手を握ると温かな感触が伝わる。至極当然のことの様に思えるが、自分にとっては意外なくらいに嬉しい……いや、奇跡に似た感触だ。
ペルセウスの甲板の上で、二人は緩やかな時間を楽しんだ。もう航海も何日目か、正確な日取りは覚えているのに、なんだか二人の時間としてはカウントが曖昧だ。
「あんだよ。人の手ぇにぎにぎして何が楽しいんだ?」
千空と二人で過ごしていると、否が応でも彼の顔に目が行く。そして同時に、彼の手にも目が行くのだ。
荒れ果てた手。ずっとずっと、科学を発展させ続けたが故の手の惨状だ。ゴム製の手袋をするべき時も素手で触る以外に実験器具に触れる手段は無い、その都度彼の手はヒビ荒れて行ったのだろう。
「ガサガサだね」
何気なくそう言うと、彼はやれやれと首を振る。
「ロープを捻って作る時。復活液の硝酸。他にも手荒れになる理由なんざ列挙してたら夜が明けらぁ」
自分が氷漬けになっている時も、ずっと何かを作ってきた。ハンドクリームなんかじゃもうとっくに修復不可能なくらいになって、思わず握った手に力が入る。
「……痛えよ」
「うん……」
俺の手は、どうだろう。彼みたいに荒れてはいない。石化した沢山の大人を砕いて回った手だけれど、それらは全て修復されたと聞く。俺の罪は無かったことになった。
俺みたいな罪人の手が綺麗なのに、君の方がこんな手になるだなんて皮肉にも程がある。
司は千空の手の甲に口付けを落とした。
「なんだ?急に」
「うん……ううん……ずっと大切にするよ」
「……なんだ、それ」
ぷいっとそっぽ向く千空だが、その耳はほのかに赤くなっている。月明かりでしか君を見れないから、俺が都合良く見ているだけかも知れないけれど。