あの窓、弟が頭を撃ち抜いて血を浴びた窓。まだどこかに彼の香りが残っている気がして、冷たいことを承知で頬をつける。お前がいなければ、何もない。窓は開かない、カーテンも揺れない、鍵盤は音を鳴らさない。俺は俯いたまま、後ろに置いてあった絵を手に取ると、普段は絶対に開けないそこに立て掛けたが、その微笑はやはり本物の花散らすような様とは比べものにもならなかったが、仕方ない。代わりにしようとしたわけでもなく、心の慰めにしようとさえ思わなかった。あの絵描きを雇ったのは、ただ、思い出の再生を止めたかったからで、それ以外に意図などあるはずもなかった。
 額縁は、隔たりであり飾り。ただのドア。向こうに行ったものは取り戻せない。額縁の中の微笑をただより華やかに、装飾し、そして我々を隔てる。扉越しに居る、動くものと動かないもの。それを分けるものは何だ? 誰が何のために? 
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初公開日: 2020年04月12日
最終更新日: 2020年04月12日
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