お時間いただけませんか?
キリル・チュードミロヴィッチ・フリンズ。
長くて舌が回らない名前のその人は、つかみどころがなく、月の輪を持っている強くてみんなを守るライトキーパーさん。
最近はよくナシャタウンで見かけるなと、思いながらフリンズさんを横目に買い物をしていると、馴染みの声が私の名前を呼ぶ。振り返ってみると、ニコニコと笑顔のアイノちゃんとその後ろで控えめに手を振るイネファちゃんがいた。
「こんにちは、アイノちゃん、イネファちゃん」
「こんにちは!」
「こんにちは、もう、アイノ急に走らないでください」
イネファちゃんがアイノちゃんを注意して、ほんの少ししょぼくれる姿はいつもと変わらずに安心するものがある。
「ねーちんはお買い物?」
「そうだよ、今日はお菓子持ち合わせてないんだけど、今度ソマルケーキ作ってあげるね」
「やったー!たのしみにしてるねー!」
「もう、あまりアイノを甘やかさないでください」
「ふふ、妹がいたらこんな感じなのかなって」
イネファちゃんにお買い物の時間は大丈夫ですか?と聞かれ、ハッと時計を見れば思ったよりも針が進んでいた。夕飯のことを考え、アイノちゃんとイネファちゃんに別れを告げる。
買い物を再開すると、気づけば予定のないものも増えて両手いっぱいの荷物に。こんな予定じゃ無かったのにな、でも、作り置きすればいいし……と自分を慰め、重い荷物を持ってすこし立ち尽くしていた。
「こんばんは、こんなに荷物を持っていては大変ではないですか」
目の前にゆらりと突然現れた。かけられた言葉はこちらを気遣うものであったが、自分の意識していないところで現れたその人にびっくりして、心臓がドッと速まった。
「もう……急に現れるのはやめてください、フリンズさんのせいで心臓が痛いです……」
心臓を抑えながら言う私を愉しそうにみては、よく回る口で私を宥める。
「これは失礼、ただ僕はあなたがたくさんの荷物を持っていらしたので手伝ってあげようかと思い声をかけたのですが余計なお世話だったようですね」
「もう、びっくりしただけで手伝ってくれるなら手伝って欲しいですよ、私だって」
「では、こちらの荷物はお預かりしますね」
するりと両手にかかっていた荷物を軽々と回収していく。
「全部持ってくれるなんて、やさしいんですね」
「僕は紳士ですからね、女性の荷物を持つことは当たり前ですよ」
「流石フリンズさんですね、お礼は何が欲しいですか」
そう聞くと、隣を歩いていた彼が足を止める。半歩後ろの彼をみると、こちらを一瞥して、煌々と輝く満月のような瞳に射抜かれる。
「そうですね……では、今度のあなたのお休みの日を1日いただけますか」
ゆるりと細められた目。デートのお誘いと捉えて舞い上がる場面なのだろうけど、どこか底知れない恐怖を感じた。でも、この人がどんなデートをするのかと言う好奇心が勝ち、口から出た言葉は「喜んで、楽しみにしてますね」
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ワンライ#2
初公開日: 2026年05月18日
最終更新日: 2026年05月18日
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ワンライするぞ
原神/フリンズ