「……今日は筆洗の水みたいだねえ」
「イメージしにくいけど、なんだかわかる」
琥珀とババ抜きをしながら、蓮がぽつりと窓の外を眺める。
スタジオではなく、外でのんびりやろうとしていたので、予定が崩れてしまった。
仕方ないので、新しく練習する曲の原盤を聞きながら、暇を持て余しているところだ。
「蓮ってさ」
「ん?」
「たまに音とかも色で例えるよね」
「ああ。そうだね、吹奏楽部でも言われたけど――」
音の形、演奏している場面の情景。それを思い浮かべて音で表現する。
中高の部活で耳にタコができるほど言われた言葉を、律儀な蓮はスケッチもとってあれこれつぶやいていた。
傍から見たらなんだか奇妙な光景だったが、理にかなっているし、イメージもしやすいと部員には好評だった。
「そうしたらいつの間にか、描かなくても色がイメージできるようになって」
「やけに例えが具体的なのってそこかあ」
「琥珀は、『オーブンでトースターを焼いているときの中の色』、かな」
「……?」
唐突に色に例えられびっくりしたが、今朝、なんとなくふたりでじっくり眺めていたからだろうか、琥珀にもイメージがわいて、思わずはにかんだ。
「はい、上がり」
「えーっ!?」
油断していた琥珀の手札から引き抜いたカードで、最後の1ペアが完成し、蓮の勝ちになった。
(了)
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monogatary/お題『雨色ウォッチ』
初公開日: 2019年11月03日
最終更新日: 2019年11月03日
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