この思いは最後まで明かさぬとそう決めていた。
初期のリッパーに最もよく似ている緑。
違うのはほんの少し鮮やかな色彩だけ。
その色彩は、けれども本当に少ししか違わないのだ。
だから周囲は間違える、初期服のリッパーと認識する。
それを悲しいと思ったことはある、それを辛いと思ったことはある。
なぜ彼から最も離れた自身が、彼に最も似ているのか…
その問に未だ答えはない。
答えはないけれど、これだけは知っている。
あの特異なハチドリは、なぜだか自分を認識して、自分を追いかけているのだと。
あの真剣な眼差しでそれを伝えられてから、緑は彼のことが頭から離れなかった。
「よぉ、緑」
甘やかな声が聞こえる。
これは夢だ、だって自分は先程、シャワーを浴びてベッドへと潜り込んだ記憶があるのだから。
そう、夢だ。
彼の真剣な眼差しも、彼の甘い声も夢に決まっている。
そうでなければ、あまりにも残酷だ。
ハンターとしてあまりにも未熟な緑は、初期のリッパーの許可を得て、庭園の奥にある小さな薔薇園の近くにある小さな小屋に住まわせてもらっている。
緑は誰かを傷つけるのが嫌だった。
悲鳴や血しぶきは好きだ、それなのに彼らが傷つく瞬間の顔が嫌いだった。
まるで昔、自身を拒絶したいい子のように、こちらを責める顔をしている。
それは当たり前だろう。
いくらゲームが終われば傷が癒えるとはいえ、えて痛い思いをしたい人間がいるはずがない。
そして、擬似的とはいえ死ぬのだ。
それに早々と慣れた者もいれば、いまだに慣れぬ者もいる。
そんな彼らはこちらを目で責めるのだ。
なぜ攻撃した、なんで当ててきた、なぜ傷つけた。
ハンターとして当たり前の行動、それを責めるなとは言いきれない、だって初期のリッパーだってよく、銃が痛いだ、呪いが苦しだ言って、あの目をしている。
だからお互い様なのだ、本来は。
そしてそれを気にしてる奴などいないだろう。
だからこそ、緑は誰かを傷つけるのが嫌いだった。
ハンターとして失格だとわかっている、けれども、だからこそ、ランクマには出ないようにしているし、基本はカスタム、稀に誘われてダブハン程度のものだ。
そんなわけで、普段からゲームに出ない緑はこの小さな箱庭でひっそりと暮らしているのだが、そんな日々を壊したのがハチドリだった、
ナワーブという傭兵の側面のひとつ。
かの存在は何故か緑を気に入ったと付き纏い、いつの間にやらそばに居るのが当たり前となった。
彼のことは嫌いではない、むしろどちらかと言えば好きに入る。
だけれど思いに答える訳には行かない。
でも本音としてはもっと彼と話したい。
この夢はきっと、そんな思いが見せてる一時の楽園だ。
ちょっとしたことですぐ消え去る楽園。
だからこそ、少しくらい夢を見たっていいじゃないか。
「ハチドリくん…」
現実では呼べぬ彼の名を読んでみる。
その途端、とくんと無くしたはずの心臓が高鳴った。
ああ、ただ名前を呼んだだけだと言うのになんて浅ましい。
けれど夢の彼はそんな自分に優しく微笑みかけて、そっと手先にキスを落としてくれた。
それだけでこの胸が歓喜に震えるなんて、考えたこともなかった。
あまりにも幸せで幸せで、これが現実ならいいのに、と思いながらも、こんなこと現実にあるはずないという考えがよぎる。
けれども、だからこそ、甘えることが出来るのだ。
 
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