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刀剣男士の中には他の刀剣男士の観察日記を書いているものがいるという。
そういう訳で、俺は『山姥切長義』の観察日記を書くことにした。「いや、何がそういう訳で、だ」とか、そういうツッコミが入りそうだからちゃんと説明しよう。
本科が顕現して数年。極めてからさらに数年。未だに山姥切長義という刀の生態が俺は理解できていなかった。己の本科だというのに、話しかけることもままならず、気が付けば本科は極めていた。
他の本丸では共に万屋街に行ったり、演練で息の合った連携をしていたりしているのに……この体たらく。いい加減本科とも交友を深めるべきなんじゃないかと、そういう結論に至ったわけだ。いや、別に他の本丸の同位体が羨ましくなったとか、俺も「俺の写し」呼びをされたくなったとかそういう訳ではない。断じて。
と、いう訳で、観察日記一日目の今日。俺は本科をひっそり追いかけている。
これは初めて知ったことだが、本科は意外と朝が弱いらしい。部屋からは何度も時計のアラームの音が聞こえては止まっていた。起床時間は九時頃と、俺よりも三時間遅い。起きてから身支度を整えるまでも時間がかかるようで、部屋を出てきたのは十時を過ぎてからだった。朝食の席で見たことがないとは思ったが、まさかこの時間に起きているからだとは思わなかった。完璧に見えるあの刀にも、意外と弱点はあるらしい。
皆の元に顔を出すころには、そこにはいつも通り、隙ひとつない『山姥切長義』が出来上がっていた。執務中の本科は、想像の通り……いや、他の刀から聞いていた話の通りで、書類仕事が異様に速い。流石は元監査官というべきか、主がミスをしていればすかさず指摘をしていて頼りになる。戦場で見る姿も美しい刀だが、こうして本丸で見る姿も様になる。考え込んでいるときは、口元に手を当てる癖があるらしい。観察日記に書き込んでおく。
それからしばらく執務室の様子を窺っていたが、書類仕事というのは見ていて代り映えしない。流石にこのまま執務室を覗き込んでいては、誰かに怪しまれるだろうか。場所を移していると、執務室へと茶菓子を運んでいく短刀とすれ違った。今日のおやつはシュークリームらしい。
「失礼します」
執務室へ足を踏み入れる短刀の背中越しに、そっと中の様子を覗き見る。
シュークリームを手にした長義は、口元をほんのわずかに緩めた。どうやら、甘いものは好きらしい。これは本科と仲を深めるのに有用な情報だろう。これもしっかり記録しておく。今度、何かを渡せる機会があれば、甘いものを渡すのもいいかもしれない。……まあ、今はそんな機会がまずないことが問題なんだが。
書類仕事が終わった後も、手合せやら他の刀の手伝い事やらと、本科は忙しく動き回っていた。本丸の皆に頼られるその背中がやけに大きく遠く見えて、そのことに何故だか痛んだ胸は見なかったことにした。
気が付けば日はすっかり傾き、本丸には夜の静寂が訪れていた。今日の観察は、これで最後にしよう。そう決めて夕食を終えた本科の後を追う。どうやら誰かとの予定もないようで、本科は真っ直ぐと自室に向かって歩いていた。月明かりに照らされた白銀に思わず目を奪われながらも、気が付かれないように息を殺す。
本科が部屋に入ってから、少し遅れて部屋の明かりが灯る。流石に障子を開けて中を覗くわけにもいかず、耳をそばだてる。
もう少しだけ、何も聞こえなかったら、部屋に戻って――
「お前、いつまでそうしているつもりかな」
ガタン、と開かれた障子に思わず体勢を崩す。声の主を見上げれば、すぅっと細められた青が俺を見下ろしていた。
「っ……や、山姥切、えぇっと……奇遇だな……?」
「……お前、朝から随分と熱心だったね」
「は、」
間の抜けた声しか、出すことができなかった。
「柱の陰に隠れた回数、十四回」
「な、ぇ?」
「廊下で転びかけていたのが一回。目が合って慌てて逸らしていたのが五回、かな」
ひとつ、ひとつ。指を折りながら本科が数えていく。
「ああ、あと。『今日国広さんどうしたんですか?』って他の刀に聞かれたのが三回だったか」
「~~っな、な、は!?」
「随分と楽しそうな一日だったね」
くすくすと、悪戯っぽく笑う長義に、返す言葉が浮かばない。気付いていたのか、だとか。いつから、だとか。言いたいことはたくさんあるのに、何一つ上手く口に出すことができない。
「それで、お前は何をしたかったのかな?……その手の日記帳と何か関係が?」
「……っ」
「――山姥切国広、答えろ」
問いかける声が冷ややかで、びくりと肩が震える。本科は、笑みを崩さないままただただ俺を見下ろしていた。
誤魔化せない。わかっていた。それでも、簡単に白状できるわけもなく、口を開いては閉じてを繰り返す。
「……その、観察、していたんだ」
「観察?」
反芻するように呟いた本科の青い瞳が、俺の手の日記帳へと視線を落とす。
「お前を、その……観察、していた……」
数秒。沈黙が落ちる。羞恥でどうにかなりそうになりながら、本科の返事を待っていれば、やがて本科は「ああ」と小さく息を吐いた。
「なるほど、だから朝から俺の後をついて回っていた、と」
「……すまない」
「別に、怒ってはいないけれど」
想いもしなかった言葉に思わず顔を上げれば、存外、柔らかな笑みを浮かべた本科と視線が絡む。
「ただ、なぜこんなことを?」
「……そ、れは……」
何故。聞かれて当然だろう。ここまで来て、もう誤魔化すことはできない。ぐっと手のひらを握りこんで、本科を見上げる。
「……お前のことを、知りたかったんだ」
本科の目が僅かに見開かれる。
「他の本丸の俺たちは、共に出掛けたり、もっと普段から話したりしているだろう。だからその、俺も……どう話せばいいのか、知りたくて」
言葉もまとまらないままに口にすれば、やがて、本科は堪えきれないように噴出した。声を出して笑うその姿は、今までに見たことのない表情だ。
「ははっ、お前、随分と遠回りをするんだね」
「わ、笑うな……ッ! 俺だって考えたんだ!」
「ごめんごめん。でも、そんなことならこんな観察なんてしなくてもよかったんだよ」
本科は俺と視線を合わせると、抱え込んでいた日記帳をひょいと取り上げた。咄嗟に手を伸ばしたものの、一歩及ばず、日記帳はあっさりと本科の懐へとしまわれる。
「こんなもの書かなくたって、普通に話しかけてこればいい」
「い、いいのか……?」
「当たり前だろう?ーーお前は俺の写しなんだから」
俺の写し。その言葉だけで、胸の奥が、じわりと満たされていく。
ああ、こんな簡単なことでよかったのか。
観察日記は、二日も続かず、終わりを迎えた。
~完~
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ななし@c85c4f
こんにちは、お邪魔します
ななし@c85c4f
名無しのおちゃです!
いづみ
(名有りなんだなぁ)
ななし@c85c4f
ななしはちょっと不安になるかと思って(私がそうなので)
ななし@c85c4f
銘柄つきですよ
ななし@ee40dd
ずっとやっててほしいでつ
ななし@ee40dd
1時間後もやっでてください😢
いづみ
???????
ななし@ee40dd
見てるの楽しい
いづみ
恥ずかしくなってきましたお
ななし@ee40dd
そんな…
ななし@ee40dd
こんにちは✋お邪魔しています☺️☺️いづみさんの文章が大好き❣️です😚
いづみ
あばばばばば
ななし@ee40dd
完成楽しみにしています🫶🫶🫶🫶🫶
ななし@c85c4f
男性にしては時間がかかっているのかもしれません
ななし@c85c4f
それか国広自身との比較とか
ななし@ee40dd
🦀
ななし@c85c4f
🍆
ななし@c85c4f
コソ(いいうべきか、になっております……)
いづみ
ありがとうございます!!!
いづみ
🍆
ななし@c85c4f
いらぬお節介かもしれません、すみません🙇
ななし@c85c4f
🍆
ななし@c85c4f
コソ(甘いも、になっております……)
いづみ
ありがとう!!!!ございます!!!!!!
ななし@c85c4f
アッコにお任せ!?
ななし@c85c4f
ありがとうございました!
いづみ
お付き合いいただきありがとうございました!!!
いづみ
配信閉じます~~~!
いづみ
KISS😘
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