シャーロックは、石畳をコツコツ歩いて、ダラム大学に向かっていた。学生がたくさんいて、明らかに青春と言った状態だ。ウィリアムが出てくる時間を把握して、シャーロックはダラム大学の門に立っていた。
 しばらくすると、目的のウィリアムが出てきた。
シャーロックは6枚くらいの花弁がついたヒメオウギを取ってきて小さなブーケをつくって後ろ手で隠していた。ヒメオウギの花言葉は歓喜、青春の喜び、楽しい思い出、強い心、誠実だ。知ってるか知らないかわからないが、謎としてはまあまあ面白い方なのではないかとサプライズする予定でいた。
「あれ? ホームズさん?」
声をいきなりかけられてシャーロックは驚いた。存在に気がつかなかった。
「よ、よう! リアム! 待ってた甲斐があったぜ」
「その紅い花、僕にくれるんですか?」
「ああ、まあな。ほい」
シャーロックはしどろもどろになりながらヒメオウギを差し出した。
「可憐な花ですね。僕に会えて嬉しいと?」
「ああ……まあ、そんなところ……」
シャーロックの動揺を見て微笑むウィリアムはヒメオウギを大切に両手で持って、荷物を持ち直した。
「せっかくですからここらへんのお茶できるところに行きませんか?」
「勿論だ」
シャーロックはそう言うと、頭をガシガシかいた。
 カフェに着くとシャーロックはコーヒー砂糖少しミルクありで、ウィリアムはダージリンを頼んだ。
対面するとウィリアムの香りがふんわり漂っていて、匂いでくらくらしそうだった。今日も金糸の髪と緋の眼が綺麗だと誘惑されている気がした。
「飲まないんですか? ホームズさん」
「あっ、いや、飲む」
いつのまにか届いていたコーヒーを手を伸ばして自分のところへ引き寄せる。ウィリアムはダージリンをおいしそうに飲んでいた。ああ、あの白い首に鬱血痕を残してやりたい、喉元を噛んでやりたい、とシャーロックは思った。深く深く迷い込んだ眠り姫の薔薇だと思った。すぐ突き刺さる。それに戻ってこれないし、騙されたまま、眠りにつく姫をキスで起こさずそのままにしておきたかった。
シャーロックはコーヒーを一口飲んで、ウィリアムの緋色の目を見た。ああ、これが恋なのか、と諦念した。いい年齢なのにしかも男に恋、だなんて笑ってくれればいいのに、とシャーロックは思った。でも、こいつがいないと謎もおそらく生まれない。あんな完璧な完全犯罪を犯すことができるのはウィリアムくらいだと思った。ーーーー今はまだ証拠が掴めていないためだめだったが、シャーロックにはウィリアムが犯罪卿だとしか思えなくて、どんどん、深みにはまっていっている気がする。それじゃだめだ。後手後手ではいけない。いつまでも犯罪卿に操りくられるパトリオットではいけない。掌で転がされていてはいけない。
「本当に今日はどうしたんですか? 怪しいですよホームズさん」
「……おまえに身惚れてたんだよ」
「……ああ、そうでしたか」
変な間が開き、二人は押し黙ってしまった。今日はシャーロックが話すネタもなくて、ただ単に会いたかっただけで、何にも用意していなかった。それでも許してくれるのだろうか。
「俺は、おまえに会いにきたんだ」
「わざわざロンドンから?」
「ああ、俺の負けだ」
「何がです?」
「……惚れた方が負けって言うだろ?」
「あなたは僕に惚れているんですか?」
ウィリアムはティースプーンをくるくる回し、シャーロックの目を見つめる。少し目が泳いでいる。
「残念ながらそうらしい」
「別にあなたに好かれるのは予想の範囲内だすけどね」
「あ?」
シャーロックは眉を潜めて、腕を組んだ。
「もう、わかってたってことか?」
「ええ、はい」
にこり、と笑うウィリアムは扇情的だった。だめだ。今日はくらくらする。まるで春に咲くチェリーブロッサムのはらはらするのを見ているかのようだった。
「じゃあ、付き合ってくれるのか?」
「ええ」
シャーロックはウィリアムの淡白な言葉に拍子抜けしてしまってぼけーっとし始めた。あれ?これ、俺、夢でも見てるのか?とシャーロックは自分の頬をつねった。いや、痛かったから現実だ。
「じゃあ今日からよろしくお願いします……」
「はい、よろしくお願い致します」
ウィリアムはテーブルに置いていたシャーロックの手を取って手の甲にキスを落とした。
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春雷
初公開日: 2020年08月09日
最終更新日: 2020年08月09日
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コメント
米津玄師さんすきなんですが、春雷状態のSWが観たくて書いていこうと思います。なお、これはテストです!