降18新♀23
降谷の心とは正反対の晴天の空を人工的なビル達の凹凸が空を灰色に突き上げている。
降谷は両の足を左右の足に動かし、目的のビルに向けて走った。
白いクラックの入ったコンクリートの階段を駆け上がり、目当ての事務所のチャイムを鳴らした。
「工藤新一さん! お願いがあります!」
ガチャリ。開けた先に待っていた麗人に降谷は息をのんだ。
ワンルームの奥、大きな窓を背面に、大きな机を一つ、両サイドの書棚には様々な本が立ち並ぶ。
ブラインド越しの太陽光を背後に携えたその人は、その時の降谷にとってとても神々しいものに見えた。
「なんだ? 可愛いお客さんだな」
ふっとその人が表情を崩したことで、神ではなくて人だと知った。
「貴方が工藤新一さんですか」
「ああ、っで? とりあえずこれでも飲め」
工藤新一。その人は冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出して、降谷に渡してくれた。
そんなものを飲んでいる時間はない。ふっと口を開こうとしたところで喉の奥がつっかかる。意識してみれば、ぽたりぽたり。額から流れた汗が顎を伝い、カッターシャツの袖に吸い込まれていくのが分かる。そこで降谷は猛暑にもかかわらず、ここまで全力で走ってきたことを自覚した。
貰ったお茶を受け取り、パキっとキャップを捻り、プラスチックの留め具を割る。そのまま、口元にペットボトルを持っていった。
ごく…っ。ごくごくごく。一口、口に含めばさらに喉が水分を欲した。降谷はお茶を喉奥へ吸い込ませるだけ吸い込ませる。
「とりあえず、座れ」
「はい……」
半分程飲んだところで、お茶から口を外す。ポスンとソファに座った。上質のソファは成長期で最近は百八十を超えた身長の降谷が身体を預けてもビクともしなかった。
「こんな時間に学生さんが何の用事だ?」
じっ。青い一対の瞳が降谷を見ている。この人は真剣そのもののはずだ。
黒い髪、青い瞳、白い肌、赤い唇。どれも絶妙な配置で互いの色彩を際立たせている。神秘と色気は両立するものだ。まさに今のこの人のように。
そう、思考が脱線し始めたところで降谷ははっと我に返った。
工藤新一は降谷が学ランを着ていること。時間がまだ十三時と下校するには遅い時間であることからそう言っている。
「……。学校に行っている場合ではなかったもので……」
「そうか。その理由を俺に相談に来たで良いか?」
「はい」
「まあ、話だけでも聞くよ」
「お願いします……。実は――」
そこで降谷は工藤探偵事務所に来た理由を話し出す。
降谷には諸伏景光という友人が居ること。
昨日の夜から家の人間と連絡が取れないこと。
昨日の夕方、降谷は諸伏と下校をしていて、変わった様子がなかった。降谷とは帰り道の途中で別れた。
その夜、降谷に連絡があった。諸伏の母親からだった。家に帰ってきていないのだそうだ。降谷もおかしいと思い、昨日の夜遅くまで探し、今日は学校に出て色々な人に聞いて回ったのだけど、コレといった収穫がなかった。
メッセージアプリにも連絡を入れているが、今もまだ既読がつかなかった。
「なるほど。それは心配だな」
「はい……」
ぎゅっと握った手。爪が食い込んで痛かった。
「っで? 俺のところに来た理由は?」
「とても……。腕の良い探偵と聞きました」
「それは探偵冥利に尽きるな」
「友人を探しだせるのではないか……と。依頼料は……」
ふむと工藤が頷いた。そこで降谷ははっとした。探偵ということは探偵を生業としているのだ。腕が良いということはそれなりの金額を用意しなくてはいけない。降谷は高校生だ。貯金もお年玉を貯めたものしかない。そう大した金額ではない。そのことに気づいて、がくりと肩を落とす。探偵に依頼をするというのは景光を探すにあたり、降谷が取れる手段ではないのだ。
「すいません。お金……の工面ができません。やはり、この依頼はなかったことに……」
「まあまあ、ちょっと待て。……で? お前の名前は?」
「すいません。降谷零です」
「そうか。正直、探偵業は俺の生業だから報酬なしで。というわけにはいかない」
「そう……。ですよね」
「だから、代替案だけど……」
「はい」
「俺の事務所は開けたばかりだ。一人では回って無い。バイトが欲しい」
「バイト……」
「そうだ。ところで、降谷の依頼を確認したいのだけど良いか」
「はい」
「友人の諸伏景光を探すこと。で良いか」
「はい」
降谷には工藤新一、その人が神のように見えた。
それから降谷は工藤を連れて、通学路を歩き、諸伏の家まで歩いた。
「諸伏さんの家族構成は言えるか?」
「はい。父、母。後は景光の三人家族です」
「そうか。写真は?」
「コレです」
「なるほど。ありがとう」
降谷が見せた写真を見て工藤さんが頷いた。
「何か……。わかります?」
「いや、まだわからない」
「そうですか……」
「諸伏さんのことを知っているだけ教えてもらえるか」
「はい。あいつとは小学校の時からの友達です。長野に居た頃からの」
「長野……?」
「はい。僕も昔は長野に居て、今は親の転職を機に東都に来ています。景光もその後、東都に来ました」
「なるほど。家族で引っ越してきたのか」
工藤の言葉を聞いて、降谷は正しくは違うことに気づいた。
「……いえ、諸伏だけ今の家に来ました」
「……。踏み込んだ質問だけど諸伏さんのご両親は実のご両親ではないということで良いか」
降谷の言葉を聞き、工藤は正しく理解をした。
「はい」
「そうか。実の親元から離れることになった理由は?」
「景光の実の両親が惨殺にあい、東都に居る親戚に引き取られることになりました」
「……そうか」
「はい」
工藤さんは僕の言葉を聞いて、ふむっと考え始めた。
カツカツと歩く工藤は降谷より、少し背が低い。
降谷は成長期でまだ背が伸びるばかりで肉はついていない。その降谷より工藤はさらにひょろりとした身体をしている。
工藤さんは探偵事務所を構えるぐらいだし、降谷より年上のはずだ。同性から見ても身体が薄く、大丈夫かと心配になる。
チラリと見たスーツは男性ものなのに、薄い身体、細い首だけを見ると女性にも見える。
「どうした?」
「いえ……」
降谷がじろじろと見ていたのが工藤に気づかれたのだろう。バツが悪くなる。
「何もないならいい」
「はい」
降谷と工藤は諸伏の家に向けて歩いた。
「こんにちは……。あのヒロのことが心配で……」
「ああ、降谷くん」
中から出てきたのは景光の養母だ。目の下には隈がある。おそらく昨日も景光を探して寝不足なのだろう。
真夏だが、家の中はひんやりとしていて服は薄手ではあるものの長袖を着ている。
「ありがとうね……。あの子見つからなくて」
弱弱しい声をして、女性は現状を降谷に話した。
「ところで……。そちらは?」
「ああ、私は降谷さんの知り合いです。今日、困った様子で私のところに来たので……。案外、ひょっこり帰ってきているかもしれないと思ってこちらに一度伺ったのです」
「そうですか……。ご丁寧にありがとうございます」
にっこりとほほ笑んだ工藤さんに女性は夢見心地に返答した。工藤さんが手を差し出して、養母と握手を取り交わす。
降谷はその様子に分からなくもないな。と工藤を観察する。
仕立ての良い男物のスーツ。すらっとした手足。工藤さんは顔もとても整っている。そこらの芸能人だって素足で逃げ出すレベルだ。おばさんが工藤さんに見とれるのは当然だろう。
けれど……。景光が行方不明な状況で工藤さんに見とれることが降谷には違和感があった。
玄関で養母との会話を終えて、降谷と工藤は近くのカラオケボックスに来ていた。適当な曲をかけて、二人で話し始める。
「それで……? 俺は不自然かなと思ったところが幾つかあったけど降谷くんは?」
「僕は……」
降谷は先ほどの養母の様子を思い出す。諸伏が居なくなったから、目の下に隈が出来ていたのだろう。では……。
チラリ。降谷は工藤を見た。確かにハッとする程綺麗な人ではあるが……。
諸伏がこちらに来たのは小学校の高学年だった。今の養父母には子供が居なかったからとても可愛がられていた……。という風に見えたが……。
「どうした? 率直な意見を聞きたい」
「景光が居なくなったのに……。おばさんの様子が少し……変だったかなと」
「具体的には?」
「何というか……。こう……」
貴方に見とれていたように見えました。とはいいがたい。言葉を濁していれば、ふむと工藤さんが頷いた。
「俺から見て不自然なところはいくつかあったが……。いくつか聞きたい。諸伏の家は動物を飼っているか?」
「いえ」
「では、とても暑がりな人は?」
「多分……。居ないかと」
「なるほど……」
降谷の知らないところで工藤さんは何かを納得したらしい。一つ頷いた。
「ところで、諸伏さんが引っ越してきた時期は?」
「小学校高学年。今から七年ぐらい前です」
「七年……。そうか」
降谷の回答に工藤さんは何かを考えるように口に手をあてた。
「ごめん。景光さんのスマホの電話番号は分かるか?」
「はい」
「悪いが俺に教えてくれないか。少し調べたい」
「分かりました」
手渡された紙に諸伏の電話番号を書き、工藤さんに渡した。
「ありがとう。俺との連絡だけど……」
「コレ、僕の電話番号とメッセージアプリのIDです」
ついで、この後の連絡先について聞かれたので、降谷は続けて、自分の電話番号とメッセージアプリのIDを書き入れる。
「ありがとう。何か分かったら連絡する」
確認のために工藤さんはスマホを取り出し、メッセージアプリから降谷のアカウントを検索した。
ぽこんと送られてきたスタンプが送られてきた。シャーロックホームズの服を着た可愛らしい猫だ。降谷より年上であるのは事実だが、男性が使うにしてはいささか可愛い。
「ありがとうございます」
「そんな顔をするなよ」
「はい……」
明るい表情はしていない。分かっている。降谷はふわりと工藤さんに頭を撫でられた。降谷が知っている男の手より細くしなやかで小さい気がした。
「じゃあな。もう夜、遅いから真っすぐ帰れよ」
そう言って工藤さんは伝票を持った。
「あの……! 僕が払います」
「いや、気にするな。後でバイトして返してくれればよいさ」
そう言って笑った工藤さんの後を追って降谷もカラオケボックスを出た。
◇ ◇ ◇
工藤新一は東都大学を卒業後、探偵事務所を構えていた。子供の頃の夢を一つ叶えたことになる。といっても、これは出発地点に過ぎない。高校生探偵として取り上げられた高校時代、便利屋に近い形で依頼を受けていた大学時代とは違い、生業として探偵をする。
事務所を構えて、一日、二日。
ポコンというメールの受信音とともに知り合いからの依頼が届く。相手はFBIだったり、公安警察だったり、SISだったりする。どれも工藤が高校、大学時代に出来た伝手からのもので、簡単な意見出しの依頼から様々だ。
どれも工藤の知的好奇心を満たすものではある。生計も十分に建てられている。
事務所用にと作った口座にはきちんとお金も振り込まれて行っていて生活には困らない。
ただ……。工藤は事務所のドアを見る。メールでの依頼はたくさんあるが、今現在、事務所のドアを叩いて依頼をしてくれる。という人は少ない。うーんと工藤は考える。
探偵事務所にとかまえたのは東都の雑居ビルの一室だ。ビラも何も配ってはいない。ウェブページもフェンスブックなどのSNSを通して、宣伝もしていない。気をつけて見ないと誰もこの事務所まで行きつかないだろう。
マーケティング。という程のことではないが、努力が足りないのは確かだ。
とりあえずは。と学生の頃以来、プレゼンテーションソフトウェアを立ち上げる。
工藤探偵事務所、一つの相談あたりの金額等、得意な依頼内容(殺人犯の特定、暗号解読等)利用する人が知りたいであろう内容を書き、ちらしの形にしていく。
うむ。中々の出来ではないだろうか。工藤は頷いた。
ここで、幼馴染やFBIの赤井、公安の風見が居れば止めただろう。赤井であれば、デスクに積み上げられた仕事を幾つか見繕い工藤に依頼しただろうし、風見であれば殺人犯を探したり、暗号を解読するのに一般的な需要はないと教えてくれただろう。
工藤新一は父がミステリー作家。母が元大女優。頭脳、容姿共にとびぬけて良かったが、少し、いや大分世間知らずだった。
といっても、工藤が探偵事務所を構えたことは少しずつ、この町に浸透していった。
そのヘンテコなビラに興味を示した近所の商店街のお節介な小会長が様子を見に来たのだ。
始まりは商店街のシャッターに書かれている落書き犯を特定して欲しいということだった。
工藤にとっては楽な依頼だった。毎週水曜日の深夜。という法則性も分かっていた。だから、その日までに商店街の店舗の二階に幾つか古いスマートフォンを設置させてもらった。白SIMが入っているタイプだ。ただ、動画を撮影するためだけに設置した。そのスマートフォンにはアプリを仕込んだ。
一定以上の画像変化が起きればその時間だけ動画を撮影して、溜めこむ。また、二十秒以上、画像変化が起きれば工藤に連絡が入るようにしたのだ。
そういった観察を一週間、二週間、三週間続けた。一週目、二週目は野良猫に反応したけれど、三週目になってやっと犯人が落書きするところを動画に撮影できた。工藤も丁度赤井と連絡を取っていた時間だったから通知にも気づいた。そのまま、小会長、商店街の息子世代を何人か連れて現場を抑えられた。そこからだ。
探偵事務所にちらほらと依頼が入るようになった。探偵事務所らしく迷い猫の探し、浮気調査もした。初めての依頼で前者はともかく、後者は正直どうして良いかわからなかった。知り合いの探偵……。毛利に連絡を取り、手探りながら依頼完了まで持って行けた。
そうして、メールで貰う依頼だけをこなす探偵から地域の人からもチラホラと依頼をもらえる探偵になった。
そうして、春から夏。季節は夏になった。
トントントンと外階段を走る音を聞いて、お客さんかもしれない。そう思い、工藤は背筋を伸ばした。
そうして、足音は外階段から工藤が事務所を構える前で止まった。
「工藤新一さん! お願いがあります!」
ドンという音と共に開いたドア。その先には学生服を着た子供が立っていた。身長は百八十を超えるか。長身の分類されている工藤よりも高いだろう。だが、若いからか。身体はひょろりと高く、肉がつくのが追い付いていない印象を受ける。
その学生の話を聞いているとこうだった。幼馴染と昨日の夜から連絡が取れないのだそうだ。
その幼馴染がこの学生と同級生だとしよう。だとすれば十六歳から十八歳頃だろうか。義務教育は終えている。自分の頭で考えて家を出ていくこともできる。事実、この年齢で失踪した子供の中には親元から逃げるようにして出ていく人間も居るぐらいだ。
さて、どうしようか。と工藤は考えた。
目の前の学生は心配なのだろう。探して探せないこともないだろうけれど……。行方不明になっている本人が探して欲しいと思っているのか……。じっと目の前の子供を見る。
「っで? 俺のところに来た理由は?」
「とても……。腕の良い探偵と聞きました」
何故、工藤のところに来たのか。そう聞いたのだが、成程。最近、ここでも仕事をしているからだろう。きちんと口コミという形で反映しているらしい。
「それは探偵冥利に尽きるな」
「友人を探しだせるのではないか……と。依頼料は……」
嬉しいことだ。と頷き返せば、ふとその子供は依頼料について思い当たったらしい。
「すいません。お金……の工面ができません。やはり、この依頼はなかったことに……」
確かに学生の用意できる金額ではないだろう。工藤は今の自分の貯金残高を考えた。特に生活するうえで困ってはいない。それより、目の前で今にも死にそうな顔をしている子供の方が気になる。
ふと工藤は赤井を思い出した。生意気な高校生だった工藤を促してくれた。普通の格好では目立つからと右前のジャケット、スラックス。少し硬質な靴を奨めてくれたのも赤井さんだ。尊敬すべき人生の先輩だ。あの人のように、この若い子供にしてあげることがあるのではないだろうか。
「すいません。お金……の工面ができません。やはり、この依頼はなかったことに……」
そう思ったから、工藤はこの子供を止めた。
「まあまあ、ちょっと待て。……で? お前の名前は?」
「すいません。降谷零です」
「そうか。正直、探偵業は俺の生業だから報酬なしで。というわけにはいかない」
「そう……。ですよね」
目に見えて肩を落とした子供に可哀そうな言い回しをしてしまったと少し反省する。いくら工藤が今の生活に困らない状況だからといって報酬なしの依頼はよくないだろう。ならばと考える。最近、事務所に直接来てくれる人間の依頼を一人で受けるのは中々大変だと思っていたところだ。目の前の子供はここまで走ってきたことから中々体力があるだろうし。着ている制服はここら辺では頭の良い学校で通っている。
「だから、代替案だけど……」
「はい」
「俺の事務所は開けたばかりだ。一人では回って無い。バイトが欲しい」
「バイト……」
今、現金げないならば、その分、働いてもらえばいい。そうして、工藤は未来の労働力として目の前の子供……降谷零の依頼を受けることにしたのだ。
工藤はそれから降谷の話を聞きながら降谷の幼馴染の家……諸伏の家に行った。
応対してくれた諸伏の養母という女性は夏だというのに長袖を着ていて、室内はひんやりとしていた。握手をしたときに盗聴器をつけて置いた。近くのWi-Fiを拾って、ネットワーク上にあいてあるサーバへ音声を転送して情報の収集も並行してできる。
降谷の話を聞く限り、動物も飼っていないし、暑がりな人間も居ない。諸伏の家が北向きであるとか、室温が涼しくなる理由もない。握手した時に一瞬動きを止めたのも気になる。
それに、降谷から聞いた引っ越しの時期も気になった。
七年前。長野。丁度、工藤が十六歳の時か。夫婦惨殺事件が起き、全国の紙面に載っていたことを思い出した。子供は二人居て、助かった……。と聞いているが……、もしかして……。と気になってしまう。こういった引っかかりは大抵当たっていることが多い。とすると……。工藤は降谷から諸伏の携帯の電話番号を聞き、相棒に送った。
優秀な相棒であれば電話番号から諸伏の携帯番号の特定、利用しているアプリからの最終のGPS情報の取得も可能だろう。
いつも通りといっても相棒からしたらたまったものではないだろうけれどメッセージアプリを立ち上げて連絡を取り始める。
― すまねえ。宮野
― 何? 今日はまともな時間じゃない
今、日本は十八時。向こうは朝の六時か。比較的まともではある。
― ちょっと調べて欲しいことがあるのだけど……
― 報酬次第よ
― わーってるって。
ノーとは返ってこないなら引き受けてもらえる。そのまま、宮野に対して電話番号を送った。
結果は直ぐに返ってきた。
― あら、こんな簡単なものでも良いのかしら?
― ああ……。やはりか
返ってきた情報を見る限り、昨日の夜中には家に居ることになっている。そこから、電源が切れたのか、プツリとGPS情報が途切れているが、これならば家の中に居るだろう。
― 悪いのだけど、この携帯の持ち主は諸伏景光というのだけど引き取り先の養父母の七年前までの銀行からの借り入れ状況とかそういうのって追ってもらえないか
― はいはい
追加の依頼も宮野は数時間と経たずに答えてくれた。ビンゴだ。
― なーんか嫌な感じね
― 本当だな。この金の流れだけを見れば嫌な想像しかしない
― 言うだろうと思って最近の方も見て見たけど……。この養父、経営の才能がないわね
― ……。だなあ
― あなたも大概だけどね。探偵さん
― 否定はしねえ。この事務所を開設してすぐは事務所を持つ意味のなさを感じてたからな
― でしょうね。ちょっと気の利く助手を雇うべきだわ
― 宮野が来てくれれば助かるけど、宮野は本職があるからな
― もちろんよ。幼馴染の毛利さんは駄目なの?
― まあ、就職してしまっているからな
― まあねえ。っと、そろそろ時間だわ。依頼料だけどこの間の件と一部相殺するわよ
― 問題ない。また細々と俺を使ってくれ
― はいはい。じゃあね
そうして宮野とのメッセージのやり取りを終える。
メッセージ中も並行して見ていた資料によると諸伏景光の養父母だが、養父は実夫の兄。実家を継がずに起業するお金だけ出してもらい、東都で商売をしていたようだが、自転車操業で七年前についに銀行の融資が受けられなくなったようだ。ただ、犯行当日東都に居たことから長野での犯行は不可能とされていた。養母も同様だ。だから捜査からは外されていたのだろうけれど……。本人がしなくても弟を殺すことはできるだろう。世の中、人を殺すことを生業にしている人間もいる。
工藤はパソコンを立ち上げた。こういう時こそ、人脈を使え。だ。
―――――――――――――――――――――――
To:風見裕也<Yuya.Kazami@*.npa.go.jp>;
Title:連絡を貰えませんか(工藤新一)
………………………………………………………
警察庁 警備局 警備企画課 風見警部補
御無沙汰しております。工藤探偵事務所の工藤新一です。
少し、気になることがありまして、お手数ですが折り返し連絡をいただけないでしょうか
…………………………………………
工藤新一(Kudo Shinichi)
工藤探偵事務所
〒100-8974 東都****15丁目2
Email ShinichiKudo@DC.**.co.jp>
Tell +81-3-3*-* Fax +81-3-3*-*
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そうしてメールを送ってすぐ、風見さんから電話が来た。時刻は二十一時だ。
『どうした? 工藤くん』
「早いですね」
『君は歩く事件収集機だからね』
「人聞きの悪い……。ちょっと気になることがあって……、資料を読ませて欲しいなと」
『迎えは出せないが大丈夫か』
「子供ではないですから大丈夫ですよ」
『わかった。私の名前を言えば入れるようにしとおく』
「ありがとうございます」
風見との連絡を取り終え、了解も降りたから……と警視庁に移動した。そこからは忙しいらしい。対して今からしたいことについて、何かしら聞かれることもなく、工藤は捜査資料を漁れた。
漁ったのは七年前の諸伏夫妻惨殺に関する捜査資料だ。犯人の利き手、手口を脳内でファイリングした後、ここ最近あった事件について思い出す。東都でも数件似たような……と形容するに値するものがあったはずだ。
その捜査資料をいくつか拾い上げ、風見に見せた。ついでに犯人だろう。十年前に服役経験のある人間をピックアップして渡した。
「……」
「仕事を増やしてすいません」
「いや、未来の仕事が減ったと思うべきだ。協力要請を出してもいないのに協力感謝する」
「あっ、でゴメン。一つお願いがあるのだけど……」
「何だ?」
「七年前のにも手口が同じなのがあってさ……。そこの関係者らしき人間が一人行方不明でして……」
「はあ……。それで?」
「ここに住んでいる行方不明者の養父母に事情聴取してくれねえ?」
「証拠はあるか……?」
「明日の朝までに上げます」
「分かった」
溜息を一つはいた後、風見は手続きのために動き始めてくれた。よれたスーツから見るに連勤中だろう。また一つ、面倒事を増やしてしまって申し訳ないやら。なんやらだ。
とりあえず、また事件の資料を引っ張り出して工藤は証拠探しのために動き始めた。ついでに実行犯にあたる男の携帯電話の利用履歴、携帯電話の基地局の経由履歴などを追加依頼で宮野にお願いして漁ってもらった。
その間、盗聴データを漁ってみたのだが……。ビンゴだ。夜に帰宅したらしい。養父との会話もとれている。やはり、工藤が特定した男に殺人を依頼したようだ。
どうやら。殺人の実行犯である男はお金に困っていたらしい。七年前に実弟の殺しを依頼を受けたことを周囲にバラすと養父母を脅していたらしい。その電話の様子を昨日、帰宅した諸伏景光に聞かれた。咄嗟に詰め寄った景光くんは養父に殴られ、今は手足を縛られて何処かの部屋に入れられているようだ。まだ家の中には居るようだけれど……。彼の命も安全とは言えないだろう。
夜中の四時。仮眠が終わって戻ってきた風見に工藤は纏めて置いた資料を見せた。
まあ、ここまであるなら大丈夫。との風見の確認を受け、早朝工藤は諸伏の自宅前に来ていた。
昨日会った養母は工藤の顔を見て驚いてはいたけれど、その次に風見が出した警察手帳に事を悟ったらしい。顔がこわばっていた。そこから先は風見の領分だ。工藤は風見が淡々と養父母を連れて行くのを横目に見ていた。
「工藤さん……?」
後ろから、昨日会った子供の声が聞こえて振り返った。
◇ ◇ ◇
降谷は家に真っすぐ家に帰った。何となく工藤さんにお願いしておけば大丈夫な気がしたからだ。昨日、心配で眠りが浅かったからか。ふと眠気を自覚して布団に倒れ込むようにして寝入った。
早朝。降谷は早く起き、シャワーや朝食を済ませて学校までの道のりを歩く。目的は学校ではない。学校までの道にある景光の家の様子を見てから行くつもりだったからだ。
交差点を曲がってすぐ、降谷の視線の先に工藤さんが居た。他にもスーツを着た男が数人いる。
スーツを着た男は黒革の手帳を景光の養母に見せて、何かを話した。
後ろに控えていた部下らしき人間が養母と家の中に居たのだろう。養父も一緒に何処かへ連れて行った。残ったのは最初に警察手帳を見せた男と工藤さんだけだ。
「工藤さん……?」
「降谷くん」
そこまで来て、やっと降谷は工藤の横まで歩いて行き、声をかけられた。
「これは……?」
「ああ……。これから降谷くんの幼馴染を探すつもりだったのだけど……。降谷くん。お願いがあるのだけど大丈夫?」
「お願い?」
「そうだ。おそらく幼馴染はこの家の中に居るだろうから探すのだけど手伝ってもらえるか」
「はい……」
降谷は何が起こっているか分からなかった。けれど、にっと何てことないように笑う工藤を見ていれば、幼馴染が見つかる気がした。
工藤さんのお願いの通り、家の中……。遊びに来た時に案内された景光の部屋、リビング……と探していく。
ガタリ。一つの部屋の前で不自然な音に気付いた。
ギイっと開いたドア。猿轡を噛まされて横たわる景光を発見出来た。景光は制服を着たまま、いくらかの暴行を受けたのだろう。身体には痣がいくつもあった。食事や水分満足に摂らせてもらっていなかったらしい。景光は上手く起き上がったりすることが出来なかった。
一緒に来ていた警察の男が景光を抱き上げて、病院諸々の手配をしてくれた。
それから、大人たちの中で話がついたらしい。景光は一週間後、長野へ引っ越ししたと学校の先生から聞いた。
「工藤さん」
「何だ? 降谷」
そうして今だ。降谷は依頼を受けてくれた探偵……工藤新一その人に依頼料を支払うために工藤探偵事務所に来ている。学校帰り、人参、玉ねぎ、ジャガイモ、肉の入ったエコバックを持って工藤探偵事務所を開けた。
そこにはソファに座り、だらしなく寝ている工藤新一が居た。
「皺になります!」
「大丈夫だってー」
ふわあと欠伸と伸びをした工藤さんがソファから起き上がった。
あれだけ、凄い大人だと思っていた工藤さんは実は降谷の五歳年上なだけであること。普段はどちらかといえばだらしない生活を送っていることがわかった。後、生活力がないことも。この事務所に併設されている給湯室があまりにも綺麗だから使っているのか。と聞いたが満足に使っていないから使っていないと。理屈は通っているが何ともおかしい回答を貰った。それならとお茶を入れたり、簡単な食事の世話をしてみたのだが……。これが中々好評だった。食費と言い、工藤さんが俺にカードを渡そうとしたので、慌てて止め、毎週一万円を渡されるようになった。降谷の分も入れておけという言葉には甘えつつ、それでも多かったので、毎週やりくりしてフライパンを買ったり、鍋を買ったりと小物を充実させている。それさえも現金で支給され返されてしまうので、最近は買う食材を豪華に……。と言っても食材さえも最近、商店街にある八百屋であったり、精肉屋、魚屋が降谷のことを工藤探偵事務所のバイターと認識しているから良いものを安く融通してくれる。……使い切らない。とりあえず、工藤がコーヒーを好きだということを知ったので溜めて置いて少し良いコーヒーミルとコーヒードリッパーとサーバーを買うつもりだ。後は……。オーブン機能付きの電子レンジを買ってと脳の中の家計帳には未来支出としてあげてある。
給湯室に入った降谷の横に工藤が立つ。降谷がトントンと食材を切るのを上機嫌で見ている。
「それで? 降谷、今日の夕飯は?」
「カレーです」
何をしているのだろうかと工藤さんを横目で見ていたが、どうやら降谷が調理するのを見に来たらしい。
「良いな。うまそう」
「失敗はしないですから」
「そうなのかあ。あー。降谷は良いお嫁さんになれるぞー」
よしよしと工藤さんが降谷の頭を撫でる。相変わらず、工藤さんの手は指が細く、降谷より小さい。
「僕、男です!」
「たしかに。じゃあ、良い夫になれるぞー」
よしよしとさらに撫でられた。さらに何かを言う気にもならない。脱力しつつ、切り終えた食材を火にかけて調理をし始めた。
それにしても、と降谷は考える。降谷はあれから、ほぼ毎日来ているが依頼者に会ったのはほんの数回だった。
「この事務所大丈夫ですか」
「ん?」
「依頼、少ないですし……。たまに来ている依頼も格安で受けてますし」
「あー。その辺は大丈夫。子供が変な気を使うなってー」
「工藤さんと五歳しか違いませんから」
「そうだっけ?」
「そうです。僕は十八歳ですから」
「えっ? って、降谷、受験勉強は?」
「帰ったらしてます」
「なるほど……? まあ、依頼料は一ヶ月ぐらいで大分貰ってるし、大学に入ってからでもいいよ。受験に専念するか?」
「大丈夫です。志望校はA判定もらってますから」
それに……。降谷はほんの一週間前の出来事を思い出す。工藤に一度、米を洗ってもらった時に全て排水溝の奥へ流した。工藤さんは料理ができない。降谷が埃を払う横で興味津々に見ていた工藤に掃除機をかけさせれば自分の服を吸い込んでいた。この人は掃除もできない。そう、幼馴染の件から探偵としての能力高いことはわかるのだが、工藤には生活能力がまったくないのだ。
放っておくとこの人は死ぬ。
降谷はそう思ったからこうしてほぼ毎日この事務所に来ているのだ。
此処に来た当初はあそこまで迅速に物事を解決に持っていった工藤への憧れの感情が強かったが、一週間、二週間と経てば、親に内緒で犬猫を公園で飼う子供の気持ちになってきた。
「うーん。って言ってもすることないだろうし。親御さんは良いのか?」
「僕の親はほぼ、家に帰ってきませんから……」
「そうか……。夜は遅くても大丈夫か」
「大丈夫です」
「そうか。なら、ご飯作ったらその後は勉強していけよ」
「は……?」
何処の世界にバイト中の人間に勉強をさせる雇い主がいるのだ。いや、目の前にいるのだが。
「んで、契約は三カ月いっぱいな。それ以降だと受験も本格化するだろうし」
「いや、僕、A判定出てるって言いましたよね?」
信用されてないのかと思い、学校用の鞄から判定表を見せた。
「おー。東都大学か。いやでも、さすがにな」
「貴方が持ち掛けた契約です」
じっと工藤さんの顔を見て言う。
「いや、まあそうだけど……」
「口頭でも契約は成り立ちますよね」
「成り立つけど……。何で降谷がそれをいうのだか……」
はあと工藤さんはため息を吐いた。ぐつぐつと横で良い具合に煮込まれている鍋にルーと追加の香辛料を入れた。
「ただより高いものはないですよね」
「まあ。分かった……。来ても良いけど勉強しろよ」
工藤さんが折れてくれた。
「だから……」
「はいはい。雇い主の言うことは聞いとけ。このペースだと三月いっぱいで十分だからな」
そういう勘定は嘘をつかずに教えてくれる。だが……と降谷は不安になる。この人、三月いっぱいで降谷がやめて生きていけるのだろうか。それにやはり依頼の少なさも気になる。
事務所に居る時、工藤はビラを配りに行きもせずに淡々とパソコンに向かい合っているし……。大丈夫だろうか。
まあ、とりあえず四月以降もこの人の世話を焼く人が現れなければ降谷が来て料理ぐらい作れば良いし、掃除だってすればいいだろう。
はあと溜息を一つ吐く。良い具合に出来たカレーに蓋をする。まだ夕飯には少し早い時間だ。セットした炊飯器も炊き上がるまで少しある。
横でカレーの蓋を開けて味見をしようと食器棚からスプーンを持ってきた工藤を捕まえ、降谷は横の部屋に戻った。
「今日のバイトは何をすればいいですか?」
「いや、ないよ」
「……大丈夫ですか」
「いや、降谷にお願いしたファイリングとかも終わってるし。掃除も夕飯まで完璧だし……」
することがないことは分かった。本当に大丈夫だろうか。
「することがないのは分かりました」
「とりあえず、俺と一緒に夕飯を食べるぐらいだな。ってことで、カレー」
「後、三十分待ってください」
「三十分……」
「工藤さん……。昨日の夕飯から何か食べましたか?」
何と気なしに聞いてみれば、すいと視線をそらされた。……この人、今日も食べてないのか
「あ・れ・ほ・ど。食べてくださいって言いましたよね!?」
「聞きました……」
「パンも買い置きしてありますよね」
ふいと顔をそらされた。
「だって美味しくない」
「だってじゃないです」
この人、本当に五歳も年上か。綺麗と形容できる顔が、拗ねたような表情を作れば可愛いと思ってしまう。年上の男だと言うのに変な起こしそうになる。
変な感情を心の中で見つけて、降谷はぐっと言葉を飲み込んだ。
「降谷のごはんが美味しいから普通のパンじゃ美味しくないんだって…」
しかも凄く嬉しくなること言って来るし……。降谷はぐっとそこで黙るしかなかった。
それから、受験を経て東都大学に進学した。工藤さんは高校が終わればバイトをしに来なくていいと言ったけれど、あまりの生活能力のなさにあきれて、ご飯や掃除をしに来ていれば何時の間にか毎月バイト料を渡されるようになった。……その拘束時間の大学生に渡すには破格だったのでとりあえず半分だけ受け取って返した。のだけどそれでも多かったから自分から仕事を探してはこなすようにしていた。そんな生活を四年。FBIの赤井といういけ好かない男のことも知ったし、SISの情報捜査員、工藤に相棒と呼ばれる宮野という女性のことも知った。……そうして工藤が女だということもだ。これは高校時代、あまりに自分に頓着がない工藤さんを心配して赤井という男が助言をしたらしい。だから、普段は男物のスーツを着て、髪はウイッグをつけて短くしているらしい。一度、工藤がパーティー会場へ潜入するだとかいってホテルに行く時に女装……。いや違う。本来の性別に合わせてドレスを着てメイクをしている姿を見たのだが……。誠に。誠に不本意ながら、赤井が工藤に仕事中は基本的に男装するようにと助言したことを心の中で褒めた。
それからの大学生活の四年間をずっと降谷は工藤の横で居たわけだけど……。
料理はできない。掃除はできない。推理にしか興味がなくて……。放っておけない。それに降谷の作るご飯は美味しそうに食べてくれて……。降谷が工藤に恋心を持つのはそうおかしなことではない。
告白するには降谷はまだ自立した生計を持っていないからと二の足を踏んでいた。
それも今日までだ。降谷は支給された制服、手帳を持って、工藤探偵事務所の戸を叩いた。
「おー? 入って来いよ」
「工藤さん」
「おお。おめでとう。警察になったんだな。配属先も聞いたよ。流石」
そう言っていつも通り、工藤さんは降谷を出迎えて頭を撫でた。降谷は工藤の手首を手首を掴む。
「ありがとうございます」
「卒業祝いと就職祝い何が良い?」
工藤が上機嫌で降谷に聞いてくる。
「僕と結婚してください」
「はあ……?」
何段か飛ばしたお願いだっていうのは知っている。だが、降谷は二十三歳、工藤は二十八歳だ。付き合ってというプロセスは省きたい。工藤が降谷を好いているか。と聞かれれば多分恋愛的な意味合いでは見て貰っていない。だが、降谷と知り合って五年だ。その間も探偵としての工藤新一に付き合いを求める人間は何人も見てきたが、どれも躱していた……というか。気づいてなかった。おそらく工藤新一は恋愛に興味がない人種だ。なら、ひとまず好きになってもらうとかそういうのは後で良い。とりあえずその隣を確保できればいいのだ。
「いやいや、何でまた」
「工藤さんが好きだからです」
「いや、降谷はもてるだろうし、俺じゃなくてさあ」
「工藤さん。僕が大学を卒業した時。就職が決まった時に祝いは何でもいいって言いましたよね?」
「言ったけどさ……」
「反故するのですか」
「いや、そういう話じゃないだろう?」
「誰か好きな人が居るのですか?」
居ないのは知っている。むしろ居たり、有力な候補が出来そうになれば隣に居て積極的に遠ざけてきた。
「いないけど」
「けど……?」
「俺、恋愛に興味ないしなあ」
「知ってます。料理も家事も出来ないことも」
「俺、結婚に向いてないぞ?」
巻き込まれた事件諸々を思い出す。まあ、確かにあれだけのことに対応できる人間はいない。僕もその度にボクシングを始め、走り込み、対応できるように努力をしてきた。頭脳に関しては目の前に良い先生が居る。実践九割で色々と教えてもらったからそれなりについていける。おかげで正直、警察学校の勉強は楽だと思えたぐらいだ。
「知ってます。でも、料理も家事も僕が出来ます」
「まあ確かに……?」
とりあえず、自信を持って気に入ってもらえているだろう部分を強調して売り込む。工藤さんも頷いている。
「なので、結婚してください」
「……なんか、酷い青田買いをした気分だ……」
良い先物買いだと思ってもらえればそれはそれで良い。これでも国家公務員一種を取得し、警察になるにあたってもキャリア組として採用されている。スペックとしてそう悪くないはずだ。
「それはされる僕なら言っても良いでしょうけど。僕ではだめですか」
「駄目ってことはないけどさあ」
あー。とかうーんとか唸っている工藤さんの様子を見て、後、一押しだと察する。駄目でないなら、この人は興味のないこと……結婚に関してうんと首を振ってくれる可能性が高い。
「駄目だったら、途中でやめてもいいんですし」
「確かに……?」
「オッケーですね。じゃあ、とりあえず、ここに署名してください」
それを言質として解釈して、僕は緑色の紙を机の上に置いた。
<終わり>
(仮)暴走スブリマツィオーネ
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17:36
ななし@ca50ba
こんな時間まで作品を作ってらっしゃるんですね😭💗💗💗 物語を作ってる所を拝見することがないので、配信見れて嬉しいです♡ʾʾ
22:19
すずえ
メッセージの返し方がわからず、すいませんー。むしろ逆転生活している感じです(もともと、夜人間なもので……)
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向き
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年齢操作 降新♀
初公開日: 2020年05月05日
最終更新日: 2020年05月05日
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ペーパー代わりのやつをまったりと書いています。