お題 グリムノーツ
「やあ、久しぶり。元気だったかい」
「あぁ。此方は特に大事はないよ」
久しぶりに訪れた旧友達を迎え、家主はほがらかに笑う。
「準備はできているよ。さあ上がって」
「失礼する」
「邪魔するぞ」
口々に挨拶を述べて家の中に入る旧友達。彼らが来るまでにたっぷりと時間はあったため、お茶会の支度はとっくに整っていた。
「よっ!久しぶりだな旦那がた!俺様達マッド・ティー・クラブのお茶会にヨウコソ!」
「テンションあげてこー!」
「zzz……」
ニヤリと頬を吊り上げ、慇懃無礼な礼をする帽子屋に、やたらテンションが高い小麦色の肌をしたウサギ、そして眠りこけるネズミ。
お馴染みのメンバー達の出迎えが気に入らなかったのか、シャルル・ペローが顔をしかめる。
「おい……カップの中身は本当に茶だろうな?」
「酷いなぁシャルル。ちゃんと英国のアフタヌーンティーに相応しいものを用意したとも」
「いまいち信用ならんな……」
「え、酷くない?」
「日頃の行いだろ、バカルイス」
「ルートヴィッヒくんまで!?」
大袈裟に泣く真似をしたルイス・キャロルに、同情的な視線を向ける者はいない。
「まあまあ……ルイス、今日はお招きありがとう。早速ご馳走になるよ」
「そうだな」
かつての中心2人がそう宣言したことにより、皆がそれぞれテーブルにつく。
しばらく紅茶の味を楽しみ、香りを愛で、クッキーなどに舌鼓を打った後。ふと、カップを手に持ったルイスが、窓の外を見ながらぽつりと呟いた。
「……彼らは今頃、どこを歩いてるかなぁ」
独り言ともとれるその呟きを、聞き逃す者など誰もいるはずがなく。
「……そうだな。どこかはわからんが、きっと元気でいるだろうさ」
「エレナ……迷子になってなければいいけど」
「心配ないだろう、ヴィル。もうあの子は、幼いばかりの子どもではなくなったのだから」
「うん……そうだね」
「……元気だとも」
寂しそうな顔をするヴィルヘルムに、ヤーコプ が優しく声をかける。その横でシェイクスピアが鼻を鳴らし、アンデルセンは確信を持って小さく呟いた。
「そうだ!おい、ハンス!お前だけ抜け駆けしてあやつらを見送ったことについて、まだ詳しく話を聞いとらんぞ!」
「あ」
「そういえば」
「あぁ……忘れていた」
思い出したように椅子から乱暴に立ち上がり、ピシッと指を向けるシャルル。そして指を向けられた当の本人は、これまた至極当然のように呟く。
「まったく、そもそもあやつらがまだ未熟なお子様どもの頃から、影に日向に手を貸してやっていたのは吾輩なのだぞ。その吾輩になんの断りもなく重要な事を決めてしまうのは────」
「お子様なのは君もじゃないかい、シャルル〜?」
「吾輩は見た目だけであろうがッッ!!」
すかさず茶々を入れるルイスにも、シャルルは律儀に噛みついた。なんなら今にも弓を撃つ構えである。
「わっ、待って待って待って!そんなことしたらこの家壊れちゃうだろう!?今日君らをお茶会に招待したのは、その話をしてもらおうと思ったからなんだって!」
慌てたルイスがそう叫ぶと、彼は不満げにしながらも弓をしまう。
「そういうことなら、とっとと本題に入れ。私もまだ執筆が途中なんだ、くだらん時間を割いている暇はないのでね」
シェイクスピアの言に、アンデルセンはひとつ頷き、口を開こうとする。
「あぁ、待ってくれないかハンス。今日招待しているのは君達だけじゃないんだ」
「え?」
「もうそろそろ来るはず……」
紡がれようとした言葉を遮って、ルイスは懐中時計に目を向ける。すると同時に、玄関の戸がコンコンコンと叩かれた。
「よし、来た!」
そうしていそいそと彼が迎えに行った先、ドアの向こうからは大勢の声が聞こえる。
「じ、時間通りにお連れしました!」
「うん、ありがとう時計ウサギ。ご苦労様」
奥から聞こえる声に、既にテーブルについている面々は首を傾げる。
「これ以上誰が……?」
「…………あ、もしかして」
訝しむシャルルに、気づいたらしいルートヴィッヒの呟き。
そして新たに連れてこられた客人達に、彼らは揃って目を丸くした。
「お待たせ。彼らが最後の客人、『調律の巫女』一行だよ」
そこにいたのは、自分たちにとって未来であり、同時に過去でもある世界を旅した者達。旅人としては後輩である彼らと、面と向かってゆっくり話ができるとは、いったい誰が考えただろうか。
「……さぁ、ティー・パーティーを始めようか」
家主の確信めいたウインクと共に、不思議なお茶会はようやく幕を開けた。
ー完ー
カット
Latest / 46:11
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
テスト
初公開日: 2020年04月03日
最終更新日: 2020年04月04日
ブックマーク
スキ!
コメント
秋津ライブ
リクエスト作品書きます。多分。
秋津
20260905芋
芋を1時間くらいで書く練習
みらい
2026年楽龍ワンドロライ①
2026年楽龍ワンドロライ①『楽龍記念日』『ブルー(青)』 拙宅の楽龍の馴れ初め話。記念日だからこ…
葉月 翔