しまったな。赤井はぼうっと窓の外を見ながら呟いた。
もうあと10分ほどで始まる午後からの勤務だが、正直言って帰りたい。がらにもなく昼を食べ過ぎてしまった。
「………」
眉間に皺を寄せながら雲1つない空を睨み付けてみるが、帰りたい気持ちは一向に消えないし、なんなら、この青空の向こうには愛する我が家があると思うと余計に帰りたい。
「はぁ」
「…いかにもやるきがありません、みたいな声出さないでくれます?」
実はさっきから隣にいた降谷が、不快そうな声を上げて非難してきたが、そもそも自分の腹がいっぱいなのはこの男のせいだ。
あれが旨い、もっと食え、これも食え、不健康だ、いい加減にしろもっと食え。
そう言って無理やり色々押し付けてきたのはこの男なのだ。つまり働きたくないのもこの男のせいだ。
「はぁ…」
面倒だ。
声に出してないつもりが出ていたのか、隣からの視線がキツくなった。
確かに、午後から俺がやる気を出さないことは降谷君にとっては気に食わないことだろう。真面目な彼のことだ。怠慢だなんだと言って俺の態度にずっとカリカリしているに違いない。
だが、さっきからずっと言っているが、この男が俺に色々食わすから今の事態が巻き起こっている。もっと言えば、彼が差し出すものならさぞかし旨いのだろうという、俺な渇れに対する信頼感がこの事態を巻き起こしている。さらに言うなら、この男が俺にくれたものを残さず食べたいと、この男が俺のためにしてくれたことを無下にしたくないと言う健気な…俺の健気な気持ちがこの事態を巻き起こしたのだ。
「いや、俺は君を結構愛しているんだな、と思ってな」
「………………………は?」
さあ、10分たった。いくら腹が一杯でも、いくらやる気がなくとも、仕事が終わらないと帰るに帰れない。
のっそりと歩き出した俺のあとを追ってくるとばかり思っていた降谷君が何故かその場から動かない。
「…まぁ、腹が一杯でやる気がでない気持ちはわかるが、ボチボチやろう」
「………はぁ!?」
さぁ、昼休みが終わる。ああ、面倒だなぁ。
おしまい