おはようございます、緋本です。
書きますb
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完成した文章は最終的にはTwitterに掲載する予定です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以下執筆場所
梅雨のまっさ中の日曜日。そろそろ昼ご飯を求め始める時間だろうか。
家の廊下の奥から、幼い声がある一人を呼び続ける。リビングにいた大人たちはその声に気付いているだろう。
「とうさぁん、おとうさん!」
「おっ、どうした!」
とうとうリビングに到達したその子どもが、ソファーに腰かけていた『おとうさん』と呼びつけ、皇は友人とは話す口を止めて、微笑みながら振り返った。
「あのね、今日は『父の日』だから、あげる!」
大きな画用紙に大きく描かれたのは絵だ。幼稚園用カバンに入っていたであろうクレパスでのびのびと描かれた人物画の上には、それぞれ『おとうさん』だけでなく『おかあさん』と『しんじ』と名前が書かれている。
「おおぉ!描いてくれたのか?」
「うんっ!」
「ありがとうなぁ!」
感極まる、といったような表情で皇は子どもを思いきり抱き締める。この瞬間、確実に友人と話していた内容だなど頭からすっとび、幸福感のままに腕の中にいる小さな存在と時と場合により都合よく感謝している神に感謝した。要するに、親バカ炸裂である。
「上手ね、幼稚園で練習したの?」
「ううん、おとうさんのお部屋のお写真を見たの」
つまり、模写らしい。確かに絵に描かれている服装は現在の皇の私服でも、鈴の付けているエプロンではない、もちろん一緒に描かれた玖乙女のカーディガンでもない。
「はっ、まさか…画家に…?」
「気が早ェぞ親バカ」
見せてみろ、と子供の隣に玖乙女が座って頼むと、子どもは快く見せてくれた。しばしじっと眺めると、小さく微笑んで玖乙女は絵を子どもに返す。
「上手いな」
「ありがと!」
「でも今日は『父の日』なんだろ、俺は描かなくていい」
そう玖乙女が言うと、子どもはむっとしたように声を尖らせる。
「なんで」
「な、えっと…だから、父の日なんだから自分の父親を描けばいいだろって…」
「なんで!しんじも一緒がいい!」
両親の口調がうつり、玖乙女を『しんじ』と呼ぶその無垢な視線が刺さる。完全に言葉を間違った。この流れで『自分は描かなくていい』と何度言ったところで幼さ特有の『なんで』が勢いよく返ってくるだけだ。
「しんじも一緒がいいの!ね、だめなの!?」
「……いや…でもなぁ…」
「まぁまぁ、いいじゃないの。せっかく三人並んでるのを描いてくれたんだから」
母親の言葉に子どもが誇らしげに玖乙女に『ほら間違ってないだろう』と視線を向ける。玖乙女にもはや弁解の余地もない。
「……わぁったよ」
「やった!」
飛びついた小さな体を抱き留めながら、ついでに『俺は…お父さんには…?』と若干ショックを受けている皇から視線をそらしながら玖乙女はまだ薄い背中を優しくたたく。
「あのね、しんじ」
「『しんじさん』、な」
「やだ」
何故か嬉しそうな即答、子どもというものはここまで強情であっただろうか。これは取り付く島もないという奴だろうか。隣でツボに入ったのか口を押えて肩を揺らす鈴の姿を視界の端に捕らえながら玖乙女は子どもに言葉を続けさせた。
「大きくなったらねぇ、しんじみたいにカメラをとる人になりたいの!」
「写真を、な。…写真家になりたいのか?」
「うん、しんじみたいにきれいな写真をね、たくさんとりたいの」
幼いながらに告げられた宣言に、玖乙女は柔らかい髪をそっと撫でながら答えた。
「なれるさ、お前なら」
「…ほんとに?」
「あぁ、きっとな」
「うん!」
心地よさそうに玖乙女の硬い手に小さな柔らかい両手が添えられる。
「どんな写真が撮りたいんだ」
「あのね、外国のお城とか…あっ、もちろんお父さんたちもとりたいな。でも、うぅ、たくさんある」
「それでいい、なんでも撮れるようになれ」
写真家として名を馳せる玖乙女がそういうと嬉しいのか、子どもが嬉しそうに笑った。鈴が台所で子どもを呼ぶとそっちへ走っていく。
「……んで、去年は何になりたいって言ってたんだ」
「え?」
「ちっこい頃ってよく将来の夢って変わるもんだったろ、俺らもそうだったし」
玖乙女が無意識にタバコのパッケージの端を触りながら尋ねると、皇はきょとんとして答えた。
「いや、『写真をとる人』だったけど」
「…いや、今はジョークを求めてないんだが」
「ほんと!…はぁ、眞司をうちの子に紹介する前は『おとうさんみたいな警察官』だったのに…」
いいんだけどさ…ときわめて複雑な親心を露呈された玖乙女は台所で母親の手伝いをする子どもへ視線を向ける。
「もう、すごい好かれてるもんなぁ」
「…あぁ」
「ちなみに…あ、俺言ったっけ、今年の誕生日プレゼントは『しんじのご本がほしい』んだって。多分写真集の」
「ちょっと待て」
静かに動揺した玖乙女は皇の肩を強く持った。皇はニヤニヤと笑い、妙に嬉しそうだ。
あぁ、と玖乙女は思う。あの子はとても____父親に似たな。
「よかったな、将来有望だぞ」
その笑いだしそうな声がどうしても子供の笑顔と重なって、玖乙女は頭を抱えた。
同時に
「あの子は、…どんな写真を撮るんだろうな」
「さぁ、でも楽しみだろ?」
「…あぁ」
未来が、優しく微笑んだ気がした。
「せいぜい反抗期で苦労するこったな、『おとうさん』?」
「や、やめろよぉ…ちょっと怖いんだよ…」
「『おとうさんなんかきらーい』とか言われたりしてな」
「ぎゃあああ!!や、やめっ、なんでそんなこと言うんだよ!」
大慌ての父親の足に子どもが飛びつく。脚の隙間から自分だけに見えた笑顔に、玖乙女はしょうがない、と腕を広げるのだった。
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完結しました。
ご覧いただいた皆様、ありがとうございました。
それでは失礼いたします。
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向き
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父の日ネタ ☆🎀 サイドストーリーAネタバレちゅうい
初公開日: 2020年06月21日
最終更新日: 2020年06月21日
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