アピール大会
「みゃんまっ!!」
マガツはその小さな体で部屋中を駆け回って、ついにはクッションの上で寝ているイザナギに突撃した。悠々と寝こけていたイザナギは衝突すんでのところで、耳をピクリと動かしてするりと立ち上がる。そのままマガツの首にがぶりと噛み付いた。晃汰くん曰く、猫はしつけの時に子猫の首を噛む、らしい。この世界の新入りであるマガツに先輩のイザナギが教育している、ということだ。あまり手を出さないほうがいいらしいけど、やはり見慣れない。
「ミーッ!!」
マガツが鳴き声をあげたと思えば、イザナギは口からマガツを離して噛んだ後をぺろぺろと舐め始めた。さっきの鳴き声は降参! って意味だったのだろうか。ずりずりと力一杯舐めるイザナギにされるがままのマガツは目を細めてうっとりとしている。
「仲良くなったみたいで、良かったですよね」
「ほんと」
読書にふけってた晃汰くんも一連の動きを見ていたらしい。しんみりと微笑む彼に僕は相槌を繰り返した。
「二人とも、人懐っこい性格なので心配はしてなかったんですけどね」
「二人じゃなくて二匹じゃない?」
「……細かい」
揚げ足取られたことが不服らしく、晃汰くんは唇を尖らせた。かわいいな。キスしたくなる……いや、しないけど。
「噛んだ後に舐めるのさ、君に似てるよねえ」
「俺に?」
彼の鋭い切れ目が丸くなる。
「だって君も僕のこと噛むじゃない? そしてその後、噛んだとこばかりキスをする」
忘れたなんて言わせないよ、と笑うと彼はすぐに耳まで赤くして口をつぐんだ。あーあー面白い。
「い……嫌ですか?」
「嫌とは言ってないよ。そんなんだったらシてる時に言うから」
ベットの上で僕は彼の下にいるけども、対等でいたいと思うから嫌なことはその場で言う。言うことなんて滅多にないけど。
「ぷあんっ!!」
スウェットを引っ張られている気がして、下の方を見るとマガツが僕の足をよじよじと登っていた。さっき駆け回ってたと思えば次は元気に木登りだ。忙しい子。
「マガツくん大冒険」
「がんばれ〜」
晃汰くんは手を叩いて応援している。ふらっふらですぐにでも落っこちてしまいそうだけど、一歩一歩確実に進んでいく。ちいさな手が僕の膝にかかって、まあるい頭がひょっこりと出てきた。
「おお、ゴール!」
「この子天才ですね!」
晃汰くんは大喜びしてマガツの頰をわしわしと撫でた。なんだか、親バカなお父さんみたい。
「にゃっ」
二人でマガツを褒めていると、イザナギが気づいたのか僕の膝上まで飛んで登ってきた。ととん、と僕の膝の上に乗ったと思ったら僕の肩にまで登る。
「ぐえっ」
生後1ヶ月のマガツならまだしも、立派な成猫のイザナギだ。僕の肩が悲鳴をあげる。イザナギの顔はここから見えないけど、たぶんマガツに対して俺はここまでできるぞ、としたり顔だろう。
「この家には負けず嫌いとか、ヤキモチ焼きが多い……」
「足立さんとか?」
「ぶっぶー」
「照れなくても」
「照れてなーい」
おわり
びっくりした
終わります〜
見てくださったかた、ありがとうございました。