脳筋ギルドと呼ばれてそうという話
あぁうん、これは酷い。
と、言うのが、初めて『アベンチャーエール』全員で行動した場合の戦闘を見た、偽らざる感想だ。やはりというか何と言うか、反撃? やられる前にやれ! 遠距離? 近寄って殴れ! 死ぬまで殴れば死ぬんだよ!! ……みたいな、相性とか、戦術とか、属性とか、丸っきり度外視した戦い方だ。
いや、まぁ、それが出来るのはヒーラーの活躍あっての事だし、一応ギミック的なスイッチを作動させたり、遠くからちまちま削って来ようとするやつを叩いたりと、仕事はしているんだが…………うん。
「1人でも十分なところ、人数を集めると……濁流か?」
「あはは、言い得て妙かも!」
交替で休憩しに、前線から下がって来たスピカも同意のようだ。うん。前に出てくるものを、エネミーも障害物も壁も関係なく殴り飛ばし、弾き飛ばし、ひたすら進んでいく様は一周回って壮観だ。
一応内側に回って休む冒険者と、前線に立って戦闘に参加する冒険者とに分かれている。その更に内側に戦闘に参加するヒーラーが居て、休んでいるヒーラーは一番内側だ。なお、現在位置である。
……こうやって分業してローテーションを回しているから頭は使っている筈なのに、どうしてこうも頭が悪く見えるんだろうか……?
「……脳筋だからじゃないかしら」
「……そうか」
まぁ、言い逃れは出来ないな……。
しかしまぁそんな調子なので、攻略スピード自体はかなりのものだ。今回はこういうイベントごと専用の「おたから箱」という物を持ち込んでいる事もあるだろうが。……「おたから箱」とは、うーん、一言で言うと、自動ドロップ回収機能付きアイテムボックスだ。
もちろん大変な貴重品なので、万が一にも盗まれては大変、という事で、普段は厳重に守られているアイテムだった。まぁ、それそのものが小さな子供くらいなら入ってしまえるくらいの金庫のようなものなのだが。
「(……で、何故それを持つ羽目になっているのやら)」
……なのだが。何故か今その「おたから箱」は、腰の後ろに位置するポーチの中に納まっていた。どうやら別の拡張された空間に内包されても問題無いらしい。だから、外から見たら、エネミーを倒し、ドロップが出て、それが光の粒になって消えているように見えるだろう。
いや、まぁ、説明は受けたし、その上で(主にスピカからの)頼みとして承諾して、持ち歩く為に受け取ったのは確かなんだが。というか、射程の関係もあるが、現在の一番内側にいる理由というのはこの「おたから箱」を持っているからなのだが。
うーん、と微妙に納得できないままちまちまと援護をしている間に、また1体コアエネミーが沈んだ。『アベンチャーエール』冒険者一同はそのまま足を緩めることなく、深型『スポット』の階層移動用のそれにも似た、別の『スポット』へ移動する為の扉へとなだれ込む。
「シューさん気を付けてね、そろそろ来るわよ……!」
「! 分かった」
ローテーションで順番が来たのか、その動きに混ざって前へと出つつ、スピカが言い置いていった。それに了解の声を返し、今まで以上に周囲の気配へ神経をとがらせる。
何故か、というと……詳しい理屈は不明だが、「おたから箱」が他所のギルドに攻撃されると、その時点で「おたから箱」に入っていた魔石やドロップ品が、ダメージに応じて「奪われる」のだ、そうだ。
これまでも、「おたから箱」を別の箱に入れてみたり、頑丈な乗り物に乗せたり、よく似た別の箱をたくさん作って全員で背負ったりという事はしてみたらしい。それでもダメだったらしい。
「(まぁ遠距離攻撃が無いのは、見ればわかるだろうしなぁ)」
そもそもとして「おたから箱」自体が高級品、という事もあるのだが……まぁ、つまり、大祭というのは……ギルド同士で協力するだけでなく、その報酬の奪い合いでもある、と、言う事だ。
……という事で、残弾をたくさん持つためにベルトを強化し、ポーチを強化し、結果として個人としては格段に積載量が多い、という部分を買われ、今回「おたから箱」を持つ役割が回って来た、と。
新人にやらせる仕事内容じゃないだろう……と思いつつ、濁流にも似た『アベンチャーエール』一同の動きに小走りで付いて行きながら、透明なビー玉を握りこんだ。同時に、感知した気配の方を睨んで声を張る。
「10時方向気配多数、推定他ギルド冒険者!」
「右方向旋回! 一旦回避するぞ!」
「「「応!!」」」
一塊となって動く冒険者たちが、よく訓練された群れのように方向を変える。さて、ただ単にかち合っただけならこれで離れていく筈だが……。
「──7時方向から追跡あり! 1時、4時、9時方向から更に接近してくる!」
「っち、相変わらずだな、あぁ!? 対人集団戦、用意だ!!」
完全に囲まれている以上、その可能性はなくなった。完全にこっちを狩りに来ているようだ。
『スポット』を攻略すれば、内部で倒された人間は、蘇る。そこに、一般人と冒険者の区別は、ない。
逆に言えば。『スポット』の内部で、その後攻略するつもりと実力さえあれば……冒険者同士であっても、気軽に殺し合う事が出来る、と、言う事だ。