ここは相棒と逃げたらいつも隠れている路地裏。俺と相棒はふうと息を吐きながらいろんなところから盗んで貯めていたタバコに火をつけて一服をつく。世間一般では俺たちは未成年だ。そんなこと気にするかよ。どうせ、俺たちは大人たちにも世界にも誰にも助けてもらえない。能力者だ。いずれ能力狩りにあって殺される運命だ。相棒も俺も懸賞はかなりついている。どこにも行けやしない。たとえ、俺が「奇跡」をもたらすことができるとしても、相棒が「悪夢」を使って相手を昏倒させたり苦しませてもだ。
「なあ、相棒」
「どうした?」
「お前はどんな「奇跡」もおこせるって言ってたよな。それが過去でも未来でも古今東西のあらゆることでも」
「あー…一応な」
「じゃあさ、俺の曖昧な願いを奇跡として起こせたりするか?」
「はあ?」
俺は急な話で咥えていたタバコを落とす。タバコはゆっくりと落ちていく。しかし、宙で浮き止まりゆっくりと俺の口元に浮いたまま戻ってくる。
「貴重な1本落とすなよ。相棒」
「いやいや、お前何言い出してるわけ?」
浮いていたタバコを俺はかじりつくように咥える。そして、じろりと相棒を睨む。相棒は困ったように肩を動かすと俺の横にすぅーと座り込む。頭を抱えてる。しかし、タバコはまだ消してないのか、下に火をつけたまま落としたのかゆっくりと煙が上がっていくのが見える。
「相棒にはさ…俺の過去って話したっけ?」
「昔、研究所にいたってことと兄弟がいたってことは聞いたな」
ぷはあと汚れた曇り空を見上げながら苦くてうまくもない気休めのタバコの煙を吐く。俺たちは今までまともに互いの過去や弱点になるようなことについては語らずに過ごしていた。それでもいく間柄だし、深入りは互いに情が移り万が一のときには互いを捨てられなくなる。ちょうどいい状態を保って過ごしてきた。それゆえに、俺たちは互いに名前さえも知らない。ただ互いを相棒と呼ぶ。相棒はだよなと呟く。そして、俺と同じように上を向いて煙を吐く。
「実はさ。俺の分岐点になるような人物を見かけたんだ」
「それで?」
「その人にもし…いや、その人のような誰かと出会えていたら変わっていたんだろうなって…」
相棒はまるで希望を見いだしたような顔をしてる。俺は大きく深く煙を吸って吐く。もう俺の肺は真っ黒なのだろうな。
「今からでも会っていけばいいだろう」
「いや、死んだ」
相棒はそっけなくあっけらかんに言う。感情も感じない。もう俺たちは死には鈍感で自分の死以外は何も感じなくなっていた。
「俺が殺してしまったようなもんだ。その人は見ず知らずの俺を、能力者だって知りながら助けてくれた。俺が相手を殺そうとしてるのを知りながら身をていして助けてくれたんだ」
「お前が前から付きまとわれて困ってた研究所からの「狩人」に追われていたときにか?」
「ああ…」
相棒は短くなったタバコを落として踏み消す。俺も続くように踏み消す。俺たちは能力狩りを主に行うやつら、通称「狩人」に追われている。相棒はその中でも研究所にいたころからかなり狂った「狩人」に追われていた。君こそ探していた能力者だや君はもっと血に濡れていた方がいいとか言って追ってくる。かなり狂ったやつだ。俺もあったことあるが、あんなやつに追われている状態で相棒を助けてやりたいと思ったことはない。たとえ、相手を殺そうとしていても。
「その人が言ったんだよ。能力は素敵なものだが危険なものだ。きっちりと扱えるようになるまではあまり使わない方がいいぞ。それに君はきっとそんな曇った顔をするより素敵な笑顔をしてる方が似合うさと」
相棒は泣いていた。歯を食い縛り泣いていた。きっとその人の言葉が俺たちのようなものにとって光で希望だったんだ。そんなことを言う人はいなかった。だからこそ、悔しい。そう思わずにはいられない。
「相棒は…もし過去にその人と出会えていたら奇跡だと思うぐらいに素敵か?」
「当たり前だ。きっと…いや、絶対に俺はこの世界の状態さえも変えるぐらいの人間になれていたと思う。その人と…いや、同じ思想の人と出会えたら絶対になってる。俺は天才だからな!」
「どういう自信だよ。天才だからなって…」
俺は我慢ならずに笑う。相棒もニシシと笑う。けど、相棒ならきっと…。
「相棒。「奇跡」をおこしてやろうか?」
「いいのか?」
「ただし、反動がやばいかもな」
「前にいってた過去におこしたときの代償か?」
「ああ。過去におこした場合、それによって歴史が変わると今がどうなるかわからない。相棒と俺は知り合いじゃなかった可能性もある。もしかしたら、能力者がいなくなっている可能性だってある。まあ、この悲惨な世界を知ってるのは俺だけになるがな」
「相棒はいいのか?その反動をきっと一人で受けることになる。本当にいいのか?」
「お前が今の世界を変えてくれるんだろ?なら、それ以上にいいものは俺にはないさ。ちょっと情が移っただけさ。相棒」
相棒は俺を抱き締める。苦しい。けど、泣いているこいつを拒めないし、大事な相棒だ。それに俺にはもうこの世界を暮らすのに疲れてしまった。きっとこのままじゃあ、狩られておわっちまう。なら、相棒に賭けてみてもいいかもしれない。
「相棒。もし、過去におこして変わっちまった世界で俺とお前が知り合いじゃなかったら、俺とまた相棒になってくれないか?」
「嫌だね。きっとお前は幸せに笑ってるさ。俺も幸せに謳歌してやるさ」
「相棒はひどいな」
「情が移ったのは今のお前なんだよ。変わっちまった世界でお前に情が移るかよ」
「そうかよ…」
「いつまでくっついているつもりだ」
相棒はわりいと言って慌てて離れる。俺はじぃと相棒を目に焼き付けるように見つめる。
「なんだ?」
「何でもないよ。頭の中で大きくおこしたい希望を考えろ。俺がそれを元にして過去におこすようにする。さあ、浮かべてみろ。俺が過去のいつかにおこるように能力を発動する」
「ああ…頼むぜ」
相棒は目をつぶる。俺はその肩に手を乗せ能力を使う。周りが白くなり、白い花が散っていくように景色が散っていく。相棒の姿も散っていく。最後だ。さよならだ。ぐいっと胸元を引っ張られた。
「相棒!絶対に世界を変えてみせる!”また会おうぜ!”」
そう言い残して相棒は散っていく。涙がこぼれていく。ずるいぜ。相棒。名前も知らないのにどう会うんだよ。世界は一気に構成されていく。同時に今の世界の知識が頭に入り込んでくる。
「はは…相棒…やるじゃん…」
たしかに相棒の宣言通りに世界は能力狩りなんていない。ましてや、能力者は前の世界よりは自由に生きている。狙われてたりするが保護する団体もいる。前の世界よりも大幅に幸せだ。
「それじゃあ…俺もフラりと行きますか…」
相棒は探さない。そう決めている。もう何も思い出もなくなってしまった路地裏を抜けて大通りに出る。ただ見上げたテレビで不思議な番組をやってる。その番組を見て俺は大笑いしてしまった。
「明日香警部?実力はこんなもんじゃねえだろ?」
「うるさいわね!まだまだこれからよ!」
「そうこなくちゃな!」
番組はタキシード姿の変な青年と警察なのだろうスーツの女性が奇怪な掛け合いをしてる。どうやらどこかの美術館の中継らしい。元気そうにやってるじゃねえか。俺なんかいらねえぐらいによ。それにたしかにあの路地裏で湿気たような面していたときより今のような笑顔の方が似合ってる。相棒が言われた通りだな。
”また会おうぜ!”
心の中で散り際の相棒の声が聞こえた。テレビで見たのも偶然だろう。だが…。
「ちょっと会ってやるか…」
決めていたのにな…。俺はあきれるように笑う。ポケットに手を突っ込むとあの世界の頃に吸っていたタバコが偶然だがでてきた。俺はくしゃりとタバコを箱ごと握りしめると目の前の公園の入り口にあるゴミ箱に投げ捨てた。俺はもう吸うほど現実逃避しなくていいんだよ。さあ、行こう。もう安心して歩ける大通りを俺はゆっくりと歩んで行く。
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いなり
テステス
00:40
いなり
今からお話をちょっとお話ししようと思います
01:06
いなり
こられた方はごゆっくりとしていっていただけたら光栄です!ヽ( ・∀・)ノ
01:26
いなり
BGMはお好きにおながしくだしませ
54:20
いなり
誤字脱字ありましたら教えていただけると光栄です
112:18
いなり
これにてお話はおしまいです。それでは失礼いたします
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奇跡をおこせる能力をもつ青年がいたとある世界でのお話
初公開日: 2020年06月09日
最終更新日: 2020年06月09日
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一次創作です。オリジナルです。
あらすじ
とある世界、超能力を持つものと持たないものが敵対し、能力者狩りと呼ばれるものが横行していた。そのなかで、古今東西に過去未来とさまざまな「奇跡」をおこすことができる能力を持つ青年が相棒と過ごしていたが、青年はすでにこの世界で生きることに限界をきていた。そんななか二人は話す。そして、変わる。
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