「親愛なるチアルよ。私たちの瞳に、再びあの美しき太陽を映してくださり感謝します。
今日も、私たちが片時たりとも、あなたというひと筋の光を忘れないよう、見ていてください。そして、あなたの望みへと導いてください。
すべての人の喜びを慈しむあなたのその御心を、未熟な私たちに悟らせてください
親愛なるチアルよ。今日もあなたの信条に従い、あなたと時を過ごします。サンメヨ」
一字一句間違えず、半音たりとも変わらないその言葉が、聖堂に響き、私たちの耳に柔らかな振動をもたらした。そうして朝の祈りが終わってから、張り詰めていた空気はふわりと澱んで、気が付けば生徒の弾む声で足音すら聞こえなくなっている。
時というものは早く、しかしながら平等だ。
最高学年である3年生が卒業して一月が経とうとしていたが、気付けば私が3年生になっていた。そして今日は新入生との対面の儀が行われる日だ。
ゼルニカ女学院。そこは修道院に隣接した女学校。私たちはここで勉学に励みながら、尊ぶべき同胞・チアルを支えるために日々を高潔に過ごしている。
「ロクサーナ。こっちよ」
私を呼ぶ声に振り返る。目線を下に降ろすと、女生徒の霧をかき分けて現れたイエローオーカーの双眸が、既に私を捉えていた。
「あらオルテンシア。ちゃんと間に合ったのね」
「同室なのにひどいわ。ロクサーナったら私を起こさずに一人で聖堂に行っちゃうんだもの」
「あなたももう3年生でしょう? 一人で起きられるようにならなくちゃ。目覚ましが鳴っていても起きないんだもの、さすがの私でも呆れてしまうわ」
「あの目覚ましったら壊れているのよ! 次に遅刻したらミクレンカ先生にお仕置きされるっていうのに。ほんっと信じられない!」
そんなことより早くご飯を食べましょうと、オルテンシアはつむじでそう言って、私の制服の裾野を引っ張った。
「私も一緒にいいかしら?」
朝食の入ったトレーを持って席に着き、さあ食べましょうというときにそう声がかかった。目の前に座るオルテンシアはびくりと肩を跳ね上げて、声の主を振り返る。私は気にも留めず、どうぞとだけ返事をした。声の主はありがとうと一言告げて、オルテンシアの隣の椅子に腰を下ろした。
「げ~……、ミクレンカ先生」
「ハネル・オルテンシア。あなたまた朝の祈りに遅刻しそうになったそうね。これで何度目かしら」
「いやいや、遅刻はしていませんよ。目覚ましの機嫌が悪いものですから、宥めていただけです」
「言い訳は結構。次に遅刻したら、次の同室は私だと心得ておくように」