外から聞こえてくる音は昨晩と比べて格段に少なく、風があまり吹いていないのがわかる。
既に光が差し込んでいるが()の姿は見当たらず、優雅にモーニングティーを嗜むワタルの姿があるのみだった。
置かれた朝食は既に湯気も立っていないことから、作られて結構な時間が経っている事がわかる。
外を覗けば昨晩の雪などなかったかのように晴天で、山の天候は荒れやすいという印象が瓦解していく。
「ああ、おはよう」
ソーサーにカップを置いたワタルが声をかけてくるが、視線を返すだけで特に返答もせず最早定位置となっている場所へ腰掛ける。
それに対して何か苦言を呈す訳でもなく、小さく笑みをこぼす態度に少しだけムッとする。そんな自分の気持ちさえ無視して朝食を済ませ、手持ちの最終チェックを始める。
「レッド君はとても幸運だね」
ふとかけられた台詞に一瞥だけくれてやるが、それが何に対しての幸運なのかわからず無言を貫く。それでも気にならないのか独り言のように言葉は紡がれる。
「()とバトルした人は幾人もいれど、このメンバーを見るのは僕以外には君が初めてじゃないかな」
それでも自分は先に見ているというマウントに感じられた気もするが、そう言われては彼女がとっておきとまで言ったメンバーが気になってくる。
手持ちが今は足りないと言っていたが、わざわざ麓のポケモンセンターまで降りる訳でもなさそうだったし、何より呼んでくるというニュアンスだったのが不思議だ。
想像しても全く浮かばないが、ドラゴンタイプから特に好かれ、メンバーに入れていたのだからドラゴン主体だろうか。
「目の前の出来事が夢じゃないかと思うかもしれないが、とりあえず卒倒しないように健闘してくれ」
愉快そうに笑ってこちらを見てきたタイミングで、彼女のフライゴンが姿を現した。事前に言付けていたのかその姿を見たワタルが立ち上がり、準備ができたようだと言って外へと歩みを進める。
その背中を追うようについていけば、昨日も使ったフィールドから雪が除けられ、今すぐにでも始める気満々な()の姿があった。
腕を組んで仁王立ちする姿は男が似合うと思っていたが、か細い印象の彼女も整った容姿のおかげか、はたまた王者の貫禄からかとても様になっている。
「先に聞いておこうと思うんだけど、常識的か非常識な面子のどっちがいい?」
「逆に聞くが一文字付くだけでどう違うんだ」
「全国回ったら見られるか、隈無く探しまわっても見つけられないポケモンってだけかな」
「それなら非常識な方がいいに決まってるだろ」
非常識と即答したのが嬉しかったのか、満遍の笑みで何度も頷いている。審判のポジションで佇むワタルはまた溜め息をついたが、そわそわとしており地味に楽しみにしているのではないだろうか。
ワタルが両者に準備はいいかと問いかけ、同時に頷いてからモンスターボールを投げた。対する()は指笛を鳴らし、その音がこだまとなって響き渡る。
「安全確保の為に一体だけ晒すけど、レッドもそうした方がいいよ」
途端に感じたのは強いプレッシャーで、場に出されたリザードンも感じるようで周囲を警戒する。
次の瞬間、鼓膜を強く震わす咆哮と共に山の谷間からポケモンが飛び出した。飛び出した2体のうち片方は()の傍へ、もう一体はフィールドへと降り立った。
それはいずれも写真ですら見た事はなく、唯一心当たりとして当てはまったのは、各地のお伽噺として伝わる伝説のポケモンだった。
「私の初手はレックウザっていうの。今日の面子は全員ゲットはしていないからどっかから飛んでくるけど、バトルするのは了承してくれてるからね」
「…ホウエン地方のポケモンか。そっちにいるポケモンも」
「この子はラティアスっていうの。すごく可愛いでしょ」
頬ずりしながら撫でているが、予想以上に意味の分からないポケモン達を連れてきたのか。しかもゲットしていないってどういう事だ。
ふと気になってワタルを見れば、避難準備万端とでも言いたげにカイリューに乗っている。
「全員ドラゴンタイプで統一しちゃってるし、レッドにとって簡単だったらごめんね」
そう言って笑みを浮かべた姿から申し訳なさなど一片も存在せず、これから繰り広げられる展開も予想出来ない。
まだ始まってもいないバトルに冷や汗が伝ったが、それ以上に今までで一番の喜びを感じている自分がいた。
(step7ここまで)
「さあ、ラストスパートといこう。ラティアス、メガシンカ!!」
こちらのポケモンが倒れる度に次々と入れ替えてくれたおかげで、神話くらいでしか見られないポケモンは見られた。
最後のポケモンとなったピカチュウも若干息があがっており、大詰めというところでパフォーマンスのようにメガシンカを披露した。
話には聞いた事はあっても実際目の当たりにするのは初めてのメガシンカ。形状も色合いさえも変化したラティアスだが、進化とつくだけあって能力も向上しているのだろう。
「ラティアス、ミストボール!」
「影分身!」
空を飛ぶポケモンに対して物理攻撃は当て辛い。となれば特殊攻撃の威力を弱められるのはかなりの痛手となる。分身に当たりはしたものの、本体はなんとか攻撃を避けきった。
だがここで一安心している暇なんてない。
すぐに放った雷は確かにラティアスのいた場所に落ちたが、まるで空を飛ぶのを楽しむかのような動きで避けられる。
更に追撃を狙うが縦横無尽に飛び回って狙いが付け辛い。そして一瞬の攻撃が止んだ隙を狙ってあちらからの反撃が始まる。
ドラゴンタイプ統一パーティと言っていたが、攻撃を受けた様子からひこうタイプは入っていないのだろう。
サイコキネシス、サイコウェーブ、ミストボールとエスパー技を使用しているからきっとエスパーだろう。となると弱点属性は狙えずいかに有効打を叩き込めるかになってくる。
空からの猛攻を躱し続けるピカチュウだが、流石に疲労の色が見え始めている。
「電磁波!」
先程も躱された攻撃だが、麻痺などを入れなければ捉えるのは非常に難しい。攻撃の予備動作などを狙って再び電気が放たれる。
今度こそタイミングはバッチリだったようで、広範囲に放たれた電磁波の餌食となる。ぐらりとその体がバランスを崩したタイミングで、ピカチュウが地面を強く蹴って飛び上がる。
勢いに任せたワイルドボルトを避けようとラティアスが身じろぐが、胴体へとしっかり命中した。
重力と慣性で地面へ向かって行くラティアスに向かって、休む間もなくボルテッカーを打ち込んだ。
反動でピカチュウも吹っ飛んだが、痺れで上手く動けなかったラティアスの急所を突いた。雪を舞い上げながら墜落し、すぐに飛び上がる事が出来ないらしい。
連続で反動のくる技を放ったピカチュウだが、それでも喰らい付くように渾身の一撃であるアイアンテールを叩き込んだ。
体を起こしかけていたラティアスが再び地へ伏し、それと同時にワタルがラティアスの戦闘不能と判定した。
「お疲れさまラティアス、仇はラティオスがとってくれるって」
()の優しい声色と共にメガシンカの解けたラティアスが宙に浮き、()の傍らへと運ばれた。
そして現れたのは第5戦でも姿を見せたラティオスだ。先程よりも強い意志を感じる瞳でピカチュウを見据えており、そう簡単には勝たせてくれなさそうだ。
「さあ、あとどれだけ耐えれるかな」
そう発した()もまた、バトル前とは違う色を目に宿していた。
(8)
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テスト兼pkmn夢
初公開日: 2020年04月11日
最終更新日: 2020年04月11日
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コメント
自分のところで載せてる夢の続きです
nのキーボードだけめちゃくちゃ外れるので押し込みまくってます