久々すぎてぐだぐだとりあえず作業するし、内容は今考えている
※長義さに。審神者名(八雲)出ます。
※イケメン女審神者と長義のお話。
※学パロにする(教育実習生八雲と高校三年生長義)
※だいたい書き終わりました。思ってなかった方に話が転がりましたが、これはこれでいいか。このあとタイトル考えて、若干加筆修正するかもしれませんが、どっかに載せます。
生徒会会計の山姥切長義といえば、全校生徒の中でも特に、優等生で名の通っている生徒なのだという。成績に秀でており、運動も得意、周囲への気配りや礼儀作法もしっかりとしている為、教師からの覚えも大変に良い。だからこそ生徒会メンバーへ選出されたのだと、八雲の指導教師は言った。
「ああ、でも彼は理系選択だったな。四方津坂さんは社会科担当だし、三年生とはあまり関わりはなかったね」
「ええ……はい」
「もしかして、部活動関係?」
「いえ、そうでもないのですが」
四方津坂八雲は、教育実習生としてこの高校へやってきている。自身にとっても母校だ。今は二年生のクラス担任の下で面倒をみてもらっていた。授業の方は順調で、生徒たちもおおむね好意的に八雲を受け入れてくれている。八雲の方も、特に緊張なく実習を進めており充実した毎日を快適に過ごしていた。
ただ一点、予定外の懸念点を除いて。
「実は、山姥切……長義……くんが、日本史の授業で私に聞きたいことがある、と言ってきまして。受験には関係はないけれど、個人的に気になっていることがあるからと」
「そうなのか。山姥切くんは多方面に博識だからね。でもそれなら、社会科の先生にお願いした方が良さそうなものだな」
「私もそれを言ったのですけれど。どうやら、私が大学で取り組んでいる研究内容に近い話だから……と」
「それなら納得だ。社会科の先生の教える範囲は広いが、必ずとも専門とは限らない。現役大学生とはいえ、研究を行っている本人に尋ねた方がわかることもある」
八雲の前でうんうん、と頷く男性は、八雲を指導してくれている教師だ。穏やかな国語科教師で、二年生の担任。八雲に対しても気を使ってくれる人であり、人のよさが生徒たちからも慕われる要因だろう。だが、人がよすぎるな……というのがこの数日間での八雲の感想。つまり、人を信じすぎる。
「それで、四方津坂さんは何が気になっているの?」
「……教育実習生が、許可なく、担当している授業以外で生徒に教えたりしていいものなのか、と」
八雲は歯切れ悪く、言った。言外に、自分は望んでいないことを滲ませながら。だが彼は、八雲の言葉に微笑んだ。
「ああ、そういうこと。僕は別に構わないと思う。四方津坂さんさえ良ければ、ぜひ彼の質問に答えてあげるといいよ」
無理をしないようにね、とにこやかに付け足す彼に、八雲は引きつった笑みを返す。できれば断ってくれないかな、という八雲の意図は残念ながら全く伝わっていない。
「――ということで、許可は得たけれど。ここまでして、どんなことが聞きたいのかな。山姥切長義くん」
八雲の前には、一人の男子生徒が姿勢よく座っている。例の山姥切長義だった。顔には満面の、得意げな笑み。自分の思惑通りに事が進んだのを喜んでいるらしい。八雲が明らかに気乗りしない態度なのは、一切気にしていないようだった。
「ただの純粋な、知識欲です。八雲先生の指導はわかりやすいと、後輩から聞いていたので」
「本当に、それだけかな」
「他にも理由をあげていいんですか?」
「…………それで。何から教えようか」
にっこりと笑みを浮かべ、話を逸らした。危なかった。
長義は、教育実習開始日に偶然出会ったときに八雲を気に入ってしまったらしい。その後、彼の視線が自分を追っていたことに八雲は気付いていた。ただ、八雲と長義は校内での接点はほとんどない。見られているな、と思いながらも放置して数日。それでも熱烈な視線が外れないから、焦れた八雲から長義に接触したのが先週の話。結果から言うと、これが間違いだった。
(まさか、初手から恋人の有無を聞いてくるとはね……)
それでも八雲を前に赤面する長義を、この時はまだ八雲も特別警戒はしていなかったのだ。可愛らしい高校生からの憧れ。そのこと自体は光栄なことであり、微笑ましいものであり、八雲も純粋に嬉しいと感じる。だが、長義は残念ながら「かわいい」で済まされるままで終わるような男ではなかったのだった。
(先にからかってしまった私が悪いとは、思うけど)
八雲的には、あれは長義への牽制だった。教師と生徒という、一線を明確に引く為の。だというのに、長義はあの日以来、かなり積極的に八雲へのアプローチを始めたのだった。しかも要領の良いことに、絶妙に彼は優等生から外れる行動をとらない。そして周囲の大人たちは、あまりに長義を信じすぎている。彼が八雲に近づこうとするのは、他人の目がないときなのだ。だから八雲は、彼のことを強く遠ざけることができないでいる。そうこうしている間についに長義は、八雲へ個人指導を申し込んだ。それが今回の経緯。
校内とはいえ、なるべく二人きりという状況は避けたかった。だが、正面から真っ当な方法で約束を取り付けられれば受けるしかない。八雲は仕方ないと腹を括り、何を言われるのかと警戒しながら指導に臨む。長義はそんな八雲の心境に気付いているのか、笑みを返すと持ってきていた本を差し出した。
「この史料を読んでいて――そう、ここ。この部分の解釈が気になったから、聞きたいと思って。八雲さん、論文に載せていたと聞いたので」
「ああ、ここね。確かにここの解釈は専門家でも割れているところだよ。私は……」
質問の内容は、予想外にもしっかりと学術的な内容だ。一体何を聞かれるのかと身構えていた八雲は、肩の力を抜く。これは、無碍にはできない。一通り説明すると、追加で長義は質問を重ねる。結構専門的な内容で、八雲は驚いた。高校生の学習内容からは既に外れている。理系選択である彼が、こんなに日本史に詳しいだなんて思わなかった。
「なるほど。納得しました。聞いていた通り、わかりやすい。俺もあなたの授業がとりたかった」
それで、と長義は突然身を乗り出した。あっと思った時には資料を辿っていた八雲の手を、長義が包み込むように握っていた。
「実は今説明してくれたこの史料、近くの博物館で週末から展示されるらしいのだが。現地で直接指導をお願いできないだろうか」
そういうことだったか、と腑に落ちる。つまりこの個人指導自体、休日に八雲を誘い出す口実だったらしい。その為に史料をこれほど読み込んだとしたら、あまりに回りくどいが、八雲の警戒を解く為にはかなり有効な手段だったと認めざるを得ない。でも、それはそれだ。
「――だから。そういうことを軽々しく……」
窘めようとして顔を上げ、八雲は一旦言葉を止めた。
真っすぐ長義がこちらを見つめている。どうせ余裕な笑みを浮かべているのだろうと思ったら、あまりにも真剣な表情だったのだ。おまけに、頬に赤みが差している。張り詰めた視線に、彼が緊張しているらしいことを悟った。触れた彼の手は、冷たい。きっと、断られたらどうしようと思っているのだろう。
(困るなあ……)
思いつつも、すぐに手を払いのけられない自分が甘すぎる自覚はあった。でも、どうしてか見たくないのだ。八雲に冷たくあしらわれて、表情を凍らせる彼の顔を。
「山姥切くん。私は一時的とはいえ、教師としてこの学校にきているんだ。わかるよね」
「……でもまだ、貴女は正式な教師ではない」
「揚げ足取らない。だから、この学校に居る限りはそういう話には乗れません」
言い切ると長義は視線を下げた。分かりやすく、がっかりしている。それでも握った手は離さない。八雲は溜息を吐いて、付け足した。
「でも、この史料が展示されるのは知らなかった。教えてくれてありがとう」
「……お役に立てたのなら、良かった……」
「実際に史料を見るのは、いい経験になると思うよ。君も、暇だったら見に行ったらいい」
八雲は言いながら、長義の手を外した。振られて落ち込んでいる。可哀想に。視線を上げない彼を見ていたら、ついぽろっと口が滑った。
「……貴重な文献だからね。私も研究で取り扱っているし、日曜日にでも行ってみるよ」
八雲の言葉に、長義はぱっと顔を上げた。
「それって……っ」
「さ、個人指導は終わり」
八雲は答えずに立ち上がる。あえて長義の方を見ないまま、荷物をまとめて教室を出る。
「……思わせぶりな態度を取り過ぎたな」
後悔したが、もうどうにもならないだろう。日曜日、どう彼のアプローチを躱そうか。今からよく考える必要がありそうだった。
おわり。