さて、これはちょっとした狐のお話です。
昔、とあるところに小さな野狐が住んでおりました。その野狐は怪我をしており小さく震えていました。そこを一匹の蛇が通りがかりました。蛇は小さくうずくまる狐に近づき囁く。
「そのままうずくまっていたら、食ってしまうぞ。野良狐」
「こんな小汚い狐を食べてあなた様が生きていけるのであれば、どうぞ私をお食べください」
狐は小さく震えながら蛇を見ました。蛇は目を細め面白いと舌をならしました。蛇はスクリと背伸びをするように頭をあげるとふわりと姿が変わりました。一人の人間のような姿へと変わりました。蛇だった人間は狐を抱き上げて森の奥へとゆるりと歩いていきました。森の奥には大きな湖がひとつ。湖の真ん中には小さなほこらがひとつだけポツンと浮かんでおりました。そこは人が入りそうにないほんとに小さなほこら。ほこらの中には鏡が光っています。蛇だった人間は鏡をスッと睨むと狐と共に消えてしまいました。
さて、時は大きく変わり、ある森の神様がお嫁様をもらうと森の動物たちは大騒ぎです。ですが、動物たちはお嫁様がいなくなった、お社に引きこもってしまったと神様の結婚以上に大騒ぎになっていました。神様は時が移り変わるにつれて大きく立派になったほこら、もとい、お社の前で正装をして泣きつくように座り込んでいました。
「頼む。お前のためにこんなにも参加者が来てくれたのだ。早くでてきてくれないか」
よくみると昔、野狐を抱き上げて消えていった人間のような姿をしたものでした。おそらくイケメンといっても過言ではないその姿は見る影もないくらいに大泣きでした。
「嫌です。私はあの時、あなた様が生きていくためにくわれるのだと、ここまで育てられたのも十分肉つきがついてからくわれるのだと思っておりました。決して婚姻為ではございません」
お社の扉には九つの尻尾の影が写っておりゆらゆらと揺れています。神様はまだまだ諦めないと泣きすがります。
「君の心に惚れたんだ。昔のことなんて気にしないでさ」
「ですが…」
「頼む。君と一生を添い遂げたいんだ」
「こんな小汚い狐とですか?」
その言葉に神様はピクッと動くと固く閉まって動かなかった扉をスパンと思いっきり開けた。そこには白無垢姿の美しい九尾の女性が座っていました。神様は九尾の女性に近づき手を握る。
「君は姿以上に心がきれいなんだ。僕は君以外に好きに、いや、愛せるものはいないとおもう。お願いだ。結婚してくれ」
九尾の女性はまっすぐに告げられたその言葉に真っ赤に染まり小さく頷く。瞬間、神様の背後で歓声があがる。
こうして、とある森の神様は長年の伴侶を見つけて森を豊かにしていきました。まあ…これはとある森の神様と狐の出会いと結婚のちょっとしたお話。また詳しいことはまたいずれどこかにて────