世界を焼くような夕焼けだった。
茜色の夕日が空と地上の全てに降り注がれている。
赤く滲む太陽がだんだんと沈んで姿を消していき、反対側から青く染まる空に、さらに夜の帳が下りていく。
青から黒に色を変えた空には数えきれない星と、ほとんど正円に近い形の月がぽっかりと浮かんでいた。
満月に近い月から放たれる。
月光に照らされる二人の足元からは長い影が伸びていて、それを無意識に見つめていたら、突如影の輪郭が蠢いて、隣からクシャミをする音が聞こえた。
ず、と鼻をすする弟の目元は前髪で見えないが、わずかにこわばる口元から漏れる吐息は白く濁り空気に溶けて消えた。
露出している腕を組んで、自分で自分の体を抱きしめ擦る動作が、気温の低下を如実に表していた。
「寒いなぁ、やんなっちゃうよ」
掌に吐息をかけながら呟かれた言葉も、白さとともにすぐに冬の空気に霧散する。
愚痴をこぼしたところで体感温度が上がるわけでもないのに、それでも弱音を吐き続ける弟に時折喝を入れながら、微かにまだ痛む腹をさぐった。
氷月の凶牙によって穿たれた腹部は、あれからしばらくの月日がたち癒え始めていた。
千空やクロムたちが作ってくれる薬により痛みや化膿は抑えられ、死をも覚悟したほどの裂傷を刻まれた肉は癒着し、日常生活を送れるくらいに回復している。
見動き一つで痛みで悲鳴をあげた体は、今はもうほとんどが元通りだ。
さすがに表面的な傷跡は残るものの、ここまで驚異的な回復力と痛みの緩和に助力してくれる科学には感銘を覚える。
良好な視界をもたらしてくれた眼鏡に触れて、夜空を見上げると、満天の星空が冬の澄んだ空気の上に浮いていた。
「金狼、眼鏡作ってもらってから、よく星を見るようになったよねぇ」
暇つぶしなのか、こちらの動作を見ながら呟かれた言葉に、たしかにそうかもしれないなと返す。
幼い頃は一つ一つがはっきりと見えていたはずの星たちは、いつからかぼんやりとしたただの風景になってしまっていた。
レンズ越しに見ることでクリアに見える多くの輝きが、ふと懐かしい感覚を思い起こさせる。
当時と変わらず隣にいる自分より背の低い弟の後頭部を見ながら、それでも昔よりは大きくなったものだと、つい思い出した癖で髪を撫でそうになってしまい、持ち上げた腕を下ろした。
千空やゲンたちの読みでは冬が明けるまでは司王国との戦いの火蓋が切られることはないとのことだが、万が一の場合もあるだろう。
門番としてここに立っている間は気を緩めてはならないのだと、槍を握る掌に力をこめる。
「そういえばさぁ、ゲンと一緒に皆で作った望遠鏡、千空が調整し終えたらしいよ。今度僕達も使わせてもらおうよ!」
こちらの張った気とは真逆の、気の抜けた銀狼の言葉に溜息を吐きつつ、わかったから今は仕事に集中しろと何度目かわからない喝を入れた。
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ななし@a69642
書くの早い!!!
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金銀テスト
初公開日: 2020年05月12日
最終更新日: 2020年05月13日
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