部屋の中で眠る彼を起こさぬよう静かに襖を引けば、僅かに開いた隙間から夜明けの白い光が部屋の中に差し込んだ。細い光に照らされて浮かびあがる肌は血の気を失って青白く、生気のくすんだその姿はまるで大理石に浮彫にされた生々しいまでの彫像のようにすら見えた。
手入れ部屋の前にかけられた時計は傷の修復にはまだ時間がかかることを示している。傷は徐々に塞がっていってはいるのだろうが、深い傷はまだ白い包帯に朱殷色を滲ませていた。かすかな物音に気付くこともなく部屋の中央に敷かれた布団に横たわっていた彼は藤色の瞳を覆い隠して、呼吸の音さえ閑かに、ひたすらに黙りこくるばかりだ。
何度経験しても慣れない。刀剣男士として戦さ場立ち、敵を屠るために己たる刀を振るう限り、傷を負うのは避けられぬことだ。命の奪い合いをするというのは、己の命が奪われる可能性もあるということであり、時に、刺し違えてでも敵の首を刈り取らねばと覚悟をすることもある。多少の傷を負うのは当然のことで、しかし、彼には傷付いて欲しくはないなどというのがどれほどの我儘かというのも、分かっている。
それでも、
不安になって鼻先に手の平をかざして、それで初めて、ほう、と息をつく。知ってようやく、安堵できるのだ。