透ける光を表したような、もしくは朝の陽射しそのもののような。
金糸を思わすその髪に、丁寧に櫛を通していく。
比較すれば癖は強いものの、その髪の美しさは彼女の父のそれをしっかりと受け継いでいる。
「痛くない?」と確認すれば、「平気」と端的に返ってくる。
モードレッドの髪を整えるのは、時おり行う、趣味のようなもの。
何しろ彼女は自分の髪の扱いが、すごく単純に言って雑なのだ。
『マスターお前髪伸びたな!モフモフしてるぞ、モフモフ』
快活に笑いながらわしわしと俺の頭を撫でまわす。
我ながら自分の髪はそこそこの癖っ毛であると自覚していて、髪が伸びてくるとボリュームが目立ってくる。
これはこれで安心してしまうのだが、なんとも少し悔しい気持ちもある。
『さすがにそろそろまた切らないとなあ、コレ』
これはこれでいいと思うけどな、と俺の髪をいじり回しながらモードレッドは言う。
きっとやっている方は楽しいんだろうなと思いつつ、放置するのもなあ、と思い直す。
『そういや、髪は誰に切ってもらってるんだ?』
それはある種当然の疑問。
なんだかんだでカルデアでは年単位で過ごしているし、その間髪を放置してきたワケではない。
そしてもちろん、市井に降りて店に行くわけにもいかない。というか不可能だ。
したがってカルデア内で済ませることになる。
こんな時に頼れる人物とは一体誰か。
そう。
『ダ・ヴィンチちゃんだけど』
『アイツはホントになんでも出来るのな……』
万能の天才である。
『それより、モーさんこそ誰に整えてもらってるのさ』
モードレッドの髪は父親譲りの金髪だが、それよりは本人に似たのか癖が強い。
しかし、触ってみれば間違いなく上質な髪質。髪の量が増えたとして、俺みたいにモフモフするのではなくフワフワとした感触になるのではないかと感じさせる。
どんなことをすればこんな髪質が維持できるのか──
『いや、特に何もやってねえぞ』
続いたやってるやつはやってるみたいだけどな、なんて言葉は耳から耳へ素通りした。
サーヴァントだから必要ないのか。なるほど。でも整えているサーヴァントは整えている。それは俺も知ってる。
逡巡した思い。その中で残ったのは一つだった。
『もったいない………!!』
それ以来、しばらくは俺が頼み込んでモードレッドの髪を整えていた。
『髪は女の命』、なんてことはいつ誰に言われたんだったか。
ともかく、何人かのサーヴァントに教えてもらったことを試し、相性のあっていそうなことは継続するようにした。
毎日ではなく定期的なことだが、今では逆に頼まれることもある。
「会ったばかりの頃は髪触ったら怒られたよね」
「当ッたり前だろ。親しくないヤツに触られて心地いいもんじゃねぇしな」
しかもお前は引っ張るもんだったし、と付け加えられた正論に、そうだった、と苦笑いを浮かべる。
その時である。
「あっ」
パキッ、と。
軽い音を鳴らした櫛からは、歯が1本折れて失われていた。
どした?と聞いてくるモードレッドに、役目を終えてしまった櫛を見せる。
「あー?使えるもんじゃねえのかよこれくらい」
「そういうワケにもいかないでしょ…」
困り顔で再び苦笑する。
自分の髪の扱いには、本当に興味を持っていないのだ。
・・・いや、任されているのかな、この場合。
「まあお前がそういうなら仕方ないが……どうするんだ、替え?
誰かに貰うか、それとも購買で買うか?売ってるか知らねーけど」
「……いや」
モードレッドの提案に。
「折角だしちゃんとしたの買おう。ダ・ヴィンチちゃんに相談して」
そんな提案を返した。
「ふむふむ、なるほどね」
ダ・ヴィンチちゃんに話を通すと、そそくさと思案を始める。
「そもそも、だぞ。どっか行くからにはシミュレーター使うんだろ」
「そういうことになるね」
「中で何か見つけたとして、それ現実に持って帰れるのか?」
「当然、無理だね」
今回の主目的を捉える疑問に対して、自信たっぷりに否定をぶつけた。
前提として。
種火や霊基再臨素材というのは、「そういう形、特性を持った魔力の塊」に近い。
レイシフトやシミュレーションを通して結果的に形を成した魔力を貯蔵している、というのが正確なところなのだ。
逆に、魔力という形だからこそレイシフトを通して得られるのであって。
「ま、向こうの普通のものをそのまま持ってくるのは無理だと考えてもらうのが早いかな」
と、丁寧な説明まで加えられる。
「おいどうすんだマスター。これじゃ買いに行くとかそういう話どころじゃねえぞ」
こちらをジトッとした目で見ながら彼女は言う。
「まあまあモードレッド。」
そう言ってなだめつつ、ダ・ヴィンチちゃんは話を続ける。
疑いの表情を顔に浮かべたままのモードレッドをよそに、得意げに。
「何も手段がないワケじゃない。マスターくんの発想もきっと正しい。
シミュレーターの中で何か見つけたとして、今回のキミたちが欲しいものはなにも『見つけたそれそのもの』ではないだろう?」
「だァッ、回りくどく言わねえでハッキリ言え!」
痺れを切らしたモードレッドを前に、ダ・ヴィンチちゃんは望みどおりにハッキリ答えを口にした。
「つまりさ、櫛くらいならデザインさえ分かるなら現実に作っちゃえばいいのさ」
「それこそダ・ヴィンチちゃんに作ってもらえば解決するでしょ?」
なるほどな、という言葉と共に、モードレッドの眉間によっていたシワは消え去る。
いくら小さくなっていても、たとえスペア体であったとしても。
レオナルド・ダ・ヴィンチという英霊は、美術を含めたあらゆる学問・事象に繋がる万能の天才であり───
つまり、日常品をデザインを真似たうえで複製するなんてことは、言わずもがなお手の物である。
「はじめから頼んで作ってもらってもいいんだけど、折角なら気に入るイメージを具体的に得たほうがいいかなって思ってさ。」
デザインに精通しているわけでもなければ、いきなり『こういうのをお願い』と頼むことは難しく。
今までずっと櫛を使ってきたわけでもないから、具体的にどんなデザインのものがあるかも分からない。
それを解決するためにシミュレーターを使って実物を見に行こう、というのが今回の主目的だ。
「さて、折角時間をかけるならきちんと休みの日に設定しないとね。それと他に予定があるならそれも避けないとだ。
二人とも、直近の休みで何か予定は立ってたりする?」
「俺は今のところは特に」
「オレも何も考えてねえな」
「それなら直近の休日で大丈夫そうだね。さて、一番近い休みはいつだったっけ?」
「えーと、多分[[rb:明々後日 > しあさって]]かな……?」
「多分それで合ってると思うぞ」
「オッケー。じゃあその日に合わせて準備を進めておくよ」
とりあえず狙いどおりに予定は決まって一安心だ。
俺もちゃんと準備をしておかないとな……
と、そう考えているところに。
「まあ折角街のような場所に行くんだ。二人でデートと洒落こむのもいいと思うんだけど?」
「うん!?」
「はァ!?」
爆弾が投げ込まれたのだ。
今日はここまで。またこんど!
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gamehandのBSP 2K20◆0423
初公開日: 2020年04月23日
最終更新日: 2020年04月23日
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まずは書きかけの奴を進めよう。
ニコ生で同時中継中(たぶん)
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