空虚な独り言が宙を舞う。落とし所が見つからない。
この気持ちを自覚した今、時を巻き戻して彼女のところに戻れればいいのに。ちゃんと「恋」を置いてけぼりにせずに、彼女の元に戻れればいいのに。
そんなこと出来るはずがないと嘲笑するけれど、出てくるのはいつも切ないため息ばかりで上手く笑うことが出来ない。
「まだそんな顔してんの」
「...大野さんか、お疲れ様」
「なしたの、最近ずっとそんな顔してる」
「恋」は人を変える、と言うけれど天下の二宮までその餌食になるらしい。大野は何も見ていないようで細かいところによく気づく人だった。そして何より優しい。二宮にとってそれは、鬱陶しくてたまらなくて、安心できる拠り所でもあった。
その優しさに甘んじて、ぽつりぽつりと話し始める。振り返って誰かに話すと自分の馬鹿さ加減に恥ずかしくなる。[FN:璃子]に対して不甲斐なさと、最後まで優しくできなかった現実を見せつけられたような気分だった。
「[FN:璃子]ちゃんのこと好きだったんだな」
「...うん」
俯きながら頷いた彼の姿を見て、大野は優しく頭を撫でた。いつもどこか飄々としていて俯瞰的な二宮が、その時はなんだかとても頼りなくて小さく見えた。
「もう会わないの?」
「わかんない」
「なんで?」
「会っちゃいけないけど、でもすごく会いたくてたまらないから」
我慢している姿はいじらしい。じゃあ今すぐ会いにいけよ、と大野は思った。答えは出ているじゃないか、なぜ躊躇う必要があるのだろう。
あぁそうか。怖いのか。二宮はきっと、今更会いに行ったら彼女に突っぱねられることが怖いのか。