現在の仮説では、頭の上の名前はその人の強く想う人、則ち恋人や思いを寄せている相手の名である。ヒルダとマリアンヌの秘め事を目撃してしまった事からそう推察し、三日ほどかけて周囲を観察した結果、おおよそ外れた答えではないと感じた。
 好きな人の話、といったものはヒルダやリシテアは好む(確認します)ものの、男相手にその話題を振ることは多くはない。小さな集団内で盛り上がる程度で、基本的に口外されるものでもなかった。クロードに確かめる術はないように思える。しかし人への興味やその色というものは隠していても完全に消せるものではない。意識して見れば成る程、とクロードは食堂で行き交う人々とその頭上に映し出されたものを眺めていた。
 仮説が強固になると、一つ困ることが出てくる。ディミトリだ。摩訶不思議なことにクロードの視界に『人の頭上に書かれた名前』が現れ、そしてそれは『想い人の名前』であるというのならば、ディミトリの頭の上に浮かぶアレは果たして。
「なんで俺なんだ?」
 あくまで仮説に留まるのは明確な答えが提示されていない、そして例外が大きくその存在を主張するためだ。同性同士、というのはあり得ないことではない。故郷では少数ながらも同じ性別の者で愛し合った恋人たちは存在する。だが、フォドラでは一般的ではないはずだ。セイロス教で明確に禁忌としているわけでなくとも、血を、紋章を重んじるこの地では生産性のない同性婚を公に認めているとは考え難い。どちらかと言えば忌避されるものではないか。だからこそ彼女たちも隠れるように愛を紡いでいたわけで。少数派は数が少ないのだから少数派であるのであって、この士官学校に集った人間の中で何人もその存在があるというのは。
(ないってわけでも、ないんだろうなあ)
「行儀が悪いぞ、クロード」
 むぐむぐと行儀悪く匙を口に咥えたまま考え事をしていれば窘める声が頭上から聞こえる。さらさらと指通りの良さそうな細い金髪に整った容姿、二対の蒼玉が光をうけてきらきらと輝いていた。
会話
「今日はグラタンか。王子様はファーガス由来の食事を好むようだな?」
「ああ。昔皆で食べた記憶を思い出して嬉しくなるんだ」
 結局のところ無駄に考えを巡らせるのも、そうではないという答えを探そうとするのも認めたくないからなのだ。この男が自分を好いている。ただの好意ならば未来の王として有難くもあり、上手く使えやしないかと画策して距離を縮めていた。彼は人としても甘いところはあれど出来ているため好ましくもある。
 ただ、相手はファーガス神聖王国を背負う王子様だ。血筋としても彼は残していくべき立場で、こんなものはお遊びにしかならない。どうやったところで応えてやることは出来ないのだから、突き放してやるべきか。
 為政者になる運命を生まれた時から背負う彼は、純粋でよく言えば誠実、悪く言えば愚直な男だ。それでも隠し事は出来るようで、この件がなければ彼の視線の意味を正しく理解することはなかったのかもしれない。人を見定めるような、自分と異なるものを排斥するような。そういった視線でこそなくとも、隣の同盟の盟主になる男を見ているのだと解釈してそのままこの一年を終えていただろう。
ディミトリと寮の部屋に戻る時に沈んだ声をかけられる
「すまない」
「へ?」
突然の謝罪に目を丸くし、何かあったかと先の会話を思い出すが今節の課題だとか、池が光る謎だとかの大した話はしていなかったし謝るような内容は皆無だ。
罪を告白する重苦しい空気
「聡いお前のことだ、俺が隠そうとしてもお見通しなのだろう」
「おいおい、なんのことだ?」
「誤魔化さなくてもいい。気を遣わせて悪かった」
確かにここ数日、ディミトリの頭上の名前の意味が知りたくて遠くから観察したり、少し会話を増やしたりしていた。本心を探るには近付くことが一番で、その行動を取ったまでだったが距離を測ろうとする心理が透けたか。
告白する勇気もないから振られたことにして逃げた
まだ何にも言ってないだろ
ハートありがとうございます♡
カット
Latest / 43:22
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
頭の上に想い人の名前が見えるようになったクロードはなし 続き
初公開日: 2020年04月23日
最終更新日: 2020年04月23日
ブックマーク
スキ!
コメント
なにかかく
でぃみくろになるはず 多分できました
和泉
ゆにば行く宿伏になるはず
企画の遅刻参加したいと思っているけど間に合わなかったら普通に投稿予定。ゆにばに行ってひたすら食べまく…
あぼだ