スキル選びは難しいという話
そう言えば、以前マスター達が大変苦戦して、苦肉の策で遠距離攻撃を出来るようにした『スポット』は確か、鳥型エネミーばかりが出てくるところだったか。期せずトラウマを抉ってしまったらしい。
そう気づいたのは、似たような『スポット』をもう2つ巡り、枠が10個になった時の事だ。流石にマスターとスピカばかりに頼る訳にもいかず、他のメンバーにも顔合わせを兼ねて付いてきて貰ってその反応を見て、だ。
しかし夏休みで時間が使えるとは言え、1日1個『スポット』を攻略できるのは大変と捗るな。それがいずれも浅型であり、実入りとしてはそうでもないと言っても、今までと比べると雲泥の差がある。
「シューさんって、弾代がかかるじゃない。それがギルドに入ってない状態でやりくりするって、すっごく大変だと思うわよ?」
という事で、装備で枠を4つ使っている為、残り6つの枠(1つは『魔石ドロップ増』が入っているが)にどのスキルを入れようか、と悩んでいると、スピカがやってきた。どうやらここ数日の戦果を聞いたようだ。
まぁ確かに、以前は補給というか、弾数に制限が付いていたから余計攻略に時間がかかっていたのは確かだ。必要最低限以外は戦闘しないようにして、こそこそとコアエネミーの所に向かい、狙い撃ちにするという方法だったからな。
それが、今は補給の問題が解決し、前衛は選び放題だ。遠距離攻撃職として、これほどありがたい事は無い。
「非常に助かっている」
「そう言ってくれると助かるわ!」
さてまぁ、そんな会話はさておき、スキルだ。
まず1つ『魔石ドロップ増』は既に確定していて、次に『アイテムドロップ』も確定だろう。これが無いと、ユニークアイテムと言われるものすら落ちないようだから必須だ。
そして『器用強化』と『速度強化』が戦闘スタイルに合っている基礎強化スキルだろうか。どうせ装備からして防御力を無視して機動力と隠密隠蔽力に振り切っている。ここで『体力強化』とかを入れても、焼け石に水だろう。
「……さて、あと1つ。どうするか」
ここまでは先達こと、マスターとスピカのお勧め通りだ。スキルの説明を聞いて納得したから問題ない。という事でさっさと取得。今は効果は特に感じないが、いずれ大きな差になるのだろう。
で、残り2つの内1つは『アイテムバッグ』というスキルにした。これは鞄やポーチといった装備を身に着けていると、その性能を強化してくれるスキルらしい。スーツコートのポケットも対象になるようなので決定。
その上位互換っぽい『アイテムボックス』という、自分専用の亜空間を手に入れるスキルもあったのだが……これの習得には、真球の魔石が必要との事で、諦めた。
さて問題は、残り1つの枠だ。装備は今の所増やすつもりは無いので、選択肢はスキルとなる。なるが、そのスキルの選択肢が多くて困っている。
「なになに? どれで迷ってるの?」
「あー……ドロップの強化にしよう、とは、思ってるんだ」
「あぁ~、分かるわ~。種類が山ほどあるものね!」
そう。『ドロップ強化:』とつくスキルの、種類が、多い……!!
無機物とか鉱物とかならまだ可愛い方で、武器ならまだしも銃、杖、本なんかも普通に並び、剣に至っては短剣長剣曲剣と、それだけで枠が全部埋まってしまいそうな数がある。
……多分、幅が狭い方が、落ちやすくなるのは、確かなんだろうが……それにしても多すぎないか、これ。
「……いるのよ」
「?」
「中にはいるのよ……魔法を使う冒険者の中には、特定の武器を消費して戦う人とかがいるの……」
「……あぁ……」
どうやら、そういう要望に応えた結果のこのスキル郡、ということのようだ。……いや、あれだけマスターに怒鳴られた身で言うのも何だが、そもそもの戦闘スタイルが千差万別すぎるな?
まぁしかし、そういう事なら……と、改めてスキル郡を確認し、フィルターをかけ、選別していく。
「それでもまだ片手の指より多い……」
「どれどれ? えーと……鉱物、宝石、宝飾品、貴重品、金属装備、装飾装備……あぁ、宝石狙いかしら?」
「あぁ。ガラス玉を普段は使っているが、宝石だと一段威力が上がるんだ」
「戦力に直結するならそれは大事ね! そっか、それに宝石とか、現実じゃあそんなにほいほいとは手に入らないものね」
そういう事だ。それに、一度手に入れば売買カウンターで継続して購入できるから、そういう意味でも宝石が欲しい。一度手に入れば、お金さえあれば(=雑魚魔石を集めれば)いつでも補給可能というのは、大変と助かる。
一段威力が上がる、というのも、色付きビー玉(直径2㎝弱)と天然石ビーズ(直径数㎜)を比較しての話だ。同じガラスならビーズよりビー玉の方が威力が高いことから考えて、大きさと威力は比例する。
その上で、ビー玉と天然石ビーズなら、天然石ビーズの方が威力が上なのだ。ビー玉サイズ、あるいはそれ以上の大きさの宝石が手に入ったら、さて、どれほどの威力になるだろうか。
「うーん、私のお勧めは貴重品かな」
「……そうなのか?」
「うん。や、その、宝石単体ってみたら、そりゃ宝石の方がいいと思うけどね? シューさんってほら、金属の球も撃てるじゃない? だからその、ちょっと特殊な素材なら嬉しいのかなって……魔法金属とかあるから!」
とか考えつつ悩んでいると、スピカからそう提案があった。……なるほど、魔法金属。そういうのもありか。
実際撃ってみなければ効果は分からないだろうが、成程確かに、撃てる種類が増えるのは良い事だな。
「それに、貴重品の方が当てはまるエネミーが多いから、発動回数も多いだろうし」
「……なるほど。確かに、通常の獣型エネミーや骨エネミーから宝石が落ちたら、それはそれで違和感だな」
「そうなのよ」
ドロップ強化スキルの種類は、当てはまるエネミーにしか発動しないという制限もあるようだ。まぁ、少し考えればわかる事か。
「まぁそうは言っても、枠だってあと10個はすぐに増えるわよ! 大丈夫大丈夫!」
「それならお勧めにしておこう」
と、『アイテムドロップ強化:貴重品』を選択して枠にセットする。これで、10個全部埋まった。次は、『スポット』を10個攻略するごとに1個増える。筈だ。
という事は、しばらくは装備の進化に球の魔石を使う事になりそうだ。……真球の魔石は、一つは確保しておこう。『アイテムボックス』の取得用に。
「うんうん、枠埋めお疲れ様!」
「……で、何の用だ、スピカ」
「…………バレた?」
バレいでか。という視線を向けると、てへ、とばかり首を傾げるスピカ。いや、顔は仮面で見えないのだが。
「……その、お盆って、予定、空いてる……?」
「?」