リプキャラ×曲ss
【徳田秋声×炎の戦士】
────ただ、認められたくて。
作風も、人生も、どことなく地味と言われ続けていた。別にそれが不満というわけではない。自分が求めていたのはただ平穏な日常だったのだから、おおむねその通りの人生を送れたことには満足している。
それでも、何か胸に燻るものが確かにあって。少しだけで良い、自分が自分であった証を残したいと思った。
そのための努力なら欠かさなかった。師匠に認められるようなものを、歳下の兄弟子に負けないものを書き上げる為、ひたすらに努力した。
しかし。がむしゃらに走って、やっと辿り着いた山頂で見たものは、自分が登ってきた山よりも更に高い山々に立つ同業者達の姿だった。
自分がやってきたことが、とてつもなく小さなもののように思えた。…………あの時までは。
「────はぁ。見つかったか」
かつての自分や、いつか自分が見た、遥かな山々に立っていた彼らの作品が、跡形もなく消されていくという怪事件。文学という概念そのものを消そうとする何らかの意志。それを惜しいと、悲しいと、そう思ってくれた人々の手が、燻っていた自分の手を引っ張った。
「どうしてそんなに粋がっているのさ」
弓を引き絞り、敵を穿つ。
かつての自分と、今現在自分に助けを求めてくれた彼らのために。
既に死したこの身には、もう何もない。文壇の地位も、肩書きも、全てが過去のものとなって消えた。
しかし、それでいい。矢が命中した侵蝕者が最期の悲鳴を上げて消え去るのを見守りながら、呟いた。
「……僕を飾る宝石がなくなったって、守りたい……守り続けたいものがあるんだよ」
『文豪』として『特務司書』の手を取った〈あの日〉。この胸に灯した蝋燭の火を、守り続けると誓ったから。
ー完ー