
意図的に無視してるのかケンカ売ってるのかと思いましたが、注意したときには申し訳無さそうにしてたのでたぶん寝てたのを注意されたのと勘違いしてたんだと思います。
久しぶりにこういういらんトラブルがあった上に、上映作品が難解かつ上映時間が長いものだったので全体的に、特に後半に集中できずに終始イライラするハメになりました。こういう作品のときに集中できないとほんとにイラつくんだよな……。
それでまあ感想なんですが、本作が制作されたのは1980年。作中でも描かれていたようにベトナム戦争が兵士にもたらした影響は計り知れないものがあったと思います。そうした時代背景を考えると、本作は一種のセラピーもしくは心理実験……あるいはメタフィクションのような作品に思えました。
まず作中の状況設定からして、山奥の精神病院という閉鎖的環境で、患者たちはスーパーマンや精神科医や軍曹といった「役割」を演じています。中には多重人格者を自称する患者も。その中で、本物の精神科医であるケーンと前任の精神科医、そして件のカットショーだけが「本人」でいる。
これ、「映画」というフィクション構造をそのまま当てはめたメタフィクション演出のような気がします。本作にはいわゆる「映画の映画」としての側面がありそう。
そもそも本作の最重要キャラの名前が「カットショー」というのがあまりにも作為的。
また本作は、信仰を大きなテーマとしているのは明白です。作中ではケーンが信仰=善としての理論を説くシーンがありますが、フィクションにおいて信仰は揺らぐもの。
そしてケーンの信仰が揺らぐのはどこかというと、実は過去にベトナム戦争で虐殺を行った時点なんですよね。ケーンの信仰はすでに盤石なものではなかった。
さらには後半でケーンは実は精神科医ではなく精神病患者であったことが明かされます。なので本作の舞台である精神病院はまるごとある種の実験場であり、本作自体もまた、「これでもまだ神を、善を信仰できるのか?」と見るものの信仰を試すかのような作品だったと思います。