※長義さに。審神者名(八雲)出ます。
※イケメン女審神者と片想い長義のお話。
※テキストライブの仕様が変更したようなので、テストも兼ねて。だらだらと、でも短めの配信になる予定です。
まだ六月に入ったばかりだというのに、気候はすっかり真夏のそれに近かった。強い日差しは目眩を覚えるほどで、じりじりと肌を焼く感覚が煩わしい。こんな日に畑仕事なんてついていないと、長義は汗を拭いながら顔を顰めた。
そもそも、畑仕事はあまり好きではない。当番制であるし、生きていく為に食料を生産することの大切さはよくわかっている。だが、本当に刀である自分がやらなければならない仕事なのかと思うと疑問に思わざるを得ない。
(ああ――……はやく、終わればいいのに)
分かりやすく不機嫌な顔で、雑草を抜いた。だが、抜いても抜いても終わる気がしないので、数本抜いてからもう一度大きくため息を吐いて空を見上げた。雲一つない。
全くやる気のない長義とは対照的に、本日のペアである南泉一文字は黙々と作業をしている。どこか楽しそうでさえあるその様子に、理解ができないと思った。ああ、はやく終わりたいし、涼しい部屋に戻りたいし、何より――彼女の側に戻りたい。畑仕事の嫌なところは、執務室にいるであろう彼女、審神者の八雲と離れなければならないことである。こうしている間にも、近侍として彼女の為にできることがあるのではないか。それなのに、こんな、土まみれで作業をしなければならないなんて。
「猫殺しくん。これ、いつまでやらないといけないんだっけ」
「オレはこっちの野菜に肥料をやって虫とって水やり、お前はそこの一角の雑草抜き終わるまで」
「えー、こんなの今日中に全部とか無理だろう」
「無理とか言っていないでさっさと手を動かせ!さっきからサボってるの見えてるからな!……にゃ!」
ぶすっとした表情の長義を、南泉が一喝する。そんなにゃあにゃあ言いながら言われても迫力がないんだが、と思いながらも仕方なしに再びしゃがみ込んだ。
その時。
「夏野菜が良い具合に実ってきたね」
と、突然響いた声にぱっと顔を上げる。
「……八雲?」
「やあ、今日は長義と南泉が当番だったんだ。天気がいいから、たまには本丸を見て回ろうと思って」
そこには、爽やかな笑みを浮かべた彼女が立っていた。不意打ちの来訪に、今の今まで気を抜きまくっていた長義が慌てて居住まいを正す。彼女の向こう側で南泉が、呆れたような顔をしたのがちらりと見えた。
八雲はぐるりと周囲を見渡して、しみじみと言う。
「畑は維持をするのがとても大変だけど、皆が毎日世話をしてくれるから、こんなに立派になって。いつも感謝しているんだ。そろそろ夏野菜が取れる頃だと聞いているから、本当に楽しみだな」
彼女の言葉に、長義はにこりと笑みを返した。
「俺たちが心を込めてつくった野菜だからね、きっと美味しいと思うよ。収穫できたら一番に君へもっていくから、楽しみにしていてくれ」
「ありがとう。長義は今日は、このあたりの雑草を抜いているの?随分大変そうな作業だけど……」
「どうってことないよ、このくらい。今日にはこの一帯の作業は終わるだろうね」
「畑仕事も得意だなんて、私の近侍は流石だね」
八雲は長義の返答に満足そうにうなずく。それから南泉とも少し言葉を交わしたあとで、じゃあまた後でね、と去っていった。
八雲を笑顔で見送った長義は、彼女の姿がすっかり見えなくなるとずるずるとその場にしゃがみ込む。そして、あんまりに急に彼女がやってきたものだから、今の自分は土汚れでみすぼらしい姿になっていなかっただろうかとか、上手い言葉を返せていただろうかと今更ながらに気にした。
南泉は長義を見下ろして、大きく溜息を吐く。
「お前さぁ、八雲に良いように思われたい気持ちはよく分かるけど、あんまりにも調子が良すぎる、にゃ。さっきまでぐだぐだへばっていた癖に、畑仕事が得意とか、あんまり嘘ついてるとそのうち痛い目を見ると思うぜ……にゃあ」
「うるさいよ」
長義は口を尖らせて、それから軍手を嵌めなおす。
「それに俺は嘘なんてついていない。今から得意になれば問題ないだろう」
「すごい屁理屈」
「おい、猫殺しくん。さっさと手を動かせ。今日中にこの一帯の雑草を抜き終わらないとならないんだからな。そっちが終わったらこっちも手伝ってくれ」
そう言い放って勢いよく雑草を抜き始めた長義に、南泉は呆れ切った顔で吐き捨てた。
「本当に調子いいよな……」
長義は答えない。どう言われようと構わないし、実際先程と言っていることが違うというのは自覚している。でもそれは、仕方がないだろう。彼女に期待を掛けられれば、全力でそれに応えたいのが男というものだ。いや、惚れた弱みというべきか。雑草を抜くだけで彼女に褒められるのであれば、いくらでも雑草を抜き続けられる自信がある。
(今日、頑張って作業を終えたと報告に行ったら褒めてもらえるのかな)
そんな風に思ったら、さらにやる気が出てきた。腕をまくり汗を拭うと、手元の大きな雑草を引き抜く。まだまだ、今日の内番の先は長そうである。
おわりです!
ありがとうございました。
※動作確認の為、まだ数分配信は続きます。