その日はよく晴れていた。男がひとり、丘の上。
 故郷の村全体を見下ろせる緑の丘は男のお気に入りの場所だった。森から切り倒してきた木材をそのまま使った家ばかり並ぶ質素な村だ。いくらかの家畜を丘に離し、自分たちが食べるのに少しだけ余る程度の作物が採れる小さな畑を耕すそんな日常。変わり映えのしない平坦な日々。
 それでも、王都の暮らしに疲れた男にとってはそれこそが何よりの宝だった。今となってはだが。左遷された当初は恨みしか無かったが。
 男は抜き身の剣を杖代わりに立ち上がった。拭われていない血糊は刃を鈍らせるが、もはやそれで構わなかった。特別な武器でもなんでもない。敵からぶんどっただけの代物だ。また切れ味が鈍れば同じように奪えば良い。
 眼下の村にはもう誰もいない。男には戦う理由が無いように思える。背後から迫るいくつもの足音に振り返り、男は笑った。陽光は剣を照らした。
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迫る敵は敵国からの侵略とかじゃなく、貴族同士の小競り合いで領土の境目にある小さな、政治的にはわりとどうでもいいような村が灼かれるようなそんな感じ?
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