フォルトゥナでの生活
ネロV+キリエ
日常の話を何個か書きたい
「これはここでいいのか?」
「ええ、そこに置いてください。ありがとうVさん」
取り込んだ洗濯物が入ったカゴを持ち、部屋に入るとキリエがにこりと笑い答える。
(ネロと同じ顔をするんだな)
眩しそうに目を細めたVは、言われた通りキリエの横にカゴを置いた。
ネロにフォルトゥナに来てほしいと言われ、了承してから一月ほどたった。
フォルトゥナに来いと言われ、了承した途端に荷物の手伝いを申し出たネロは、勢いそのままに荷造りをほとんどやってしまい、挙げ句の果にその日の内に家を出ようとしたため、Vが慌てて止めに入ったことさえ懐かしい。
その後帰ってきた双子にネロが飛びつき、事情を話すと、あれよあれよという間に出発する準備ができてしまった。
と言ってもVの荷物はほとんどなかったので、事務所にずっと使われていなかったボストンバッグに詰め込んで、ネロがひょいと抱えれば完了したというのが正しい。
「世話になった」
Vがぼそりと言うと、ダンテはいつも愉快そうに細められている目を、じっとこちらに向けた。
「ネロとケンカしたらいつでも戻ってきていいからな」
軽い言葉とは裏腹に、澄んだ空色の瞳は穏やかで、Vは戸惑ってしまう。
押し黙ってしまったVに苦笑して、ダンテは首を傾げて後ろを見やった。
「おいバージル、だんまりはダメだって言ったろ?」
ダンテはVの戸惑いを知ってか知らずか、少し後ろにいるバージルに声をかけた。
「…」
無言でつかつかとVの前に進み出たバージルは、ダンテと同じ瞳でVを見下ろした。
同じ色のはずなのに、氷の様に冷たく見える眼差しに、思わずVは視線をそらしてしまいそうになる。
「…いつでも戻ってこい」
バージルはそっとVの頬にかかる黒髪を後ろに払ってやり、ふっと口角を上げて笑った。
そのあまりに優しげな態度に驚いたVはびくりと体を震わせ、目を見開いて呆然とする。
ネロもあんぐりと口を開けて固まった。
ダンテはにやにやと笑っている。
周りの様子を全く無視して、バージルの無骨な手はVの頭を撫でてすぐ離れ、さっと背を向けた。
「バージル!」
固まったVは慌ててバージルを呼び止める。
「もし、この体に何かあれば、俺が死にそうになれば、必ず戻ってくる。だから、」
尚言い募ろうとするVに、バージルは少し振り返り、口を開いた。
「お前の好きにすれば良い」
みなまで言わせるなと言いたげに鼻を鳴らすバージルに、素直じゃねえのとダンテは肩をすくめた。
Vは途方に暮れる思いで二人を見た。
ここを出て行っても、二人は何も言わないと思っていた。
形式上の別れの挨拶くらいにしか思っていなかったが、二人は思っている以上に共に過ごしたVを気にかけていたらしい。
「…なんでお前ら、Vが戻ってきたくなる前提で話してんだよ」
不満そうにネロは口を尖らせる。
「まあそう拗ねんなって坊や。例えばの話さ。じゃあな、V」
無邪気な笑みでネロを宥め、Vには軽く手を降って見せるダンテと、振り返ることはないがその場に留まっているバージルに、
「…世話になった」
同じ言葉を、しかしそれ以上の思いを込めて、Vは言った。
伝えたかった思いが浮かんでは消えていくが、それしか自分には伝えられらなった。
ダンテとバージルはVを見て、目尻を下げて笑った。
それは一瞬のほんの少しの表情の動きで、すぐ二人はそれぞれの顔つきに戻ったが、Vにはそれだけで十分だった。
ネロの言ったとおり孤児院の子供達は元気で思った以上にたくましい。
初めの方こそ黒ずくめで入れ墨の入ったVに怖がっていたが、二・三日したら慣れて逆に興味を持ちだした。
ああもう我慢できねえ!とVの静止を振り払い出てきたグリフォンとシャドウにも似たようなもので、Vは子供の柔軟さとおおらかさに内心戦いていた。
これからなにかきっかけになる出来事があって、Vがネロを好きになり、これからの未来に希望を持てるようにもなり、それをネロに伝えてハッピーエンド、にしたい
「Vさんは好き嫌いありますか?」
キリエが洗濯物をたたむ手を止めずに、こちらを見て聞いた。
向かい合いとりこんだそれを種類ごと(下着や洋服、子供と大人)に分けていたVは不思議そうに首を傾げる。
「何故そんなことを聞く?」
「そういえば聞いていなかったと思って。なにかアレルギーがあったら大変ですし、知っているにこしたことはないでしょう?」
大所帯ですから、期待に添えないかもしれないですけど、と笑うキリエに、ふむ、とVは考える。
「…アレルギーはない」
おそらく、とVはバージルの記憶を遡る。なにか食べた時に体調を崩すことは特になかったはずだ。
あの事件の後に双子と過ごした時の食事は手抜きもいいところだった。
基本食事を必要としない彼らはもちろん、V自身も食事に興味をあまり持たなかった。
そのため出来合いのものを買ってくるか、ダンテのピザのデリバリーの残りを食べるか、面倒であれば食わないこともあった。
俺はなんでも食えるから気にしないでいい。
じゃあ好きなものは?
好きなもの…
Vは今度こそ不思議そうに首をこてんと傾けた。
Vさん?
あまりそういった観点で食事をしたことがない。だから、なんでもいい
そう言ったVはキリエの困った顔を見て眉をひそめた。
…俺はなにか変なことを言ったか?
いえ、
キリエは思いついた様にVを見つめ、にこりと微笑んだ
その顔はやけに慈愛に満ちた優しい顔をしていてVは面食らう。
じゃあこれから見つけていきましょうね、
私頑張ります、そう言って拳を握って見せた彼女に、Vは目を瞬かせた。
「ただいまー」
ネロ、おかえりなさい
どさどさとテーブルの上に紙袋を置いているのを、皿洗いをしながら見つめた。
仕事は上手くいったか?
ネロは便利屋の仕事に行っていた。悪魔退治ではなく、日常の困った事を解決するような平和な仕事だ。
ああ近所のじいさんの庭の雑草を抜く仕事な。あのじいさん除草剤は庭がかわいそうだとか言って使わねえくせに、こういう力仕事になるとすぐ年寄りだからと人にやらせるんだからな。まあ代金もらってるから文句は言わねえけどよ
ぐちぐちと言いながらネロは手を洗い、着替えたりと慌ただしい。
Vはそれを聞きながら最後の皿を洗い終わり、濡れた手をタオルで拭く。
キリエもひと仕事終えた様子で、ネロの買ってきた袋を覗き込んでいる。
バタバタと身支度を終えたネロが戻ってきて、持っていた袋を開ける。
なあこれ見てくれよ!じゃ〜ん!
ネロが誇らしげに袋から出したのは、紙の箱だった。
…?
箱だな、なんだろうと首を傾げると、横でキリエが明るい声を上げる。
あら、ケーキ?
そう!じいさんがこのケーキ屋はいいぞって言うから、帰りに買ってきた
じゃあそろそろお茶にしましょうか
孤児院を営んでいるネロ達は食事の時間も慌ただしく、息をつく暇がない。
その中で子供達を昼寝させるこの時はささやかな憩いの時間だった。
少し前まではこの時間に洗濯や食事の用意をしていたのだが、ネロの夢の件があり、キリエが一息ついて話をすることにしたのが始まりだった。
それが解決したあともこの時間は続けている。
Vが来てからは孤児院の仕事を三人でできるようになり、休憩しやすくなったという面もある。
今日は俺の番だな
お茶の支度をするのは順番で、今日はネロの番だった。
その間キリエとVはリビングの椅子に座り、他愛もない話をする。
初めは違和感しかなかったこの時間も慣れてしまうと苦ではなかった。
それどころか最近はなにかくすぐったいような心地もする。よくわからない時間だ、とVは思った。
紅茶を蒸らしている間に、ネロは件のケーキの用意をしている。
…?
何故かケーキを電子レンジに入れて温めていた。
不思議に思いじっと見ていると、ネロは無邪気に後でのお楽しみ、と言った。
紅茶を入れてケーキを運んできたネロは、得意げに笑う。
ちょっと見とけよ〜!
ケーキにそっとナイフを入れて、切り分けると、中からとろりとチョコレートがこぼれた。
「フォンダンショコラって言うんだよ」
せっせと切り分けてこちらに出された黒く輝くケーキを見つめていると、自然と唾液が口の中に出てくるのがわかった。
無意識にごくりと喉を鳴らすと、気づいたキリエがくすくすと笑う。
さ、早く食べようぜ
いただきますと三人で手を合わせ、早速Vはフォンダンショコラに手を伸ばす。
フォークでチョコとケーキを一緒にすくい、口に運ぶと、ほろ苦く濃厚なチョコが口に広がる。
どうだ?
得意げな顔で感想を聞かれ、うん、とVは頷く。
「この前のパリパリしたやつより食べやすい」
「うんそれミルフィーユのことな。味の感想言えよお前」
がっくりと肩を落として言ったネロに、Vは一言、
おいしい
ぱっと顔を上げたネロに、Vは続ける。
どうやら俺はこれが好きらしい
初めて知った、と言わんばかりの表情でそうつぶやくと、ネロは「はは」と笑う。
なんだそれ、でもよかった
また買ってくるな、と言ったネロを見て、Vは目を瞬かせる。
なんだか胸の鼓動がうるさくて、むずむずする心地がして落ち着かない。
なんだろうと思いながら、Vは二口目を頬張った。
ネロがVのためにいろいろなお菓子のお土産を買ってくる話
Vの食の好みを聞いたらそもそもあまり食べた記憶が無いと言われ、甘いお菓子や辛いお菓子、和菓子や洋菓子などいろいろ買ってくる。
孤児院の子供達を寝かしつけた後、大人3人でのんびりと食べるのが楽しみになっていた。
(孤児院の子供達は毎日午後三時にお菓子タイムがある)
フォンダンショコラを冷蔵庫から出してレンジでチンして、ドヤ顔でVに差し出すネロ
感想が「この前のパリパリしたやつより食べやすい」のV「ミルフィーユな。あと味の感想言えよな」
ネロがVをもっと知りたいと思う話
今夜月の見える丘にみたいな、
Vのことなんにも俺は知らないな、もっとVのことを知りたい。いろんな話をしたい。
もっと知りたいと思うほどVのことがわからなくなっていく。
一つ知れば二つ疑問がわくような
知れて嬉しいはずなのに、何故か心がざわめくような
愛し抜けるポイントが一つありゃいいのに、みたいな
一つずつあなたを知りたい。
少し不安になったら、手をつなごう。
その頬に触れよう。
抱きしめよう。
それをすれば、俺はVが大事だって、好きだってわかるから。
お前の笑顔が好きだ。嘘つくけど、純粋なところが好きだ。
それはお前のほんの一部分だろうけど、まだお前の知らない部分はたくさんあるだろうけど、
だけどお前が心から笑えるのは俺の隣だけだってこと、知ってるから。
だからなにがあっても俺がお前を守る。
きっと俺達ならなんでもできるし、幸せにだってなれるさ。
お願いだから自分からこの手を離すようなことだけはしないでくれ。
考えすぎてしまうきらいがあるお前だから、もし思いつめるようなことがあっても、どうかこの手は離さないで。
そうしたら俺がどんな不安も吹き飛ばしてやるから。
そんでたまに、気が向いたらでいいから、ちょっとにっこり笑ってみてくれな?
そうしたらまた俺がんばれるから。
俺はお前のために、お前は俺のために、やるべきことをやればいいんだよ。
簡単な話。そうしたらずっと一緒にいられるから。
んじゃ、とりあえず今日はもう寝ようぜ。
ぎゅっと抱きしめて寝よう。それが今日俺達のやるべきことさ。
あ、笑ったな?ああその笑顔超好き。
馬鹿とか言うなよ、こんな俺が好きなくせに。
そうだろ?ん、いい返事。俺も好きだぜ
んじゃベッド入って、ちゃんと布団の中入れって。
それじゃおやすみ
いい夢を
最後にネロとニコが悪魔退治に行っている時に悪魔が孤児院を襲い、キリエと子供達と逃げようとするが逃げられず、孤児院の中に匿ってV一人で悪魔と対峙する。
数が多くてさばききれず吹き飛ばされ腹部に怪我をするが、なんとか立ち上がりグリフォンの電撃で動きを止め杖でとどめを刺す。
その背に悪魔の鎌が襲いかかる
Vチャン!!
グリフォンの声に振り向くが間に合わず、ああ俺は死ぬのかと、それならば道連れにと杖を構え捨て身で悪魔に向かい、
ダンッ!
大きな音と共に悪魔の頭が吹っ飛ぶ。
崩れ落ちる異形の姿、その先に
「ネロ…」
気づけば名前を呼んでいた。
こぼれ落ちるような微かな声を、聞き止めたのか空色の瞳がこちらをまっすぐ射抜いた。
(ああ、お前はまた…俺を守ってくれるのか)
わななく唇を噛み締めて、Vは駆け寄ろうとした、が
あ…
ぐらりと視界が揺れる。
足に力が入らずその場に倒れ込むと、ネロの慌てた声が頭の上でする。
信じられないほど重い鈍痛が、腹のあたりから体を蝕んでいた。
ああそういえば、と己が怪我をしていたことを思い出す。
視界がどんどん狭くなっていく。意識が朦朧としているのだ、と他人事のように思い、それに逆らわず目を閉じる。
もうキリエ達は大丈夫だ、ネロがいるのだから。
ああよかった。俺はお前を悲しませずにすんだようだ。
自身の事などどうでもよかった。それよりネロの大事なものを守れたことが嬉しかった。
途方もない安堵に包まれて、Vは導かれるまま眠るように意識を飛ばした。
意識が戻ってからキリエとニコに無理するなとすっかり叱られ、でもあなたのおかげだと感謝され、とりあえず怪我を治すのが先決だと療養を言い渡される。
その間キリエの横にいたネロはなにか言いたげに、だけれどもむっつりと黙っていた。
そして各々が戻っていく中、一人後でまた来るとだけ言った。
二度とあんな無茶をするな!
何故だ、俺は間違ったことなどしていない
あの時の幸せすら感じた安堵感を否定されたようで、Vは盛大に顔を歪めて見せる。
なんで、なんであんな、自分を犠牲にするような戦い方するんだよ
俺の事などどうでもいい。ネロにはなにも失ってほしくなどない、それだけだ
だから自分はどうなってもいいって?
まあできることなら死にたくはないがな。もしどうしようもなければ仕方ない
フン、と鼻でネロは笑う。
あまり好きではない表情だ、これは確か、
(ものすごく怒っている…?)
何故ネロが怒っているのかわからない。
みんな助かって悪魔は死んだ。めでたしめでたし。
「何が不満なんだ?」
「俺の大事なものに、なんでお前が入ってねえんだよ!
一番にお前がくるんだって、なんでわかんねえんだ!
順位などつけるものではない
くっ…!こんな時ばっかり正論言いやがって…!
地団駄を踏んで悔しがっているネロに、はて、とVは思い返す。
ネロの大事なもの
キリエ、ニコ、子供たち
お前が一番にくる
「…?」
閃いた答えに、Vは恐る恐る口を開いた
「…ネロ」
「俺はもしかしたら、ひどいことを言っていたのか…?」
「やっと気づいたのかよ、鈍感ヤロー」
すまなかったと言ったら、盛大にため息を吐かれてしまった。
仕方がないだろう、気がつかなかったのだから
「ネロの大事なものの一番が俺だったのに、俺自身がそれを見捨てようとしていたから、ネロは怒った」
合っているか?と聞くと、
「大正解ー」
やる気のない拍手をいただき、なんとも言えない居心地の悪さに、もう一度謝ったのは正解だっただろうか?
その間にいろいろ考える。もう答えはほとんど出ていたけれど。
怪我が治り、ネロの部屋にVが訪れる。
この前の返事をしにきたと言い、ネロを、どぎまぎさせる
お前のことが愛しいと感じた。この生活がとても大事でかけがえのないものだと思った。
もしまだ俺への気持ちが残っているならば、俺を恋人にしてほしい。
愛している。付き合ってくれ
ネロはVのまっすぐな言葉にノックアウト寸前
絶え絶えに返事をして、ぎゅうぎゅう抱きしめて幸せだ!と叫ぶ。
キリエが起きてきて、まあ、と目を大きくして驚くが、よかったわねと微笑ましそうに祝福してくれる
さすがに恥ずかしくて顔を赤くするVだが、ネロの嬉しそうな顔につられて自分も笑う
「これはここでいいのか?」
「ええ、ここに置いてください。ありがとうVさん」
取り込んだ洗濯物が入ったカゴを持ち、部屋に入るとキリエがにこりと笑い答える。
(ネロと同じ顔をするんだな)
眩しそうに目を細めたVは、言われた通りキリエの横にカゴを置いた。
ネロにフォルトゥナに来てほしいと言われ、了承してから一月ほどたった。
答えた途端に荷物の手伝いを申し出たネロは、勢いそのままに荷造りをほぼやってしまい、その日の内に家を出ようとしたので流石に止めに入ったのが懐かしい。
ネロの言ったとおり孤児院は子供達が元気で思った以上にたくましい。
初めの方こそ黒ずくめで入れ墨の入ったVに怖がっていたが、二・三日したら慣れて逆に興味を持ちだした。
ああもう我慢できねえ!と出てきたグリフォンとシャドウにも似たようなもので、Vは内心子供の柔軟さとおおらかさに戦いていたのは秘密である。
これからなにかきっかけになる出来事があって、Vがネロを好きになり、これからの未来に希望を持てるようにもなり、それをネロに伝えてハッピーエンド、にしたい
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ネロV 光2
初公開日: 2020年04月05日
最終更新日: 2020年04月05日
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ネロV 光の続きの予定です