※こんばんは
ぼうっとしてたら配信切れてた。ごめんなさい。
ハートありがとうございます!
一定の律動を刻む電子音が刻々と私の体温を奪っていく。握りしめた拳は凍えたように小刻みに震え、清潔なベッドに横たえられ無数の管を体に生やした彼の寝顔に注視した視界も靄が掛かったように潤み霞んでいた。閉ざされた瞼から伸びる睫毛も、軽口や助言を紡ぐ薄い唇も微動だにせず、私の憂懼を他所にLa Belle au bois dormant(眠りの森の美女)の如く完全に沈黙している。
コフィンに入る直前に見せた出掛けの挨拶と彼の悠々とした表情が鮮明に脳に焼き付き離れない。悩ましくも必ず戻ってくると信じてやまない私は彼の背を軽く小突いて送り出し、“いつもどおり”に自身のオフィスで彼の帰還を待っていた。今回彼が赴いたのは微小特異点であり当日中に帰還が叶う任務であったので、私はモニターに齧り付いて数値を打ち込み、時折タンブラーを傾けたり目薬をさしたり気ままに休憩を入れ、食事をとって時間を過ごし、彼の声が聞こえるのを待つだけで良かったのだ。けれども今日、彼を待ちわびる私を呼び寄せたのは任務で衣服や顔を汚した彼ではなく顔も見たことが無い管制室の職員と名乗る男性で、男は酷く動揺し、何度も吃りながら彼が任務中に大怪我を負い強制的に帰還させられたのだと告げた。
そんな筈は無い。彼はAチームメンバーの中でも飛び抜けて優秀で、何事もそつなく熟す魔術師である。合理的で狡猾で、大怪我どころか今までかすり傷一つ付けて帰ってきた事は無かったのだ。そんな男が今、意識不明の重体に陥り生死の境を彷徨っているなど信じられ無いし信じたくも無い。
驚愕も焦燥も感じられない私に管制室の男は気の毒そうな表情を向けながらも時間が惜しいというように、彼が運び込まれたという治療室へと腕を引いてオフィスを駆け出した。引き摺られながらも状況と事実を飲み込めない私は急速に流れて行く見慣れた白い壁に視線を彷徨わせていた。
消毒液とリネンの香りに満ちた治療室は電子音の他に音はなく、侘しい静けさに包まれている。陰鬱とした空気の中を進めば、私の入室に気が付いたDr.ロマニが悄然を顔に浮かべ弱々しく唇を開いた。
「#name2#さん、彼…ヴォイド君は」
「なんですかこれ。何故、デイビットは包帯だらけで眠っているんですか?」
「…レイシフトした先で相性の悪いサーヴァントに遭遇したんだ。気配遮断のせいで管制室でも存在を観測出来なくて、半ば不意打ちの形で刃物で腹部を刺された。」
「容態は。」
「内蔵を幾つか損傷していて出血も酷い。だから、その。本当はこんな事、君に言いたくない。でも医者として言わ無くちゃいけないんだ。…このまま意識が戻らない事も覚悟しておいて欲しい。」
Dr.の説明は何一つ理解出来ず、否、理解する事を拒否した私の視線はいつまでも目覚めないデイビットへ注がれ続けている。放心した私に掛ける言葉が見付からないのか、Dr.は一度私の肩に温かい掌を添えて擦り治療室を出ていった。
悲哀や憤懣は、失意や絶望よりも遅れてやってくる物なのだと、自身がそういった状況に陥って初めて知る事になる。今の私がそうなのだ。信じたくない、信じられないと駄々を捏ねても目の前の痛ましい彼の姿が無情に現実を突きつける。
※Wi-Fiがクソなので今日はもうおしまいにします。
閲覧ありがとうございました。おやすみなさい。