この前の続き少しやります。一時間ほど。どこまで書けるかなあ…
お題「罪と罰」
ザッカリーさん一人称、エルセンちゃん(達)との付き合いの話。
ゾーン3も書こうと思ったんですけどなんかぐだぐだなのでちょっと前後ばっさり消そうかなと
ゾーン2に焦点絞った方がまとまりが良さそう。
一応区切りかな…見直し次第で段落入れ替えたりするかもしれません。
もし見ててくださった方いたらお付き合いありがとうございました。
フリック入力はともかくフリックキーボードの画面占有がどうにも邪魔…スクロールしづら…なので見直しはローカルでやろうと思います。
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 ヒソヒソとしゃべくるBGMはいつ聴いても「もっとハッキリ喋ったら?」って思うんだよな。虚無の花の上で立ち止まって、暗い空間を見回す。リュックを背負い直して、まーあ、物事はなんでもイチからだよな。そういうわけでゾーン1に足を踏み入れた。
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 オレの初登場シーンといったらあそこだ。シャチハタの地下。坑道を歩く気はしなかったからレールを歩いて郵便局に行った。
 プレイヤー達は入れない浄化後のシャチハタの地下は、電気ももうつかなくてそれはもう真っ暗だった。
『よう、おはよう』
 なんでか地下にデスクを構えてるエルセンと、ここに来るたびに挨拶を交わした。
『おはようございます』
『今日も雨だなァ』
『ですね……地下だと関係ないんですけどね』
『ハハ、ちがいない』
 挨拶だけで、たいした話はしなかったけどね。
 白いホコリが積もるデスクを軽く撫でる。開いたノートや転がったペン、積まれた書類の山。働いてた人間だけが突然いなくなったんだ。
 マリー・セレスト号もかくや。
 暗い地下にずっと居ても仕方ない。流れに任せて次の行商の場所へ向かう。
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 雨が降ってない、真っ白なアルマはなんというか、ヘンな感じだった。圧倒的に何かが足りてない。
 デーダンを訪ねたりなんかしなかったしな、オレは前を通り過ぎるやっこさんやエルセン達に軽く手を振って胡散臭がられてたくらいか。肉の泉の音はなかなか酷かったよな。浄化されたあとはペダロで渡っても音が消えてるのはどういう理屈なんだろうな?
 なんとなーくペダロで一周して何もないことだけがわかる。まあ、そうだな。ここにももう何もない。
 期待してたわけじゃない。でもつまらないもんだね。
 奥のグランドシリーズのところまで行く気にはなれなかった。だってもう、お人形と人形遣いが宝箱は空っぽにしちまってるし。
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 そうそう、プレイヤー達は今浄化後のゾーン3で盛大に迷子してるところなんだ。なかなかエリア1から他への行き方がわからないらしくてな。
 ついこの前だ。あの子とアイツが顔を合わせたのは。それで……ちょっと思うところがあって、浄化後のゾーン巡りなんか始めたわけ。
 ビスマルクに出てみれば、色はなくてもやっぱり馴染んだ風景がそこにある。長いこと過ごした拠点だし、浄化のあとも実を言えばちょくちょく来てるしな。ただどうしても、行けてない場所がひとつ。その日は、まっすぐそこに足を運んだ。
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 赤紫の内装が目の前の光景に重なる。
 パーク。オレのパークだ。それなりの人数のエルセンがここで働いてた。表から逸れて裏口に回る。入れないことはないらしいな。
 中心の水が張り巡らされた交差路を左から。
 コースターの待合いのベンチに座ってたヤツらは実際、止まってるコースターよりもあそこでコースターのスリルに想いを馳せるってアトラクションを楽しんでたんだろうな。何が楽しいんだかオレにはさっぱりだったけどね。
 中央をまっすぐつっきった先。バルーンゲームは好きでも嫌いでもなかった。一回だけやったっけ? 勝敗も覚えてない。ここの従業員、負けたらバーントするから勝ち続けないといけないの、ゲームの都合とはいえなんかなあ。好きにしろよとしか言えなかったが。
 右の、ペダロボートの方に行く。ペダロは所在なさげにコースの開始位置に止められてた。それから、オレのオフィス。ここが目的だった。
 オフィスのドアにカギを差し込めば、カチリと開く音がした。ゆっくりと回して扉を開ける。
「……」
 中はそんなに広くない。ガラス戸の棚とプレイヤーのためのもう役目を終えた宝箱……
「……オーナー……?」
 もしかしたらと思ってたんだ。たいていのエルセンはゾーンの浄化とともに消える。そうでなくても、時間の経過とともに残ったやつらも消えていく。最後に残るのは例のゾーン2唯一の生き残りだけ、になるはずなんだ。
「……ハイ、アミーゴ。アンタは無事だったのか」
 そのエルセンは部屋の隅に蹲って膝を抱えてた。見上げた顔がまさに幽霊でも見たような青白さで、お互い様だって茶化すのもはばかられる有り様で。
「オ……オーナーこそ、ご無事で……! ぼ、僕、ああ……またお会いできるなんて……」
 ふらつきながら立ち上がったエルセンを支えた。涙ぐんでるコイツに苦い思いが湧く。オレも、また会えるなんて思ってなかったよ。もしかしたらとは思ったさ。だけど出来れば。
「アンタ以外は居ないみたいだな……ここに来るまであちこち見てきたが、どこもかしこも真っ白のがらんどうだった。アンタずっとココに居たのかい?」
 オレを見上げた顔が歪んだ。
「……、ええ……。そうです、僕、ここを離れことも出来なくて……助けを呼びに行くって数人が出て行ったんですけど、誰も戻らなくて……あ、あなたの消息も、わからないし……っ」
 目の端に滲んでた涙がぼろぼろと落ちだす。ああ、焦げた甘い匂いがする。
「……オーナー……」
「なんだい」
 オレから離れたソイツが泣きながら距離を取った。
「……最後に、お会いできて、良かったです。僕、パークを守れていたでしょうか」
「……ああ、モチロンさ。アンタがいなきゃココは回らなかった。オレも好きにあちこち行ってられなかったよ。ホントに助かってたんだ」
 コイツの緊張の糸を切っちまったのはオレだ。さっきまではなかった、黒い細い煙がエルセンの体から立ち上ってる。
「ああ……、それが聞けて……良かった。じゃあ、僕、これでお暇させていただきますね」
 苦しそうに泣きながら、ソイツは少しだけ笑った。オレは愛剣を抜く。
「そういえば、オーナー。前にここに来られたコースターに乗った人とは、仲直りされたんですか?」
 世間話の間に涙が黒くなって、口からもゴボリと黒いものが溢れた。
「アー、そうだよ。まァ色々あったけどね。いやあ、あの時は助かったよ」
「ふふ……、良かったです。あなたのパークですから」
 苦しげな咳が続いた。エルセンじゃなくなりかけてるヤツは、オレが剣を向けてもその場を動こうとはしなかった。
「首切りなんて、比喩のはずだしアンタはクビなんかじゃないのにな」
「本当ですよ……。……さようなら、ボス」
「……ああ。ありがとうよ、アミーゴ。今までご苦労さん」
 重い腕をふるって、オレは白い部屋に黒い染みを増やした。
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 パブロのところにまた顔を出して、ゾーン2の最奥にも一度様子を見に行った。定期的に行っちゃいるが、あっちはプレイヤー達はもう来ないだろうしな。後はまあ……ゲームクリア後どうなるかってとこかね。最後まで面倒を見てやれるわけじゃなし。パブロはパブロで、また顔を合わせることになるのはわかってるし。
 ついでにショッピングモールの店に寄って、置いたままにしてた物資やらなんやらを調達した。オレの家もそのままなんだよなァ。セクレタリーがいなきゃ良い隠れ家なんだが。まだたまーに使ってるし。せっかくだしと軽く掃除をすませた。
 カウンターに立つ。イヤんなるよな、ここで商売してたのが昨日のことみたいだ。カウンターに肘をついて片手をあげてみる。
「ブエノス・ディアス、親愛なるプレイヤー。ショッピングモールほど、商売に向いてる場所もないよな?」
 なんつってな。たまに来るパークのヤツらや図書館や市街の常連、ここでの知り合いも多かった。プレイヤーも含めて大事なお客だったさ。
 カウンターを出てこれまでみたいに戸締りをする。セクレタリーは物を壊したりしないところは妙にお上品だよな。なんなんだろうね、あいつらも。
 まあ、またしばらくは来れないだろう。進行度合いによっちゃもう来れないってことも……あのペースならそれはないか。
 ポンとカウンターを軽く叩いて、モールを出た。
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 ゾーン3はどうするかな。今は人形遣い達が行ってるからなァ、鉢合わせないようにやめておくか。
 虚無に出て、一度足を止めた。
 形見も何も残りゃしない。だいたいオレ、エルセンの見分けつかないんだよな。基本はね。特徴があったり、よく話すヤツは別。
 パークの、オレのオフィスに居たアイツは、その見分けがつくヤツの一人だった。だからどうってわけじゃないんだが。
 今の拠点にしてるゾーン0に足を向ける。プレイヤー達は順調……まあ道に迷う以外は順調だ、とにかく立ち止まることはなく、歩き続けてる。そのうちなんとかしてゾーン3の最奥までも行くだろうよ。そうしたら次はいよいよザ・ルームへ挑戦するわけだ。
 オレはそれをずっと前から知っていた。プレイヤーと「ザ・バッター」の浄化が慣れ親しんだゾーン2をどんな姿に変えるのか、あそこにいたエルセン達がどうなるのか。そんなことは知っていたんだ。
 だからパークにアイツが残ってたのは計算外だった。長い付き合いだったんだ。見た瞬間、バチが当たったな、って思った。
 深く息を吐く。切り替えないとシュガーに気付かれるよなあ。なんにも気にしないようでたまに鋭いんだから。
「花でも供えようかね」
 次行った時には。
 償いのつもりはさらさらない。だけどまあ、オレの罪はオレの物だし。リュックと一緒に背負ってくだけだ。
 暗がりの囁き声に背中を向けて、オレは黄色い孤島に向かって歩いて行った。
(了)
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OFF「罪と罰」で書いてる
初公開日: 2020年05月09日
最終更新日: 2020年05月10日
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スマホからなので色々遅いと思います。二回目。日付変わるあたりまでのんびりやります