緋本です、えみせんせの誕生日SSを書きます
Twitterの拡散の仕方がわからぬ…
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おお!ズンレーさんいらっしゃいまし^^
そうですそうです、ついに完成いたしました(ニコ…)
は~い!来てくださってありがとうございます!
ーーーーーー以下執筆場所
桜路咲笑は、甘いものが好きだった。
無理やりに辛い物や苦いものにも手を出したが、どうしても甘いものに手を伸ばしてしまう。それは端から見れば大した悩みではなかったが、本人にとっては長いこと疑問を残しているものなのであった。
「あれ、笑くんいつものじゃなくていいの。砂糖とミルク2倍の」
「あれは昨日だけ、たまにはほしくなるんだよ、苦いのが」
嘘だ。今も正直口の中がじわじわと苦みに侵されている。こういうときにチョコレートケーキがあればどれほど助かったか、と思うが甘いものの後の苦いものの威力がどれ程のものかを28年生きてきて知らないわけがなかった。あとで苦しむか、今苦しむか。『To be or not to be』だと国語教師の真似をして、それでも保健教師の端くれとして自分の体に厳しくブラックコーヒー特有の苦みを口の中にとどめて嚥下した。
「あ、そうだ。最近…春暮君たちは元気?前に一緒に来てくれたでしょ?」
「あぁ、元気だよ。最近は中間テストが近いから焦ってるんじゃないかな」
「そっか…そんな時期なんだね」
「今回も赤点取らなきゃいいな」
「…春暮くんが?仁心くんが?」
「獅恩が」
ああ、と納得したように魚谷が笑う。くすくすと口を抑えて微笑む様子に今頃頭を抱えているであろう三人を(正確に言えば2人を)想像したのだろう。実際になってそうだが。
「笑くん、生徒に教えてあげないの?」
「自分の科目ならいくらでも、でも他はむしろ…ちょっと苦手だったりするしな」
「僕らの時は、笑くんが先生だったのになぁ」
魚谷が言うのは、きっと自分たちが学生だった頃のことを言っているのだろう。ずっと昔の懐かしい話だ。
「すげぇ面白かったよな。千春が数学嫌い、与一が国語嫌い、とどめに明日斗が5科目全般が苦手っていう大盤振る舞いだったんだから」
「うっ…いや、でも、本当に駄目だったんだよ…あの時は…」
「数学Bでとうとうやらかしたもんな、平均点切っちゃって」
「も、もうその話やめよう!ね、ほら、笑くんの好きなドーナツもあるから、ね?」
露骨に焦る魚谷に桜路咲が笑った。好きなものに気を向けようとしたのだろうが、桜路咲の瞳はまだ学生時代の風景を見ている。
「テキストにかじりついても参考書を読んでも『わからない、どうしよう』ってしょぼけてさ、与一の教え方はわかってる前提で話してたから滅茶苦茶だったし、明日斗に至ってはそれ以前だったからな。覚えてるか?あいつ数学Aで自分の年齢と同じ点数取った事」
「あぁ…なんか、あれは…大変だったよね」
困った顔のまま魚谷が桜路咲が珍しく思い出を語るのを聞いている。普段、自分から話すことがないため嬉しいような不思議なような…そんな感覚がしていた。
「それで俺が明日斗に『頼む!』って頭下げられちゃって、俺たちだけのちっこい塾みたいな感じでやってたなぁ」
「あの時からちょっとずつマシになっていったんだっけ」
「そうそう、明日斗がまともに5教科平均点越したときに俺、明日斗の担任に呼ばれたもん」
えっ、と魚谷が驚く。初耳だったのだろう。呼び出した意図が分からない魚谷に桜路咲がにっ、と笑った.
「『すごいよ、お前先生に向いてるよ』って力説された」
「…そうだったんだ」
「まぁ、それが元でなったわけじゃないけど。それでもああやって言ってくれたのは忘れられないし、うれしかったな」
ようやくコーヒーを飲み終わって、口直しにお冷を流し込んだ桜路咲の前に、魚谷が何かを置いた。
「ん?」
「じゃ、当時の生徒代表としてこれを差し上げます…なんちゃってね」
それはバスケットいっぱいに詰められたドーナツだった。色も種類もばらばらで、おそらくできたてのドーナツ。
「え、俺……頼ん、だっけ?」
「ううん、僕言ったでしょ『生徒代表』って」
桜路咲がぽかんとして魚谷とドーナツの間で視線を彷徨わせる。それからようやくバスケットに挟まれたカードに気づいたようだ。魚谷が優しく笑う。
「お誕生日おめでとう、笑先生」
「…はは、お前にまで『先生』って呼ばれると…なんか、恥ずかしいな」
「普段たくさん呼ばれてるのに?」
「幼馴染から呼ばれるのはまた違うだろ」
ありがとな、と顔を伏せたまま桜路咲が言うと、魚谷はコーヒーのお代わりを勧めるのだった。