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今日はここに虚無がないです
前回、『ロリ育成ものについて考える』で考えた構造に沿って書き上げたものがありますので、それをまずはコピペします
なんかすげーハート飛んでる!?
=================以下、配信外で書き上げた1話
「こいつのやり方は、おかしい!」
 傷の一つでもつけようものなら、その年の稼ぎがまるまる弁償にあてられそうな高級机が、乱暴に叩かれる。
 おそらく、貴族だからそういった貧乏めいた思考など、脳裏にも浮かばないのだろう。
 貴族というのは特権階級で、一部を除けば平民を見下しているものだ。
 この、机を叩いて猛然と学園長に詰め寄る男も、また、そういった貴族の例にもれず……
 平民階級の『彼女』が、国家のエリートを育成する学園で教鞭をとっているのを気に入らない者に違いないのだろう。
 真昼間からすさまじい勢いで詰め寄られた学園長の方はといえば、これが、困り果てた笑みを浮かべていた。
 この貴族の青年が、こうして『彼女』を不適格だとか、問題があるとか、おかしいとか、そういうふうに直談判してくるのは珍しいことでもないのだ。
 だから、学園長は普段であれば、笑って、たしなめる。
 なにせ『彼女』には実績がある。
『才能のある者ならば誰だって受け入れる』という看板がこの学園にはある。それでも、平民身分で教師として採用されるにはとんでもない功績が必要だった。
 少なくとも、王族からの推薦があっても、多くの貴族たちが『あれだけの功を立てたのであれば、不満も言えない』と思うぐらいの。
 だから学園長は、普段であれば、『彼女』の実績を出して、直談判をやり過ごす。
 けれど、今回ばかりは、事情が違った。
「こたびの大規模モンスター侵攻において、こいつは……こいつが直接面倒を見た弟子たちは、あろうことか、モンスター側についたのです! それは、普段から、こいつに危険思想を植え付けられていたからに違いないのです!」
 その口調は断定的だ。
 実際にどうかはともかくとして、訴える彼の中では真実なのだろう。
 学園長は槍玉にあげられている『彼女』のほうを見た。
 格好はいかにもオールドスタイルな魔女といったもので、三角帽子をかぶり、体に貼り付くような黒いローブをまとい、短い杖が主流となった現代において、身の丈ほどもある大きな杖を持っている。
 体つきは豊満に熟れていて、同性でもついつい大きな胸からくびれた腰、そしてなだらかに張り出した尻までのラインを追ってしまうほど蠱惑的。
 顔立ちは人形めいた造作で、十代かと言われると『まあ少し大人びすぎているけれど、こういう子もいるな』と思ってしまうし、四十代だと言われても『ずいぶん若いが、この醸成された色気はたしかにそのぐらいかもしれない』と、唇のあたりをながめながら思うことだろう。
 しかし美女かと言われると首をひねってしまう理由がその表情だ。
 眠たげというか、ぼんやりしているというか、この世の全てをどうでもいいと思っているかのような、あらゆることと自分は無関係ですと思っているように感じられるというか……
 表情が、社会性のある大人じゃない。
 かといって、夢と希望に満ちた子供でもない。
 整った造作に浮かぶ、そのよく言えば超然とした表情は、見ているとだんだん混乱してくる、不可思議なものだった。
 そして、今、自分の進退がかかったこの場面で、彼女はやはり、なにも弁明しない。
 だから学園長はため息をつくしかなかった。
 もともと王族の末席ということで、学園卒業後すぐに学園長の座におさまった少女でしかないのだ。
 陰謀うずまく貴族社会、そこに大きな影響力のある学園をとりまとめるのは、ややハードルが高い。
「キリク」
 学園長は可憐な声にせいいっぱいの威厳を込めて、『彼女』の名を呼ぶ。
 すると『彼女』の真っ黒い瞳が、どこに焦点があっているのだかわからない感じを維持したまま、方向だけ、学園長側に向いた。
 学園長はキリクの愛弟子と言ってもいい立場ではあったけれど、この、まったく他者を見ない目だけは、在学中最後まで慣れることがなかったし、今後もきっと慣れないだろうと確信している。
「キリク、あなた、なにかないの? 反論というか、弁明というか」
「ふむ」
 キリクは顎に指をあてて考え込む仕草をする。
 それはまるで学術的な論文でも脳内で検証しているかのような、やっぱり、当事者意識みたいなものがみじんも見られない、考察姿だった。
「私の弟子という立場の者たちが、モンスター側について、王国の召喚士たちに大打撃を与えたのは事実と認識している。いや、戦略的に見て、かなり危ないところだったのではないかな? マックイーン先生とそのお弟子さんたちは、よくぞ王国を守ったものだと感心するよ」
「貴様はッ……! そ、それが、王国に弓引く者を輩出してしまった教師の言うべきセリフかッ!」
 マックイーンというのはまじめで、いかにも貴族らしい、『王国への奉仕こそが貴族の義務だ』という信念を持つ青年だった。
 その弟子たちもまた、特権階級であり、なおかつノブレスオブリージュを地でいくような素晴らしい信念と行動力の持ち主である。
 少々ばかり、天然で平民を見下しているところはあるものの……
 マックイーンとキリクとのあいだにある軋轢は、身分差ばかりが原因ではないだろう。
 この二人の人格は、決して噛み合わない。
「マックイーン先生がどのようなセリフを求めているのか、私は理解に苦しむな。……うん? ああ、そうか、そうだった。たしかあなたは、弟子の人格育成も師の義務だとお考えだったか。だからひょっとして、私に責任を求めているのかもしれない。なるほどね」
「『なるほどね』ではないわ! 当たり前だろう!? 我らは『異界の力』を操る術を教える立場だぞ!? この強大な力に振り回されぬよう、しっかりと人格を正しく導くことこそ、国家安寧を司る我らの義務だろう!」
「力は力、人柄は人柄だよ。生徒数千名、才覚さえあれば身分を問わない……そういう学園なのだから、それは、色々な人柄の持ち主が集まるさ。たまたま私の弟子が問題を起こしたけれど、それは確率の収束にすぎないと私は考えているよ」
「その確率を減らすためにも精神を教導するのも教師の義務だと言っているのだ!」
「こう言ってはせっかくの楽しい議論を打ち切ることになってしまうかもしれないがね、私の師である君のお父上は、果たして、私の人格を導けたのかい?」
「ッ……! ぐっ、こ、このっ……!」
「この議論は君にとって分が悪いものだと、再三の忠告をしていると思うのだけれど……君も飽きないやつだなあ。新しい反論でも見つけたからつっかかってきているかと思えば、また同じ会話を繰り返す……我々が学生だった時から数えて、ざっと三千六百回は繰り返しているよ」
「とにかく! ……貴様には、弟子の不始末の責任をとる義務がある! これは、貴様がいかに小癪な理論を振りかざそうとも変わらない、社会が貴様に求める義務だ!」
「うん、なるほど。社会というのの頑固さと力強さには私も辟易しているところだ。あいつらは理屈が通じないくせに力があるからたちが悪い。それの前では、私も口を閉じて奴隷のようにかしずくしかないね。ただ、一つ言わせてもらうのであれば……」
「学園長! 早くこいつにしかるべき責務を!」
 マックイーンにより机が叩かれた。
 学園長はこの年上の二人の、いつものやりとりを見て、つい、笑ってしまう。
 まあ、しかし。
 普段の、この学園の風物詩とも化した二人のやりとりとは、まったく、重さが違う。
 能力は能力、人格は人格。
 それは王家の血筋をもち、それでしか周囲から判断されなかった学園長にとっては本当に福音で、キリクに師事した一番の理由でもある、キリクの信念みたいなものなのだが……
 世間は、そうは思わない。
 モンスターなんかに味方をする弟子を育てた師匠は、危険思想を持っているに違いなく、教鞭をとる資格なんか……もっとひどく言うならば、さっさと処刑してしまうぐらいの、生きてる資格なんかない者だと、そう、世間は思う。
「キリク、あなたには教職を辞してもらいます」
「それは困るな。教職にいないとできないことが山のようにある」
「しかし、学園はあなたを守れませんし、あなたと共倒れになるわけにもいかないのです」
「しかしそうなると、私はどこかの適度に王都から外れた僻地で、教師のまねごとをするしかなくなる」
「……あの、この風潮の中であなたがそんなことをすれば、国家転覆を狙ったテロリズムと判断せねばならなくなります。私はあなたがそんな面倒なことをするとは思いませんが、世間は、あなたのその人格を理解できないのです」
「うん、だから教職ではあり続けたい。そのほうが、面倒がなくていいからね」
「もういい!」
 マックイーンが三度机を叩いて、話を打ち切る。
 学習しているのだ。キリクと会話をするコツは、キリクとは会話をしようとしないことだ、と。
「キリク、貴様は僕の嫁に入れ。第二夫人だ」
 いきなりのプロポーズに、学園長もキリクも沈黙した。
 マックイーンは咳払いをして、精悍な顔つきでキリクをまっすぐに見る。
「貴様は僕が管理する。それが世の中にとって、もっとも正しい。資金も出そう。場所も提供しよう。ただし、僕が禁じたことは決してするな。世間にも、僕の監視下に置いているのだとアピールする。それがもっとも、正しい道だ」
「君の監視下は窮屈そうで願い下げだな。君の言葉に従っていたら、私は、やりたいことの一割もできないよ」
「それだけ貴様のやっていることが社会通念や常識から逸脱しているということだ!」
「そんなもの、どうだっていい。なんなら森に帰るよ。あのへんに住まう『亜人ども』なら、君たちの管轄外だろう?」
 獣人や妖精などの種族がこの世界にはいるが……
 それらは『モンスターと人の混ざりもの』として、差別を受けていた。
 キリクは大きな三角帽子をとる。
 彼女のつやめく真っ黒な髪、その頭頂部の左右には、髪と同じ黒い毛の生えた、とがった三角の耳があった。
「人の……君らの言う『人間』の社会に混じるために、しっぽを切り落としはしたけれど、それぐらいが、私のできる精一杯の譲歩だった。いいかなマックイーン。私は人の世界で生きるのを望んでるんじゃあないんだよ。人の世界でしか得られない智慧がほしいんだ。それを阻まれてまで、生きている意味はない」
「ならば」
 マックイーンが右腕を振る。
 すると、彼の手にはいつのまにか、宝石のはまった短い杖が握られていた。
「ならば、僕が貴様を誅する。それが、同期の、そして尊敬すべき教師に対しての、せめてもの情けだ」
「うん? つまり君は、戦う気なのか? 戦って、私をねじ伏せる気なのか?」
「そうだ」
「その理屈だと、君も、戦いに敗北したら私にねじ伏せられるのか?」
「……なぜそうなる」
「君ばかりが一方的に私をねじ伏せられるというのは、いかにも不公平じゃあないか。君は社会の代行者ぶってはいるが、社会そのものほど強くない。それに黙ってやられるほど、私たちのあいだに戦力差はないと思っているよ」
「……」
「ただ、それは平和的ではない」
「ならばどうする?」
「そもそもの問題はこうだ。『私の弟子だった者たちが、問題を起こした』『その責任をとれと、社会が私に望んでいる』『なぜならば、教育者は弟子の人格についても指導する義務があると世間は見ているからで』『私の指導の結果、人類を裏切るような者ができあがったと見られているから』」
「忌々しいほど理路整然としているな、貴様は……」
「ありがとう。ならば、こういうのはどうかな? 問題を起こした弟子たちを、私の新しい弟子が倒す」
「……」
「これならば、私の人格指導能力が必ずしも悪いのではないと世間に示せるし、王国が直面した問題も解決できる。そして私は教職を失うことなく、これまで通りの暮らしができる。すべての問題に片がつく」
「そのための弟子を育てることを、世間は許さないぞ」
「結果で示すさ。つまり、こっそりやる」
「……学園に入るような、優秀な弟子をとることはできないぞ。反乱を起こしたお前の弟子たちは優秀だ。一人などは、二年連続で学年主席だった少女だ。それを、非才の弟子が倒す? ありえない。すべては才能と生まれで決まるというのに」
「私が君の監視下に置かれることを嫌うもっとも大きな理由は、その思想だ。人は生まれでは決まらない。こと、能力にかんしてはね」
「失敗したら、今度こそ貴様は人類の敵だ」
「かまわないよ。望み通り、君の手にかかろう、マックイーン」
「……なぜだ。私は、最大限の幸福を用意してやった。君は、それこそ人格さえ除けばあらゆる点で優秀だ。亜人の生まれであることなどかすむほどに……君の血を我が家に、第四位の貴族家である我が家にとりこみたいと熱望するほどに」
「だから、『それ』が嫌なのさ。君の考えは貴族的で人間的だ。私にはなじまない。私は学友を思想の違いから殺したいほど憎みたくない。一緒にいれば、いずれそうなる。君は本当にわからないやつだなあ」
 マックイーンは偏見なく平等な男だった。
 しかしそれはあくまで『貴族にしては』という話だ。
 彼はいつでも『自分が譲歩し、寛大に受け入れてやっている』という立場でものを語るが……
 その天然の傲慢が、人間でもなく貴族でもない者には、鼻につく。
「ということでいいかな、学園長」
 キリクの言葉に、学園長はしばし悩んだあと、うなずいた。
「……いいでしょう。ただし、あなたの弟子たちをいつまでも放ってはおけません。モンスターの次期侵攻は、おそらく半年後……それまでにあなたの名誉回復の手立てが整わなければ、今度こそ本当に守れませんよ」
「君たちは教育によって人格をどうにかできると思っているようだし、自分たちこそその範だと思っているようだけれど、そういうところなんだよね」
「なにがですか?」
「いいや。学園長、君は私に教育を受けたにもかかわらず、素晴らしい王族で、すばらしい貴族だなと思ったんだよ」
「ありがとうございます……?」
 キリクはようやく、学園長に焦点を合わせて笑った。
 そして、またぼんやりした、底の見えない深淵みたいな目に戻って、
「じゃあ、さっそく弟子探しから始めよう」
「学園の生徒は……」
「マックイーン、言われなくてもわかっている。なに、私にもアテがないわけじゃないんだ。帰るよ、『森』に……『亜人の森』にね」
=====================以上、1話コピペ
5分ぐらい読む時間をとるけどまあ読まなくても問題はない気がします
というわけで1話目をなんとなく型に従って書いたわけです
配信だったかTwitterだったかで言った気がするんだけど、これはエロ小説にする予定でした
ところが、1話目で案外深い人種間の思想差異みたいなものに触れちゃったので、エロにはならんなと思った
できないとは言ってないけど、
いやできないな
まあそういうかんじで、わたしはエロを書くときは主人公を女性にするクセがあるので、主人公は女性になりました
ここから2話を書いていきます
1話目で弟子育成ものの必要条件に沿って進めていったので、2話目もテンプレートな感じのラインを踏襲します
この流れからだと、たぶん2話目は読者的に『さっさと弟子になるロリを見せろ』みたいな要望が出るのではないかな? と思うので、そのイマジナリー読者のイマジナリー要望に従うかんじで設計していきたいと思います
2話のざっくりした流れはこう
亜人の森とかいう場所に行った(帰った?)主人公
彼女は弟子候補となるロリに出会い、なんやかんやで弟子にする
読者の要望という視点で考えた場合、おそらくですが『弟子候補らしき少女を発見する』『弟子候補らしき少女の状況を描写する』『弟子にする条件をにおわせる』『でしにする』ぐらいの懇切丁寧な展開にしてしまうと遅くてタルいと思う
わたしも読者だったらさっさと弟子にしろって思う
というか便宜上『懇切丁寧』という表現を用いましたけど、遅くてグダるだけで丁寧とはちょっと違うんだよなあ(淫夢)
だいたい『弟子にする条件』とか『少女のキャラクター描写』とか、そんなん弟子にしてからでええねん
(※あくまでもわたしの感想です)
で、二人が出会い、弟子にする流れですが
これはセーブ&ロードのできる宿屋さんでもやったんですが、『力でねじ伏せる』が一番イージーでわかりやすい
師弟関係は上下関係なので、上下のロックをエピソードとしてわかりやすく示すにはやっぱ殴り合いっしょ! というアレですね
まあこのへんから書いていきましょう
=================↓2話本文
 キリクが『亜人の森』にたどり着いたのは学園のある王都を出てからおおよそ七日後のことだった。
 森、とは言うが、そこはうっそうと生茂った木々の隙間というわけではない。
 きちんと開拓された集落がそこにはあって、王都で言われるほどには『未開の地』というわけでもない。
 木組みに土壁、茅葺きの屋根の家屋が立ち並ぶそこでは、子供が元気に遊んでいるし、その親と思しき人たちが、井戸のまわりで話し合っている。
 真昼間の亜人集落は平穏そのものといった様子で、王都における『人間』たちの差別的な態度に触れてさえいなければ、なんら問題のない場所のように思えた。
 だけれど、そこにキリクが当たり前のように歩いていくと、様相が一変する。
「魔女だ!」
 キリクの服装はどこだって変わらない。
 大きな三角帽子に、体に貼り付くようなタイトなローブ。
 加えて身の丈ほどもある杖をつきながら、あきらかに使い魔と思しき、『羽の生えた二足の馬』に荷車を引かせているとくれば、これはもう、魔女以外の何者でもない。
 そして、亜人集落において『魔女』とは━━
「目を合わせないで! 呪われるわよ!」
 というように、良識ある親御さんが子供の顔を腕でかばいながら、急いで家の中に連れ帰るぐらいの存在なのであった。
 
 キリクはそんな様子をいっさい気に留めていないように、例の、どこに焦点を結んでいるのかぜんぜんわからない真っ黒な瞳をまっすぐ前に向けたまま、歩いていく。
 いつしか、平和な集落のにぎやかな昼間という光景は消え去っていて、そこには静寂だけが取り残された。
 羽の生えた二足の馬の、かしゅ、かしゅ、という土を掻く不可思議な足音と、魔女が杖をつくたびに鳴る名状しがたい不可思議な音だけが響く。
 キリクは目立つのを好む性格ではないが、自分が目立っているかどうかにひどく無頓着な性分の持ち主であった。
 魔女の衣装が目立つことぐらいは把握しているのだが、こちらは信念があって身にまとっていることもあり、彼女にとっては『教職』と同じぐらい、命がけでもゆずれない、彼女のアイデンティティーである。
 そんなふうに魔女であると隠すこともなく集落を横断する……これはなにかのアピールとかそういうことではなく、ただ、『長らく留守にしていた自宅がそちらの方向にあり、この集落を横切るのがルートとしてもっとも効率的だ』というだけの行進であった。
 だけれどなにをするわけでなくとも、差別的に見られている魔女が、自分たちの住処を堂々と歩くことを面白く思わない者もいる。
「おい、魔女!」
 キリクは足を止めた。
 それは声に引き止められたとかそういう情緒のある理由ではなかった。
 ただ単に、進行方向に立ち塞がられたから、物理的に足を止めざるを得なかったというだけの理由だ。
 キリクの|うろみたいな目が、立ち塞がった者をとらえる。
 それは真正面ではなく、ずいぶんと低い位置にいた。
 褐色肌の、獣人だ。
 薄く小さい体。ぼさぼさの長い白髪。
 ウサギを思わせる耳が頭から生えており、それはピコピコと威嚇してるのかかわいく振る舞っているのかわからない揺れ方をしていた。
 負けん気の強そうな赤い瞳は、同年代が相手であれば、にらみつけただけで言葉につまらせるぐらいの、強い意思力が宿っている。
 だが、このたびは相手が悪い。
 キリクという女は、女性の中では背が高い方だった。
 また、その真っ黒な瞳は底のない穴のようで、たしかにそちらを向いていても、どことなく焦点が合っていないような、不気味な雰囲気がある。
(こいつ、やべぇ……)
 立ち塞がった人物は、一瞬、後悔が頭をよぎった。
 魔女というのが、呪いだとか、病毒だとか、そういうものを常に帯びているやばいやつなのは、よく話に聞かされている。
 それでも相手はしょせん人類だし、それなら、たとえ大人でも負けない自信があった。
 だが、目の前の魔女の『やばさ』は、想定していたものとはまったく別種だ。
 強いとか怖いとかいうよりも、ただただ、不気味。
 人の形の中に真っ黒な得体の知れないモノが詰まっていて、それが眼窩の中からこちらを見ているような、生理的、あるいは原始的な嫌悪感のあるものだった。
 しかし、魔女を相手にひるむのは、プライドが許さなかった。
 なにせ、仲間が見ているのだ。
 魔女の道をふさいだのには事情があって、それは、『仲間への見栄』というものが大きくかかわっていた。
 魔女が出たぞ! という話が村中で騒がれた時、たまたま、外で遊んでいたのだ。
 その時に、言ってしまった。
「魔女ぐらいなんだ。大人たちまで、ビビっちまって情けない。オレなら、真正面から立ち向かって追い払えるぜ」
 時に、仲間内でこぼした強がりは、どんな鎖よりも強く心を縛る。
 勇気というよりは蛮勇だし、正義感というよりは利己的な自己顕示欲なのだけれど、そういったものが、『魔女の正面に立つ』という、普通の危機管理能力があれば避けるような行動をとらせていた。
 だから、道をふさいだまま、逃げも隠れもできないまま、言う。
「ここは魔女が来ていい場所じゃねぇんだ。わかったらさっさと帰りな」
 言ってやった! という満足感が体中を満たした。
 周囲で自分の様子をうかがっている仲間へ、自信たっぷりに目配せする。
 そして視線を魔女に戻せば……
 そいつは、いつのまにか、息がかかるぐらいの距離で、こっちを見ていた。
「うおっ!? な、なんだよ!? も、も、文句あんのか!?」
「君、女の子だね」
 たしかにそうなのだった。
 男っぽいしゃべりかたをするし、男より強い体と心を持っているつもりではいるが、性別的には女だし、べつにそれを隠しているわけでもない。
 だというのに、この状況で、そんなことをことさら確認されたのが、なんともいえない、不気味さを感じさせる。
「お、女だとなんか悪ぃのかよ!」
「いいや。悪くない。すごく、いい。……ふむ」
 魔女がベタベタと触れてくる。
 こわすぎる。
 触ってくる手を払い除ける。一歩下がって魔女から離れる。
 すると魔女はなにかを小声でつぶやく。
 足が地面に縫い付けられたかのように、動かなくなった。
「大人しくしていなさい。今、見ているところだ」
 声も出せない。
 しばらく、魔女は全身をさわってきた。
 足首をにぎられ、ふくらはぎをなでられる。
 ふとももを指が這い、たんねんに尻周りを揉まれた。
 腹部をぐっと押され、肋骨をなぞられ、胸をぎゅっとつかまれた。
 魔女の白すぎる指が首筋をなぞるころには、もう、この魔女の目の前に立ったことを後悔していて、震えながら、声さえ出せない謎の拘束をされたまま、恐怖のあまり目の端に涙を浮かべて、泣き叫ぶことさえできないので、必死に魔女をにらみつけるだけしかできなかった。
「うん、まあ、君でいいか」
 魔女はなにかに納得したらしい。
 そのまま、横を通り過ぎていき……
 そして、羽の生えた二足の馬が、その牙のびっしり生えた大きな口を開けて、食らいついてきた。
(え、殺され……!?)
 しかし、馬はあんがい丁寧な力加減で首筋を噛むと、そのまま持ち上げ、歩いて行く。
 殺されはしなかったけれど。
(え? え!? さらわれてる!? オレ、誘拐されてないか!?)
 少女はどうにも頭が回るようで、こんなに唐突におかれた自分の状況を、瞬時に、十全に理解できたようだった。
 理解がおよばなかったのは少女の友人たちだ。
 物陰に隠れたまま様子をうかがっていた友人たちは、謎の生き物に連れ去られる少女を、ぽかんとしたまま見送った。
 ようやく状況を察することができるようになったころには、もう、魔女も、少女も、ずっとずっと遠くに行ってしまっていて……
 あとから、大人たちに『シノ(仮)がさらわれた!』とうったえるのが、せいいっぱいだった。
雑談
はい2話でした(完成)
なんか思ったよりすんなり書けましたね。やっぱ最初から構造が決まってると楽ですわ
楽なのには、1話で魔女のキャラがきちんと決まっていたのも大きいと思います
これからシノ(仮)とキリク(こっちも仮)はどういうふうになっていくのでしょう……
3話を書く配信があったら、よろしくお願いします
それではご視聴ありがとうございました
おつかれさまでした
雑談:
名前えええええええええ!
あなたのお名前はなんですかあああああああ!?
山田さああああああああああん!
山田はないな
最近流行(はやりか?)の視点シームレス転換
最近でもないし流行でもないな。もはや定着した技術の一つってかんじですね
そういえば文章ちょっと変えてるのわかるだろうか……
語順の調整なんだけども
そういやこないだの配信で弟子ポジションをカイニスみたいな子にするとか言ったっけ……
やべぇよやべぇよ……そうなると思いつかない
まじで? 魔女差別されすぎでは?
この先どうするんだ……
弟子の見つけ方が想像もつかない
ついた
まあいいや
井戸はのちのちの文明レベル設定が面倒くせーからあんま出したくない……
チート転生者が文明に介入してる、とかだとわりと文明をめちゃくちゃにできるので楽なんだけどね
泥……泥? 石は王都にする予定なんで木材?
木……
ああ、木組みに土壁にしておこう。このへんは地震も多いってことで
そういえば『家がどんな材料でできてるか?』はわりと文明レベルを示すのに使いやすい材料ですね
ま? 半年って期限切っといて移動で七日も使うの?
オエーするな
そういえば『魔女』とか『森』とか意味深なワード出したけど、その意味するところは作者もまだわかっていません
オールドスタイルな魔女ってなんだよ
まあせっかく出たワードなので、うまいこと拾っていきましょう
雑談:
これだけ読者を気にしながら書くこと滅多にないので、今実はすごく貴重なものを目撃しているかもしれません
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長編1話目を見せてうまくいけば2話目ができる一時間
初公開日: 2020年04月21日
最終更新日: 2020年04月21日
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こないだ配信したロリ育成ものの続き